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とりがら時事放談『コラム新喜劇』



■ビジネストーク入門(1)


偶然なのかどうか分からないが二人の知人の女性が運送会社に就職した。
しかも海外の。

一人目は英会話で長らく同じクラスに在籍したS子ちゃんで、彼女は憧れの香港で日系のH社に就職が決まった。
もう一人はお馴染のミャンマーでガイドを務めてくれていたTさん。
こちらはサイクロンが襲いかかってくる僅か数週間前にシンガポールに出国。
華僑の都市国家で米国系のF社に就職が決まった。

二人とも、その業界は初めてで、はた目から見ていると非常に心配になってくる。
ただしどちらにも言えることだが女性にしてはバイタリティに富んでいるし、女性であるだけにおしゃべりの技術は充実していると思われるので、おそらく大丈夫であろう。

大丈夫ではないのは、うちの会社の新入社員だ。

先日の東京出張の時、入社3ヶ月目のK君に、
「○○さん。初めてのお客さんのところではどんな話をしたら良いんでしょうか?」
と訊ねられた。
「経験を重ねるしかないわな」
と身もふたもない回答をしてから、私は「しまった」と思った。
よくよく考えてみると、私もよくわからなかったのだ。

K君はうちの会社に入ってくる前、名古屋で生活をしていた。
ちなみに生まれも育ちも名古屋である。
「K君、君はうちの東京支社がどこにあるのかお客さんに説明できるんか?」
と私は訊ねた。
「......と言いますと?」
「例えば、会社の前を通っているこの通り。この名前は知っているわな」
うちの東京オフィスの前は靖国通りだ。
「......知りません」
私はズッコケそうになってしまった。
自分の会社の前の通りを知らないのだ。

「自分の会社の場所ぐらい説明できるようにしとかんと。ビジネスはそこからやで」
と私はあれこれ話し始めた。

「はあ~~~」
「例えば、ここの周辺の名所旧跡ぐらいも覚えとかなアカン」
「はい」
「だいたい、休みの日は何してんの?」
「寝てます」
「ね、寝てます?」
「はい。」
「せっかく東京に出てきてるのに、寝てるんか?」
「はあ」
「東京に住むのは初めてやろ。もっとこう、未だ若いんやから渋谷にでてみるとか、六本木ヒルズに行ってみるとか、東京タワーに上ってみるとか、皇居を奉拝するとか、靖国神社に右翼を見に行くとか、秋葉原でメイドさんと一緒に写真を写してみるとか、スタバに入ってみるとか」
「スタバぐらい名古屋にもあります」
「....そうか、つまりはお上りさん的なことせんといかんで。」
「はい。」
「その街になじまないかん。」

よくよく考えてみると、大阪弁で「東京の街に馴染まなアカン」と論じている私に説得力があるはずはなかったのであった。

つづく

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