とりがら時事放談『コラム新喜劇』

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世界反米ジョーク集

2006年11月22日 22時48分28秒 | 書評
ここ数年、アメリカの世界的信用が著しく低下している。
もしかするとアメリカ合衆国には初めから信用なんてなかったのかもしれないが、アメリカ文化を伝えるプロダクツ「映画」「テレビ」には、世界的信用が存在したと思う。

では、なぜアメリカの世界的信用が失墜してしまっているのか。
それは最後の超大国だったはずのアメリカに中国やインドといった新参ライバルが出現したためでもあるが、その信用失墜の原因はやはりジョージ・W・ブッシュ大統領。
その人にある。

「世界の反米ジョーク集」はアメリカという国家の矛盾をアメリカ以外の国の人々とアメリカ人自身の口を借りてジョークという形で描き出している、楽しめる新書だ。
それもそのはず、著者兼編者の早坂隆氏はここ数カ月のあいだ書店の販売トップテンに名前を連ねる「世界の日本人ジョーク集」の著者兼編者なのだ。

考えるまでもなくアメリカ合衆国ほど、世界にとって迷惑な国はない。
この国にはどんなささいなことであっても、自分の主義主張に合致しなければ徹底的に叩く、という性癖がある。
しかも叩かれる対象に「石油」「天然ガス」「鉱石」「交通の要衝」などの条件が一つでも含まれているる場合は、その叩き方は異常になり、まったく関係ないイザコザに巻き込んででも、力で占領してしまう(例:イラク)ことも辞さないのだからたまらない。
その徹底した暴力を大航海時代の「(キリスト教の)神の名の元に」と同じ発想で「民主主義の名の元に」と宣って正義の行動と主張し、正当化してしまうので性質が悪い。

本書を読むと近年、アメリカの大統領にふさわしい人材が乏しくなっているということに気がつく。
というのも、ジョークの数々を読んでいくと現職の大統領絡みの「悪口」ジョークが多いのは仕方がないが、ビル・クリントンやジミー・カーターといったジョージに勝らずとも劣らない最低の人物が輩出されていることに気づかされるからだ。

第2次世界大戦後の世界には「アメリカは強い」「そして正義だ」というイメージが存在した。
ところがベトナムに敗れ、イランに敗れ、そして国家でさえないアルカイダに敗れ、今、中東世論に敗れようとしている。

ジョークでアメリカを振り返ることは、新聞の紙面には描かれない世界人類の本音が描かれている。
そこが本書の最大の魅力なのだ。

~「世界反米ジョーク集」早坂隆著 中公新書クラレ刊~