とりがら時事放談『コラム新喜劇』

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ミャンマー大冒険(45)

2006年02月16日 21時17分47秒 | 旅(海外・国内)
タージィは大きな駅であった。
列車がタージィらしき駅に近づきつつあることは沿線の風景が俄に町らしくなったことでも気づくことができた。
二、三階建てぐらいの小さなビルがあちこちに見られるし、住宅もニッパヤシの小屋のようなものから木造のちょこっと立派なものに変わってきた。

タージィ駅は乗換駅になっていて、私たちが乗っているマンダレーへ向かう本線の他に有名な遺跡の町バガン(私の最終目的地)近郊のニャンウー方面に向かう路線と、ミャンマーで最も有名な湖「インレー湖」方面へ向かう路線が乗り入れていた。

タージィ駅の引き込み線は大きな池になっていた。
昨夜の豪雨はここいらあたりも襲いかかったようで、線路が冠水して浸水している。
超アナログのミャンマー国鉄だけあって、少しぐらいの冠水でレールが見えないからといって、それを理由に列車が運航停止になることはないようなのだ。
機関車が故障したり、ブレーキが故障したり、鉄橋が流れることはあっても、冠水くらいでは止まらないところが日本の鉄道と違うところだろう。
日本の鉄道の場合、冠水すると信号ケーブルが浸水し、ショーとなんぞをして運転できなくなるがここミャンマーでは手旗信号制御なのでショートするような「ややこしいもの」はない。
こういうのを「不幸中の幸い」と言うのかも知れないな、と思った。

線路は冠水していたが、幸いなことにこの駅にはヤンゴンやタウングーなどと同じようにプラットホームがあった。
したがってタッコンのように地面に直接降りなければならいこともなかったし、足下は地べたより高くなっているので冠水から守られていた。

さすがに大きな町の駅ということで、私たちと一緒に多くの人々が下車した。
活気ある駅だった。
ちょうど降りたところの前が駅舎になっていて、立派な待合室や駅事務所もあるようだ。
そしてなによりも売店がある。
売店を見るのはヤンゴン出発後初めてだったのでなんとなく心が落ち着いた。

「喉が渇いたな.....」
私は食事は摂っていなかったが喉が渇いていたので、なにかジュースを買いたいと思った。
そこで売店の陳列を見ているとファンタやコーラの缶を見つけた。

「すいません。ファンタちょうだい。ん?ファンタ、これこれ」
私はすでに英語さえ使うのが億劫になっていたし、英語が通じるとも思えないので、どうせ通じないのなら日本語で、ということで日本語でファンタを注文。
陳列の中のファンタオレンジを指さした。
売店のオバハンも理解できたのか、そのファンタを手に取り私にくれた。
陳列のファンタをくれたのだ。
私は冷蔵庫で冷えたファンタを飲みたかった。
「冷えたのはないの?」
と訊いたが、さすがに通じない。
そこへTさんがやってきた。
「どうしました?」
「冷えたのが欲しいんですけど」
Tさんは素早く通訳してくれたが、オバハンは首を横に振った。
「ないそうです」
「.......んんん~、仕方ないですね」
喉が渇いていたので背に腹は代えられない。
その冷えていない、フィルムやハンカチ、お菓子などと一緒に並べて売られていたタイ製ファンタを買い求めることにした。

つづく