28日(月)。昨日、すみだトりフォニーホールで新交響楽団の第220回演奏会を聴きました プログラムは①ベルク「3つの管弦楽曲」、②ブルックナー「交響曲第5番変ロ長調」(ハース原点版)です。指揮は帝王カラヤンのアシスタントを務めたこともある高関健です
自席は1階13列26番で、センターブロック右サイド通路側です。会場はアマチュア・オケにしては多い8割方埋まっている感じです プログラムがベルクとブルックナーだけあって、最初から約100名のフルオーケストラがスタンバイします 左から奥にコントラバス、前に第1ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、第2ヴァイオリンという対向配置で、高関シフトです コンマスはいつもの女性です。楽団員名簿を見るとコンマスは堀内真実さんと前田知加子さんの二人ですが、どちらなのか不明です 次の公演の時には分かるようにしておいてくれると嬉しいのですが
プログラムノートにクラリネットの品田という人がベルクの「3つの管弦楽曲」の解説を書いていますが、「”ゲンダイオンガク”と言って先入観を持たないで聴いてほしい」と呼びかけています。「過激な感情爆発と異常な沈潜が頻繁に交代し、所々で軍楽隊や酒場の踊りのような俗っぽい音楽を顔を出すところなどはマーラーを髣髴とさせるとても人間くさい音楽です」と誘い込んでいます
なるほど、実際に聴いてみると、オペラ「ヴォツェック」を含め、これまで聴いた他のベルクの曲と比べてとても聴きやすい曲でした とくに最後の第3曲「行進曲」は、ハンマーの3連発で驚かされ、さらに最後のハンマーの止めの一発などは、まるでマーラーの第6交響曲のようで親近感を覚えました
それよりも、品田さんの解説にある「ベルクの生涯」がとても面白く興味をそそられました ベルクは14歳の頃から独学で歌曲を作曲するようになりますが、15歳で父を亡くしてから経済的に苦しくなり、おまけに喘息を発症してしまいます 17歳の時にはベルク家に仕えていた女中マリー・ジョイフルに子供を産ませてしまい、学校の卒業試験で落第し、自殺未遂まで起こします 翌年に何とか卒業はしたようですが、マリーは子供を連れて家を出て行ったとのこと。ベルク唯一の娘アルビーネ・ジョイフルは、ベルクの埋葬の際に一度ベルク家に姿を現しただけだったそうです。ベルクはとてもジョイフルとは言えない波乱の人生を送ったのですね こういう解説を書いてくれると、”ゲンダイオンガク”と敬遠している作曲家に対して親近感を感じますよね。とても良いことだと思います
ブルックナーの交響曲第5番は、1896年に「初版」が彼の弟子フランク・シャルクによって出版されましたが、第4楽章を中心に大幅なカットやオーケストレーションの変更がなされたものでした 1929年ウィーンに国際ブルックナー協会が設立され、ハースが1935年に原典版を出版しました。この日の演奏は、この原典版に基づいたものです
高関健のタクトで第1楽章が、低弦のピッチカートによる序奏で始まります。そして金管の輝かしいコラールが演奏されます 管楽器がとてもいい感じで、とくにフルートは絶好調です。アマチュア・オケで一番心配なのは管楽器なのですが、このオケの金管も木管もすごくレベルが高く安心して聴いていられます それと、前回も思ったのですが、ティンパ二のオトーサンがオケの真ん中で頑張っているのが何とも頼もしく感じました
第2楽章「アダージョ」では弦楽器の厚みのある音が印象に残ります 管楽器と相まって弱音から強音に至るまで音の大伽藍を築き上げます
第3楽章「スケルツォ」は歯切れの良い演奏が心地よく響きます。第4楽章は第1楽章と同じ序奏で始まります 最後はすべての楽器を総動員してのコラールが、会場を突き抜けんばかりの迫力で迫ってきます。きっと、ブルックナーは音楽の勝利を神に捧げているのでしょう
新交響楽団は、マーラーやブルックナーの交響曲を演奏する時は必ず聴くようにしていますが、それは、ある意味でプロよりも感動を得ることがあるからです 普段はそれぞれの仕事を持ちながら、貴重な時間を割いて練習に励み、年間4回のコンサートにすべてを掛ける、そうしたひたむきな姿勢が演奏から伝わってくるからです このオーケストラは、また聴きたいという気持ちにさせてくれます
さらに付け加えると、感心するのは毎回立派なプログラムが用意されていることです 表紙を入れて16ページの分厚いもので、演奏者のプロフィールや曲目解説のほか、最近の演奏会記録、楽団員名簿などが収録されていて充実しています。とりわけ楽団員による曲目解説は”どこでこういう知識を仕入れてくるのだろう”と思うほど専門的な解説が成されていて、いつも感心します
また、演奏者の家族(特に幼児)のことを考えてか、コンサートを聴く際のマナーを書いたスリップがプログラムに挟み込まれていましたが、これもプロのオケでさえ稀な試みです。さすがはアマオケの老舗と言えるでしょう
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