16日(金)。腰痛が続いています 昨日は朝起きる時に「ア、イテテテッ」という痛みはなかったのですが、整骨院まで歩く途中で若干の痛みを感じました 昨夜はN響2月度Bプロ定期演奏会でしたが、そういうわけで聴くのを諦めました 13日の読響名曲シリーズに次いで2回目です 滅多に演奏されないプロコフィエフ「ヴァイオリン協奏曲第2番」を聴きたかったのですが、ここは我慢のしどころです
ということで、わが家に来てから今日で3320日目を迎え、ロシアのプーチン大統領は14日に放映されたロシア国営テレビのインタビューで、米国のバイデン大統領とトランプ前大統領のどちらがロシアに望ましいかと問われ、「バイデン氏だ」と答えたが、ロシアが「バイデン氏の方が対応しやすい」と考えているとのメッセージを米国側に広め、トランプ氏への「側面支援」を狙った可能性もある というニュースを見て感想を述べるモコタロです
嘘つきプーチンの発言を額面通り受け取る者は オメデタイとしか言いようがないね
昨日、夕食に「サーロインステーキ」を焼きました あとは舞茸の味噌汁です。いつものように洗い物を少なくするため、野菜はワンプレートに乗せました
アルバート・アインシュタイン&ジグムント・フロイト「ひとはなぜ戦争をするのか」(講談社学術文庫)を読み終わりました アルバート・アインシュタイン(1879-1955)は物理学者。光量子仮説や特殊相対性理論、一般相対性理論を発表、人々の宇宙観を大きく変えた ジグムント・フロイト(1856-1939)は精神医学者。神経症の医療を行いながら精神分析の理論を構築、伝統的人間観を刷新した
本書は、国際連盟の国際知的協力機関から「誰でも好きな人を選び、今の文明で最も大切と思える問いについて意見を交換できる」という提案を受けたアインシュタインが、「人間を戦争というくびきから解き放つことはできるのか?」というテーマを選び、意見交換の相手としてフロイトを指名して交された公開往復書簡を集録したものです 当時アインシュタインは53歳、フロイト76歳でしたが、ともにユダヤ人だったことから、ナチスドイツから逃れるため、アインシュタインは1933年にアメリカへ、フロイトは1938年にロンドンへ亡命を余儀なくされました
本書は次のよう構成されています
1.アインシュタインからフロイトへの手紙 ~ 1932年7月30日、ポツダム近郊のカプート
2.フロイトからアインシュタインへの手紙 ~ 1932年9月、ウィーン
3.解説Ⅰ「ヒトと戦争」 ~ 養老孟司(解剖学者)
4.解説Ⅱ「私たちの『文化』が戦争を抑止する ~ 斎藤環(精神科医)
アインシュタインは手紙の中で、このテーマに対する彼なりの解決策を提案しています 彼は「戦争の問題を解決するためには、すべての国家が一致協力して一つの機関をつくり、そこに、国家間の問題についての立法と司法の権限を与えればよい 各国が主権の一部を完全に放棄し、自らの活動に一定の枠をはめなければ国際平和は望めない」と主張しています。当時はすでに国際連盟(1920年設立)がありましたが、発案国のアメリカが参加しなかったこと等から十分機能していなかったからこそ、あえてそのような主張になったのでしょう
アインシュタインは、平和に抵抗する人間の悪しき2つの傾向として、①権力欲と②武器商人たちのように権力にすり寄って利益を得ようとするグループの存在を挙げています そういう少数の人間の欲望になぜ一般の大勢の国民が従ってしまうのかと言えば、「人間には憎悪に駆られ、相手を絶滅させようとする『本能的な欲求』が潜んでいるからだ」と主張します 彼はこうした考えをもとに、フロイトに「人間の心を特定の方向に導き、憎悪と破壊という心の病に冒されないようにすることは出来るのだろうか?」と問いかけます
これに対し、フロイトはアインシュタインの考えにほぼ全面的に同意した返信を書いています その中でフロイトは、人間が相手を絶滅させようとする『本能的な欲求』のことを『破壊欲動』(死の欲動)という概念を用いて解き明かしています そして、世界から戦争がなくならず、完全な平和がなかなか訪れない理由として、人間が「死の欲動」を持っているためである、と述べています フロイトは、原初の時代からの人類の歴史を振り返りながら、「人と人のあいだの利害の対立、これは基本的に暴力によって解決されるものです。動物たちはみなそうやって決着をつけています。人間も動物なのですから、やはり暴力で決着をつけます」とし、その後「暴力から権利への道が始まる。力の強い者のむき出しの暴力に対し、弱者は集団で団結し、自分たちの権利(法)を確立する」と述べます ここでフロイトは「法とは、連帯した人間たちの力、共同体の権力に他ならない」とし、この権力もやはり暴力だと注意喚起しています フロイトは意外にも、「戦争をすべて悪しきものと決めつけることは出来ず、平和をつくり出す戦争もあり得る」という見解を示しています ローマ人が地中海諸国を征服してもたらした「ローマの平和」などの例を挙げ、「永遠の平和を達成するのに、戦争は決して不適切な手段ではない」と認めざるをえないと述べています
フロイトは、アインシュタインの主張を肯定した上で、「戦争を確実に防ごうと思えば、皆が一致協力して強大な中央集権的な権力を作り上げ、何か利害の対立が起きた時にはこの権力に裁定を委ねるべきなのです」と述べています さらに、戦争を確実に防ぐ答えとして「死の欲動」に対抗する「生の欲動」すなわちエロスの欲動に訴えかけることを提示します 彼は、人間の攻撃的な傾向を完全に消滅させることはできないという前提に立って、「人間がすぐに戦火を交えてしまうのが破壊的欲動のなせる業だとしたら、その反対の欲動、つまりエロスを呼び覚ませばよい」と述べています そして エロスの欲動の現れとして、「人間のあいだに『感情の絆』をつくり出すものはすべて戦争防止に役立つ」として「愛するものへの絆」と「一体感や帰属意識」の2つを挙げます さらに、戦争防止のためのもう一つの方法として「文化の力」を挙げます。フロイトによれば、文化は欲動の発動自体を抑える働きがあり、「人間は欲動からは自由になれないが、文化を獲得することで、知性の力が強くなり、そうした欲動がコントロールされるようになっていく」と述べています
さて、戦争の問題を解決するための機関としての「国際連盟」の欠点を踏まえて、国際平和と安全の維持を目的として第二次世界大戦後の1945年に「国際連合」が設立されました 現在において、一定の役割を果たしているとは言えますが、ウクライナに一方的に侵攻したロシアへの非難決議が、常任理事会のメンバーであるロシアの拒否権によって却下されるなどの事態を目の当たりにすると、空しさを感じます 2人の”知の巨人”が求める世界平和はいつまで経っても実現しないのではないか、と悲観的になってしまいます
本書は、養老孟司氏と斎藤環氏の解説が往復書簡を読み解く上で極めて有益です 養老氏は「何が扱われていないか」について触れ、「人口問題」や「IT技術の発達」等を取り上げ、現代特有の問題として述べています 一方、斎藤氏はフロイトの「文化の発展を促せば、戦争の終焉へ向けて歩み出すことができる」という宣言に対し、「文化の目的とは、常に個人主義の擁護なのです。そうなると、いかなる場合にも優先されるべき価値として、個人の『自由』『権利』『尊厳』が必然的に導かれてくるでしょう」と述べています
本文+解説で全110ページしかありません あっという間に読み終わってしまいますが、書かれている内容は深いものがあります 1ページ1ページをじっくり味わって読みたい本です 1人でも多くの人に読んでいただきたい本として お薦めします