20日(火)。わが家に来てから今日で3324日目を迎え、アメリカのトランプ前大統領は、自身の名前を冠し「絶対降伏しない」と名付けられた金色のスニーカーを限定1000足販売すると発表したが、日本円で約6万円のスニーカーは事前申し込みで完売した というニュースを見て感想を述べるモコタロです
資産の過大評価に伴う約530億円の罰金の一部に充てるとしたら”雀の涙”じゃね?
昨日の夕食は、「今週は超多忙だからスタミナ付けるようにカレーにしてほしい」という娘のリクエストにより「ビーフカレー」を作りました 今回も牛バラ肉を使いましたが、甘みがあって美味しかったです
加藤浩子著「16人16曲でわかる オペラの歴史」(平凡社新書)を読み終わりました 加藤浩子は東京生まれ。慶応義塾大学・大学院修了(音楽史専攻)。大学院在学中、オーストリア政府給費留学生としてインスブルック大学に留学。大学講師。音楽物書き。著書に「今夜はオペラ」「モーツアルト 愛の名曲20選」「ようこそオペラ」など多数
著者は「はじめに」の中で本書を出版した趣旨を概要次のように書いています
「オペラ史については多くの先行書籍があるが、新書に収まるコンパクトな『オペラ史』はほとんどない さっと読めて『オペラ』の流れがつかめ、代表的なオペラ作品や作曲家を知ることができるーそんな本を目指して執筆した 本書の大きな特徴は、16人のオペラ作曲家の代表作16作の解説をメインとしているところにある オペラハウスで上演されているオペラ作品は特定の作曲家の作品に偏っていることが多い。各国各時代の作品がもっとバランスよく上演されるべきだと思っている そこで、あえて『16人16曲』とし、メインストリームであるイタリアやドイツの作曲家ばかりでなく、フランスやロシアの作曲家も入れるように心がけた 16人の選定に異論がある方もあるだろうし、作品の選択に関しても疑問を持たれる方も多いだろう。作品の選択に当たっては、他の作品とのバランスもある程度考慮している」
本書は次のように構成されています
序章「オペラ誕生」
第1章:モンテヴェルディ「ポッペアの戴冠」
第2章:ヘンデル「エジプトのジューリオ・チェーザレ」
第3章:モーツアルト「フィガロの結婚」
第4章:ロッシーニ「セヴィリアの理髪師」
第5章:ドニゼッティ「ランメルモールのルチア」
第6章:ベッリーニ「ノルマ」
第7章:ヴェルディ「椿姫(ラ・トラヴィアータ)」
第8章:ウェーバー「魔弾の射手」
第9章:ワーグナー「ワルキューレ」
第10章:ヨハン・シュトラウスⅡ世「こうもり」
第11章:グノー「ファウスト」
第12章:ビゼー「カルメン」
第13章:プッチーニ「蝶々夫人」
第14章:チャイコフスキー「エフゲニー・オネーギン」
第15章:リヒャルト・シュトラウス「ばらの騎士」
第16章:ベルク「ヴォツェック」
補 章:團伊玖磨「夕鶴」
終 章:「オペラのその後」
推薦映像
本書を読み終わって思うのは、「オペラの歴史を語るのに、筆者がなぜこの16人の16曲を選んだかが良く理解できた」ということです 著者は各章で作曲家の人生と作品を解説するに止まらず、その作品が生まれた時代背景から、後の作曲家に及ぼした影響まで、オペラ史の大きな流れを意識しながら解説しているからだと思います
最初に著者は「序章:オペラ誕生」の中で、「ルネッサンスからバロックへ、フィレンツェからヴェネツィアへ、宮廷芸術家ら商業娯楽へ」というオペラ史の大きな流れを説明しています それから時代の流れに沿ってモンテヴェルディ「ポッペアの戴冠」から順に代表的かつ先駆的なオペラ作品を紹介していきます
各章ではそれぞれの作曲家の音楽の特徴が簡潔に語られます 主だったものをご紹介すると次の通りです
「モーツアルト」オペラ史においておそらく初めて、登場人物や物語に共感できるオペラを書いた作曲家だった
「ロッシーニ」 声を転がす『アジリタ』、旋律に細かい装飾を施す『コロラトゥーラ』、即興歌唱など、高度な歌唱テクニックを磨きぬいた
「ドニゼッティ」『ランメルモールのルチア』は、オペラハウスのレパートリーの多くを占めている19世紀ロマン派オペラの第1歩というべき作品
「ヴェルディ」『椿姫(ラ・トラヴィアータ)』は史上初の『泣ける』ドラマというべきオペラ
「ウェーバー」『魔弾の射手』はイタリア(語)中心のオペラ界にドイツ語によるオペラの道を切り開いた
「ワーグナー」オペラを「総合芸術」と見なし「音楽とドラマの一体化」を追求、一つの幕が切れ目なく演奏されるような音楽を創り出した
「プッチーニ」オペラ史上屈指のヒットメーカーで 美しく口ずさみやすいメロディ、分かりやすいストーリー、ドラマティックなオーケストレーションが魅力
また、作曲家の人生・生き様というテーマでは、同じ年に生まれたヴェルディ(1813-1902)とワーグナー(1813-1883)が全く違った人生を送ったことが紹介されていて興味深いものがあります
「ヴェルディは生粋の『事業家』である。家は宿屋の一族。金銭的にシビアで、自作の権利をめぐっては納得がいくまで交渉し、その結果イタリアの作曲家の著作権確立に貢献した さらに作曲で成功するとその利益を元に農場経営に乗り出して成功した 晩年には寄付や奨学金の給付から、地元の病院、音楽家のための老人ホーム『憩いの家』の建設まで手掛けた 一方、ワーグナーは贅沢好きで、『自分は特別』だという芸術家意識が高く、金遣いが荒く、借金を繰り返し 踏み倒すこともよくあった とはいえ、絶体絶命の時に救世主(ルートヴィヒ2世等)が現われるのもワーグナーならではだった」
つくづく、音楽が違えば人生も全く違うものだと思います
著者は「終章:オペラのその後」の中で次のように述べています
「伝統的なオペラのメインである19世紀オペラの物語は、今の私たちから見れば『古くさい』ものが少なくない 『家』や『世間』のために恋を諦めるよう迫られる『椿姫』は、その典型かもしれない その手のオペラを現代の観客に刺さる物語にする試みの一つが『演出』だ 今、オペラハウスでは、時代設定を現代などに移し替えた『読み替え演出』が一般的になりつつある」
オペラの時代設定を現代などに移し替える「読み替え演出」については、私が会員になっている新国立オペラでも少なからず見られますが、問題は「説得力があるかどうか」だと思います 何でもかんでも時代を現代に置き換えれば良いというものではありません 今まで観た新国立オペラで一番”最低最悪”だったのは2013年5月25日に上演されたヴェルディ「ナブッコ」で、演出はグラハム・ヴィックでした バビロン捕囚がテーマになっているオペラで、オペラの中で歌われるヘブライの捕虜たちの合唱「行け、わが思いよ、黄金の翼に乗って」はイタリアの第2の国歌と呼ばれています ヴィックによる舞台は現代のデパート(ショッピングセンター)に置き換えられています ブティックがあり、エスカレーターやエレベーターもあります。登場人物はツナギで登場したり、原色の派手な衣装で登場したり、ケータイで話したりしています 私は幕が上がった時点で「こりゃダメだ」と思いました 指揮者や歌手陣が良かったのが救いでしたが、ひと言でいえば「演出家のための演出」だったと思います あんな演出で観るのはもうマッピラゴメンです
本書の巻末掲載の「推薦映像」では「メトロポリタンオペラ デマンド」「METライブビューイング」やDVDなどが紹介されていて、参考になります 私はこれまで何冊がオペラの入門書的な書籍を読んできましたが、オペラ全体の流れを把握する上で一番分かりやすかったと思います オペラの愛好者にも、これからオペラを観賞しようと思っている人にも広くお薦めします