9日(土)。わが家に来てから559日目を迎え、オヤツを確保して安心しているモコタロです
オヤツさえあれば ほかは何もいらないよ
閑話休題
昨日、夕食に「豚のしゃぶしゃぶ」「生野菜サラダ」「さやいんげんのお浸し」を作りました もっとも「しゃぶしゃぶ」は料理とは言えないかも
も一度、閑話休題
昨夕、サントリーホールで「トヨタ・マスター・プレイヤーズ、ウィーン」のコンサートを聴きました プログラムは①J.S.バッハ「2つのヴァイオリンのための協奏曲ニ短調」、②ドニゼッティ「クラリネット小協奏曲変ロ長調」、③モーツアルト「ピアノ協奏曲第21番ハ長調」、④ベートーヴェン「交響曲第6番ヘ長調”田園”」です ①のヴァイオリン独奏はフォルクハルト・シュトイデ、小林美樹、②のクラリネット独奏はペーター・シュミードル、③のピアノ独奏は山本貴志で、例年通り指揮者はいません。コンマスのシュトイデがオケをコントロールします
「トヨタ・マスター・プレイヤーズ、ウィーン」はウィーン国立歌劇場管弦楽団、ウィーン・フィル、ウィーン交響楽団のメンバーを中心に、この公演のために特別に編成された30名の名手たちから成る世界最高級の室内オーケストラです。弦楽器はわずか17名、残り13名が管・打楽器です。私はこのオケを聴くのは今年で3回目か4回目ですが、毎年「聴いてよかった。また来年も聴きに来よう」と思います
自席は1階11列7番、左ブロック左から4つ入った席です。会場は9割方入っている感じでしょうか
大きな拍手に迎えられてオケのメンバーが登場、最初に立ったまま「トヨタ・マスター・プレイヤーズ、ウィーン」のための前奏曲が演奏されます これは、モーツアルトの交響曲第39番の第3楽章「メヌエット」をアレンジしたもので、祝祭感覚溢れる楽しい曲です
管楽器が退場し、オケは左から第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、その後ろにコントラバスという編成をとり、中央にはチェンバロがスタンバイします
1曲目はJ.S.バッハ「2つのヴァイオリンのための協奏曲ニ短調BWV1043」です 鮮やかな赤の衣装の小林美樹がコンマスのシュトイデとともに登場し、シュトイデの合図で第1楽章が開始されます
何という軽快な演奏でしょうか。シュトイデと小林の掛け合いが楽しそうです まさに21世紀に躍動するバッハのコンチェルトです 弦楽奏者とチェンバロがピッタリ付けています 残念なのはオケのメンバーの演奏が強力すぎて、チェンバロの音が聴こえてこないことです この曲を聴きながら思ったのは、つい2週間前の金曜日に聴いた「マタイ受難曲」も、この「ダブル・コンチェルト」も同じバッハが作曲したのだということ、つまりバッハの音楽の”多様性”を強く感じました 二人の演奏は鮮やかでした
管楽器とティンパ二が加わります。2曲目はオペラでお馴染みのドニゼッティの「クラリネット小協奏曲 変ロ長調」です このオケの芸術監督でもあり、かつてウィーン・フィルで長くクラリネットの首席を務めてきたペーター・シュミードルがソリストとして登場します シュトイデの合図で第1楽章が開始されます。まさにドニゼッティのオペラを彷彿とさせるベルカント・オペラのような曲想です つまりクラリネットがオペラのアリアを歌うという感じです 全2楽章で10分もかからない小曲ですが、シュミードルはドニゼッティらしい歌心溢れた演奏を展開しました
管楽器が一部入れ替わり、ピアノがセンターに運ばれます。3曲目はモーツアルト「ピアノ協奏曲第21番ハ長調K467」です ソリストの山本貴志が登場します。私は初めて本人を見ましたが、思ったより小柄です。顔を見ただけでは何歳なのか見当が付きませんが、プログラムのプロフィールで確かめたら1983年の生まれとあるので、現在33歳ということになります 深々と一礼し、ピアノに対峙します
シュトイデの合図で第1楽章「アレグロ・マエストーソ」が開始されます。この曲はモーツアルトの典型的なピアノ協奏曲とでも言うべきコンチェルトで、序奏が長く、女王たるピアノはなかなか出てきません 首を長くして待っていると、おもむろに山本のピアノが”お待ちどうさま”という感じで出てきます 彼の演奏姿を見るのは初めてですが、演奏中 ピアノの鍵盤に顔を近づけて打鍵する、つまり前のめりになって演奏するので、どうしても猫背になります 私が思い浮かべたのは、カナダの鬼才ピアニスト、グレン・グールド、そして、なぜか「スヌーピーとチャーリー・ブラウン」に出てくるベートーヴェンが好きなシュローダーです それはともかく、前かがみのスタイルは小さな山本が一層小さく見えます。これは彼にとって不利になるのではないかと危惧します ただし、彼の名誉のために言っておくと、彼の両手から紡ぎ出される音はまさにモーツアルトそのものです
大きな拍手に、深々と一礼、そしてまた一礼しました。何度かのカーテンコールの後、シュトイデが山本に「ほら、これだけ拍手が来てるんだからアンコールやったら」と促す仕草を見せたため、山本は「ああ、そうっすね」という感じで、ショパンの「ノクターン第2番」をしみじみと演奏し、第15回ショパン国際コンクール第4位の実力を発揮しました
休憩後はベートーヴェン「交響曲第6番ヘ長調”田園”」です フルメンバーに加え、日本人の管楽奏者が3人加わります。総勢33人で田園を演奏するわけです
シュトイデの合図で第1楽章が軽やかに開始されます。第2楽章の「小川のほとりの風景」の何と穏やかで心地よい演奏でしょうか さて、この曲の演奏で一番驚いたのは第4楽章「雷鳴、嵐」の場面におけるヴァイオリン・セクションの演奏です これがたったの9人で演奏しているのか と思うほど”壮絶な”までの大迫力です シュトイデはじめ9人のヴァイオリニストが”命を懸けて”ベートーヴェンに取っ組み合いを仕掛けているようです
第4楽章だけでなく、全楽章を通して、33人による演奏が倍以上のフル・オーケストラで演奏しているのかと思えるほど迫力に満ちているのはなぜか 管楽器奏者は室内オケでもフル・オーケストラでもそれ程人数は変わらないので、弦楽奏者がいかに一人一人の持てる力が大きいかということでしょう ただ音が大きいというのではなく、エネルギーに満ちていなければなりません その点、このオケは大きなエネルギーの発露が感じられます。それと同時にシュトイデの統率力がいかに優れているかが窺がえます
私はこれまで何回”田園”を聴いてきたか分かりませんが、今回の公演が最も感動したコンサートだったと言っても過言ではありません
演奏者全員がステージの前方に並び、カーテンコールを受け、再び登場して椅子に着席します。聴衆はアンコール期待です すると、コントラバス奏者が日本語で「アンコールにヨハン・シュトラウスの有名なワルツを演奏します」(拍手)「これですべてお終いです」(大笑い)とアナウンスして演奏に入りました
最初は何の曲か分かりませんでしたが、途中から知っているメロディーが現れたので「ウィーン気質」であることが分かりました 冒頭の弦楽の4人の首席だけによる室内楽的な演奏は、シュトイデの艶やかなヴァイオリンを中心に、まさに”これぞウィーン気質”と言いたくなるような”訛りのある”演奏でした 聴き終わって「これこそ本物のウィンナ・ワルツだ」と思いました。この演奏を基準にすれば、その辺で演奏されているのは「ウィンナ風ワルツ」に過ぎない、と思います
前日の「ジークフリート」に次いで、昨日の指揮者なしの「トヨタ・マスター・プレイヤーズ、ウィーン」と、2日連続で忘れられない素晴らしいコンサートを体験しました 聴いてよかった、また来年も聴くことにしよう、と決心しました