人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

ワイケルト+N響でモーツアルト「ピアノ協奏曲第21番」、ブラームス「交響曲第1番」を聴く

2014年03月14日 07時01分00秒 | 日記

14日(金)。昨日の朝日朝刊・オピニオン欄「東日本大震災3年 これからを問う」で、イタリアに40年以上も住む作家の塩見七生さんがインタビューに答えています 記者が付けた見出しは「人の主役の復興へ未来の東北担う若い世代に2票を」「希望持ち前に進む原発事故の跡地 世界中に見せよう」です インタビューを超訳すると

「是非言いたいことがある。被災地の有権者を市町村の規模に限って45歳で分けたらよい。45歳以上はこれまで通り一人1票。45歳未満は一人2票にする その理由は、政府は昨年から所得税額に2.1%を25年間課す復興特別所得税を始めた。これは復興を国全体で支えるという意思表示であると同時に、復興の完了には25年かかると見ているということだ 今30代の東北の人たちは、人生の一番良い時期を復興に費やして、その結果を見極めるところで現役の生涯が終わる。余生は復興の成果を味わいながら過ごせるという感じ。だから、これから復興に直接携わる世代に、どのようなやり方で復興するかを決める権利を2倍与えようということだ

これに対して、記者から「1人1票という、民主主義の大原則に反しないか?」と問われると、

「もちろん反する。しかし目的は東北の再生だ。そのためには手段の一つくらいには目をつぶる。それも、被災地の市町村に限り、25年の間に限る」

と答えています。こういう発想はなかなか出来ないものです 古代から中世までの地中海世界と向き合い、壮大な物語を書かれてきた塩見さんならではの発想かもしれません 目先のことに捉われず、中長期的に物事を考えることの大切さを教えてくれています

 

  閑話休題  

 

昨夕は強風を伴った雨が降っていましたが、会社帰りに池袋に向かう途中、信号待ちしている時に急に突風が吹いてきて、ビニール傘がおちょこになり、骨が何本か折れてしまいました。当ブログ特派員は果敢にも、無残に骨が折れた傘にインタビューを試みました

t o r a: 急な突風で大変な目にあいましたねぇ

ビニ傘 : いや~、骨が折れました

 

  緩和及第?  

 

昨夕、池袋の東京芸術劇場でNHK交響楽団のコンサートを聴きました これは都民芸術フェスティバルの一環として挙行されたものです。プログラムは①モーツアルト「ピアノ協奏曲第21番ハ長調K.467」、②ブラームス「交響曲第1番ハ短調」。指揮はラルフ・ワイケルト、①のピアノ独奏はパスカル・ロジェです

会場入り口には「当日券はありません」の案内が出ています。会場は文字通り満席です 自席は2階K24番、センターブロック左通路側です

N響のメンバーが入場します。1曲目はモーツアルトのピアノ協奏曲第21番のため、少人数編成です。全員で52名ほどですが、相変わらずN響は男性比率が高いオケです。女性奏者は7人しかいません メンバーはかなり若返っている印象を受けました。ざっと見渡した限りでは顔と名前が一致するのは、マロことコンマスの篠崎史紀、チェロ首席の藤森亮一くらいです。私もずい分N響から遠ざかったものです

ソリストのパスカル・ロジェが指揮者ワイケルトとともに登場します ロジェはナディア・ブーランジェの最後の弟子で、とりわけフランス音楽の演奏にかけては他の追随を許さないところがあります。1971年のロン=ティボー国際コンクールの優勝者としても知られています

 

          

 

モーツアルトは1785年、つまり29歳の時に、ピアノ協奏曲の傑作を2曲作っています 第20番ニ短調K.466と第21番ハ長調K.467です。いずれもモーツアルト自身のピアノ独奏で初演されています 曲想としては対照的で、交響曲で言えば第40番ト短調K.550と第41番ハ長調K.551”ジュピター”と同じような関係にあります。音楽における”陰と陽”の関係とでも言いましょうか

ワイケルトとロジェはあらかじめ示し合わせたであろう”中庸”のテンポで音楽を進めます 第1楽章終盤にはピアノによるカデンツァがありますが、ロジェが演奏したそれは初めて聴くものでした モーツアルト自身はこの曲のカデンツァは作っていないので、ひょっとするとロジェ自身が作ったのかも、と思いました

第2楽章「アンダンテ」は1967年のスウェーデンの映画「みじかくも美しく燃え」で使われ、広く知られるようになりました ロマンティックな曲です。ロジェはていねいに「アンダンテ」を紡いでいきます。第3楽章では、時に装飾音を交えながら自由に演奏する姿が見られました

拍手に応えて、ロジェはエリック・サティの「ジムノぺティ」をニュアンス豊かに演奏しました

休憩後のブラームス「交響曲第1番ハ短調」は、作曲者による長年の努力の結晶です ブラームスは、ベートーヴェンの9つの交響曲がある限り、それを超える曲を作ることは出来ないとまで考え、慎重に準備を重ねていたのです

オケはメンバーが拡大し、総勢80名ほどになりましたが、やはり女性奏者は11人しかいません。読響よりも男性比率が高いかもしれません

ワイケルトの指揮は、これ見よがしなところがなく、いかにもドイツの堅実な指揮者といった風情があります。私は、一時、読響を振ったドイツの指揮者ゲルト・アルブレヒトを思い起こしていました

この交響曲の白眉は最後の第4楽章でホルンが奏でる雄大な旋律でしょう ブラームスは1868年9月、恩師シューマンの夫人クララの49歳の誕生祝に、スイスから挨拶状を送りました 「今日、アルペンホルンがこのように響きました。高い頂きの山から、深い谷から、あなたに何千回も心からのご挨拶を申し上げます」。それにこのアダージョの旋律が添えられていたのでした

久しぶりに第1交響曲を聴きましたが、いつ聴いても気持ちの良い曲です。ベートーヴェンの第5交響曲”運命”と同様、苦悩を乗り越えた先に歓喜が待っているような曲想です

会場一杯の拍手とブラボーに応えて、ワイケルト+N響はアンコールにシューベルトの「ロザムンデ」間奏曲第3番を静かに、そして感動的に演奏しました

 

          

 

コンサートが終わって自宅マンションに帰ると、駐輪場入口の植え込みから沈丁花の甘い匂いが漂ってきました この匂いを嗅ぐと”春が来たんだな”と実感します かつて経理の仕事をやっていた11年間は、この匂いを嗅ぐと憂鬱になったものです。3月といえば決算の月だからです 今でこそ素直に良い匂いだと感じますが・・・・・

今夕は、東京文化会館小ホールに「東京・春・音楽祭」の「春が来た!コンサート」を聴きに行きます。体力勝負です

 

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