人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

新国立オペラでコルンゴルトのオペラ「死の都」を観る~絶好調のケール、ミラー

2014年03月13日 07時00分57秒 | 日記

13日(木)。昨日の日経朝刊・文化欄に「オケ最後列が見た最前線」というテーマで、打楽器奏者の野口力さんがエッセイを書いています 野口さんは1951年に東京フィルにティンパ二奏者として入団、ABC交響楽団、読売日本交響楽団などを渡り歩いたそうです

が、ABC交響楽団って何だ?というわけでネットで調べてみたら、1956年に近衛管弦楽団が改組して出来たオケで、朝日放送が絡んでいたのでABC交響楽団という名称だったということが判りました

野口さんは、ハチャトリアンが自作の「剣の舞」を振った時、とんでもない速さの指揮について行くのがやっとだったこと、ロリン・マゼ―ルがマーラーの交響曲第2番「復活」を振った時、第2ティンパ二奏者だったにもかかわらず、演奏後に指名され拍手喝さいを浴びて嬉しかったことなどを書いています

私が今までで最も印象深いティンパ二奏者は、今は亡き宇宿允人(うすき・まさと)率いるフロイデ・フィルで演奏していた齋藤さんという女性奏者です。ベートーヴェンでもブラームスでも、いつでもどんな時でも、バチっと決めていました 彼女はフロイデ・フィルの事務も担当しており、チケットを送ってもらった時の送り状に彼女の名前が書かれていました いつもフルトヴェングラーのようなデモーニッシュな指揮をしていた宇宿允人氏は2011年の3.11東日本大震災の6日前の3月5日に亡くなり、フロイデ・フィルも自然消滅しました。残念です

 

  閑話休題  

 

昨夕、初台の新国立劇場で、コルンゴルトのオペラ「死の都」を観ました この公演はフィンランド国立歌劇場からのプロダクション・レンタルでの上演で、新国立オペラ初上演プログラムです キャストは、マリエッタ/マリーの声にミーガン・ミラー、パウルにトルステン・ケール、フランク/フリッツにアントン・ケレミチェフ、ブリギッタに山下牧子ほか。ヤロスラフ・キズリンク指揮東京交響楽団、新国立劇場合唱団による演奏。演出はカスパー・ホルテンです

 

          

 

この日を迎えるまで、毎朝CDで予習してきました マリエッタ/マリーの声にキャロル・ネブレット、パウルにルネ・コロ、フリッツにヘルマン・プライほか、エーリッヒ・ラインスドルフ指揮ミュンヘン放送管弦楽団による演奏です 特に「マリエッタの歌」(リュートの歌)は繰り返し聴きました

 

          

 

また、9日(日)には同じ新国立劇場でこのオペラの「ゲネプロ」を見学しました したがって、オペラの舞台・演出や音楽は一応は頭に入っています

物語は、19世紀末のベルギーの古都ブルージュ。愛する亡き妻マリーを忘れられないパウルは、妻の遺品に囲まれて悲しみの中で生きている ある日、パウルは街でマリーにそっくりな踊り子マリエッタに出会い、家に招待する マリエッタの虜になったパウルは、次第に生と死の間の幻想の世界に入り込んでいき、二人は一夜を過ごす。パウルは亡き妻の遺髪を首に巻きつけて踊るマリエッタを絞殺してしまう 夢から目を覚ましたパウルは、妻の死を受け入れ、ブルージュの街を立ち去ることを決意する

コルンゴルトの両親は、同じオーストリアで生まれたウォルフガング・アマデウス・モーツアルトの名前の一部をとって、子どもにエーリッヒ・ウォルフガング・コルンゴルトと名付けました 幼少の頃から音楽の才能を発揮し神童と呼ばれ、かのマーラーからは「天才」と呼ばれています 信じられないかも知れませんが、その当時は同じウォルフガングでも、モーツアルトよりもコルンゴルトの方が優れていると言われていたほどだったようです オペラ「死の都」は20歳から23歳まで4年かけて作曲されたものですが、その若さですでに円熟した内容の作品となっています

指揮を執るキズリンクは2011年の新国立オペラ「ルサルカ」で指揮をした人です マリエッタ/マリーの声を歌うミーガン・ミラーは2013年の新国立オペラ「タンホイザー」のエリーザベトを歌ったソプラノです 彼女は第1幕の「マリエッタの歌」(別名「リュートの歌)」を思い入れたっぷりに歌い上げました パウル役のケールとともにほぼ出ずっぱりですが、最後までまったく乱れることなく、美しくも芯のある歌声を聴かせてくれました

 

          

 

一方、パウル役のトルステン・ケールは、今回の舞台で同役を演じるのが100回目という頼もしいヘルデン・テノールです (かなり前のことですが、ある歌手を「ヘンデル・テノール」と書いていたのを見て、思わず苦笑してしまいました)。このオペラはパウルが主役と言っても良い作品ですが、最初から最後まで出ずっぱりで、力強くも輝くテノールを聴かせてくれました 最後の最後に高音部で不安定なところがありましたが、誰もそれにブーイングを浴びせる者はいませんでした。素晴らしいの一言です

 

          

 

また、「ゲネプロ」の時にはそれ程でもなかったのですが、フランク/フリッツ役のアントン・ケレミチェフとブリギッタ役の山下牧子も、それぞれが役にピッタリの歌声を聴かせてくれました

英国ロイヤル・オペラをはじめ世界で活躍する演出のカスパー・ホルテンは、亡くなった妻マリーを舞台上に登場させるという斬新な手法をとりました パウルにしか見えないはずのマリーの姿を観客に視覚化することで、パウルの精神の倒錯状態を表します その意図は見事に成功したと言っても良いでしょう。物語が視覚的に分かり易く、素直に頭に入ってきました

午後7時に幕を開けた「死の都」は、途中2回の休憩を挟んで、ブラボーと拍手 の中、午後10時25分にカーテンコールが終わりました

 

          

 

今回はゲネプロと本番初日公演と2回観て聴いたわけですが、何度聴いても素晴らしいオペラだと思います 

 

          

 

そもそもコルンゴルトを初めて聴いたのは30年以上前にフルート教室で一緒だった当時W大学大学院生O君から教えてもらった「ヴァイオリン協奏曲」のLPでした 一度聴いてすっかり気に入ってしまい、当時神保町の裏通りにあった「バイロイト」というレコード屋に行ってLPを買い求め、何度も聴いたものです それからコルンゴルトの作品を集め始め、オーストリア時代の交響曲や室内楽から、アメリカに渡って作曲した映画音楽まで様々な作品を聴くようになりました 当時、W君を中心に「日本コルンゴルト協会」という組織を立ち上げ、会員番号までもらったのですが、発足式の日に風邪をひいてしまい出席できないまま時間だけが経過してしまいました 今でもコルンゴルトの音楽は大好きですが、あの組織はどうなってしまったのか、今さらながら気にかかる今日この頃です きっかけとなった「ヴァイオリン協奏曲」のLPを探してみたのですが、1500枚の半分未整理のLPの中から探し出すことはできなかったので、映画音楽サウンドトラック集のCDをご紹介することにします

 

          

 

さて、今夕は池袋の東京芸術劇場にNHK交響楽団のコンサートを聴きに行きます。体力勝負です

 

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