人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

新日本フィル室内楽シリーズ~J.シュトラウス、マウラー、モーツアルト~編曲の妙を聴く

2013年05月16日 07時00分15秒 | 日記

16日(木)。昨夕、すみだトりフォニーホール(小)で新日本フィル室内楽シリーズ「音楽家たちの饗宴」を聴きました プログラムは①J.シュトラウス「こうもり」序曲ほか、②マウラー「金管五重奏のための12の小品」、③モーツアルト「交響曲第40番ト短調K.550」です 室内楽でこれらの曲を演奏するということは、すなわち編曲による演奏ということです。この日のプログラムは”編曲の妙”と言っても良いかもしれません

例によって開演前には新日本フィルの第2ヴァイオリン奏者・篠原英和さんによる”プレ・トーク”がありました。この日は来月解散する東京クワルテットと、カラヤン率いるベルリン・フィルのコンサート・マスターを長年務めたミシェル・シュヴァルべ氏について、いつものように原稿なしの流暢な解説がありました 東京クワルテットの創立時から現在に至るまでのメンバーの移動やリリースしたレコードの年代が、次から次へとポンポン出てきます どうしてこういうトークが可能なのか、いつもながら口をあんぐり開けて耳を傾けるだけです

シュヴァルべ氏はポーランド生まれのユダヤ人で、両親がナチス・ドイツの犠牲になったことから、ナチ党員だったカラヤンからベルリン・フィルのコンマスに誘われた時、何度も断ったそうです しかし、カラヤンの熱意に負けて最後には引き受けたそうです。初めて聴く話でした。篠原さんのトークには教わることが多々あります

 

          

 

さて、1曲目に演奏されるJ.シュトラウスのオペレッタ「こうもり」は、序曲、”公爵様、あなたのようなお方は”、フィナーレをコントラバスの村松裕子さんがコントラバス用に編曲したものです 演奏は、竹田勉、渡辺玲雄、城満太郎、村松裕子の4人です 普段は縁の下の力持ちで、メロディー楽器でない低音域のコントラバスだけで、メロディー・パートと伴奏パートを分担する訳ですから相当演奏が難しいと思われます 単色の音をいかに幅広く聴かせるかが編曲の腕の見せ所ですが、村松裕子さんの編曲はとても楽しめました 何より演奏者が楽しそうに演奏していたのが一番好感が持てました 村松さんはオーケストラの定期で演奏し、室内楽シリーズで演奏し、その上、編曲もやらなければならない訳ですから、その努力は並大抵ではないと思います。演奏した4人のメンバーはもちろんのこと、村松さんには特大の拍手を送ります

2曲目の「金管五重奏のための12の小品」は、1789年ドイツ生まれのマウラーが書いた曲ですが、その中から7曲を演奏します。トランペット=服部孝也、市川和彦、ホルン=井出詩朗、トロンボーン=箱山芳樹、チューバ=佐藤和彦の面々による演奏です

金管だけのアンサンブルですが、明るい親しみのあるメロディーが続き、素晴らしいハーモニーが聴けました

3曲目のモーツアルト「交響曲第40番ト短調K.550」の演奏は、フルート=渡辺泰、オーボエ=浅間信慶、クラリネット=鈴木高道、ファゴット=坪井隆明、ホルン=金子典樹によって演奏されました 足をくじいたのか、ファゴットの坪井さんは松葉杖をついて登場しました

ホルンを含む木管によるアンサンブルですが、第1楽章冒頭のフルート、次いでオーボエがメロディーを奏でるところは、もう少しソフトに出られたらよかったかな、とも思いました しかし、楽章を追うごとにスムーズに流れるようになりました。全楽章を通して良かったのはファゴットです オーケストラでの演奏で通常通り演奏する部分が多かったのかも知れません。その点、フルート、オーボエ、クラリネットは弦楽器が演奏する(メロディー)パートも演奏しなければならないので、超多忙で演奏困難だと思います。それを考えれば、5人の奏者は熱演を繰り広げたと言えると思います

 

          

 

演奏後、ホワイエで開かれたワン・コイン・パーティーに500円を払って参加しました ここでも篠原さんが進行役を務め、この日の出演者にインタビューしました

最初にこの日の「プレ・トーク」で解説したミシェル・シュヴァルべ氏のエピソードを紹介、

「私が新日本フィルの入団したての時、シュヴァルべさん来日して新日本フィルと共演する機会があったのですが、その時の指揮者が井上道義さんでした。演奏が終わって誰かが通訳を通して、指揮者について感想を聞くと、彼は『ぶっ殺してやる』と言っていたそうです

「私もそう思います」とは篠原さん、口が裂けてもおっしゃいませんでした が、何となくシュヴァルべさんの気持ちは分かるような気がします 演奏に①指揮者が燃えてオケが醒めている演奏、②指揮者は醒めていてオケが燃えている演奏、③指揮者もオケも燃えている演奏があるとすれば、井上氏の場合は①のケースか・・・・・・なんて勝手に思ったりします 演奏前、演奏中、演奏後のパフォーマンスを見ると何となくそう思ってしまうのですね、これが

ロシアのピアノの巨匠、チェルカスキーが来日した際、井上氏の指揮で誰かのピアノ協奏曲を演奏した後、井上氏が「また共演しましょう」と持ちかけると、巨匠は「だれと?」と訊き返した、というエピソードを聞いたことがあります いえ、私は決して井上さんのこと嫌いではありません。

さて、インタビューの最初は「プレ・トーク」の後任に決まっている村松裕子さんです

「後任に村松さんに白羽の矢を立てて説得したのですが、最初のうちはなかなか首を縦に振ってくれませんでした。最終的には引き受けてくれましたが 村松さん、次期のプレ・トークに向けてどのようにしようという考えや抱負はありますか?」

と尋ねると、村松さんは、

「な~んにも考えていないんです 皆さん、こうした方がいいとか、こういう話をしたらとか、アイディアがあったら教えてください 篠原さんのプレ・トークはいつも15分ぴったりで終わるんですよね。こういうことは普通の人には出来ません こういうところは引き継いでいきたいですね

と答えていました。篠原さんは、

「自分自身のスタイルを出来るだけ早く身につけて頑張ってほしいと思います

と暖かい言葉をかけていました。モーツアルトを演奏したオーボエの浅間信慶さんに

「木管による40番は、演奏していてどうでしたか?」

と尋ねると、浅間さんは、

「この曲はやっぱりオーケストラで演奏する曲だと思いましたね 弦楽器にはかないません 木管だけで、こんなことしてていいのかな、って思いながら演奏してましたよ

と答えていました。この人は正直な人だと思いました。クラリネットの鈴木高道さんに

「鈴木さんはバス・クラリネットを演奏する機会が多いと思いますが、バス・クラが活躍する曲にはどんな曲がありますか?」

と尋ねると、

「今度、6月にハーディングの指揮でマーラーの第6番を演奏しますが、バス・クラのソロが長く続くところがあります 是非聴きに来てください

とPRしていました。チューバの佐藤和彦さんにインタビューしたときも、チューバが活躍する曲としてマーラーの第6交響曲を挙げていました。チューバにとってこの曲は”トライアスロン”だそうです

こうして、演奏者の皆さんの声を直接聞くと本当に楽しく、参考になります ワインも2杯は飲んでいるので500円は安いです。そう言えば、ワインをお代わりしたら、缶入りの赤ワインをグラスに注いでくれました。「ワインは瓶でなければ」などとビンカンなことは言わないことにします

 

コメント (2)
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