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人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

新国立オペラ、細川俊夫「ナターシャ」を観る ~ ハイテクを駆使した映像表現による舞台作りと総合的な演出にブラボー! 山下裕賀、森谷真理、冨平安希子ら日本人歌手陣大健闘!

2025年08月14日 00時28分08秒 | 日記

14日(木)。昨日は午前中、子どもたちと品川の親戚にお盆の挨拶に行き、鰻をごちそうになって、私だけオペラのためお先に失礼しました 鰻も煮物も漬物も、デザートのマンゴーとマスカットも美味しかったです

ということで、わが家に来てから今日で3866日目を迎え、米ホワイトハウスのレビット大統領報道官は12日の記者会見で、15日に予定する米ロ首脳会談でウクライナ停戦に合意するのは難しいとの見解を示し、ウクライナのゼレンスキー大統領は参加しないと明かした  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

紛争当事国のウクライナが参加せず 無関係のアメリカが参加するって どういう意味があるんだろ?

         

昨日の夕食は、息子が「ブリと夏野菜のスパゲッティ」「茄子のトマトソース・ソテー」「コーン・スープ」を作ってくれました スパゲッティはあまりにも美味しくて お代わりしました

         

昨日、新国立劇場「オペラパレス」で多和田葉子原作・細川俊夫作曲「ナターシャ」を観ました 私はプルミエ(初日)会員なので、本来は11日の公演を観る予定だったのですが、「フェスタサマーミューザ・フィナーレ」公演とダブってしまったので、振り替えの利くオペラをこの日に振り替えました

出演はナターシャ=イルゼ・エーレンス、アラト=山下裕賀、メフィストの孫=クリスティアン・ミードル、ポップ歌手A=森谷真理、ポップ歌手B=冨平安希子、ビジネスマンA=タン・ジュンポ、ビジネスマンB=ティモシー・ハリス、サクソフォン奏者=大石将紀、エレキギター奏者=山田岳。管弦楽=東京フィル、合唱=新国立劇場合唱団、指揮=大野和士、演出=クリスティアン・レートです

「ナターシャ」は多和田葉子の台本により細川俊夫が作曲したオペラです 新国立劇場オペラ芸術監督・大野和士による日本人作曲家創作委嘱作品第3弾として制作され、この度の世界初演となりました

難民のアラトは母なるものを求め地底への入口を探し、故郷を追われ彷徨う難民のナターシャと出会う 言葉が通じないながら名を伝え合った2人の前に”メフィストの孫”と名乗る男が登場する 2人は”メフィストの孫”に誘われ、海辺から離れ「森林地獄」「快楽地獄」「洪水地獄」「ビジネス地獄」「沼地獄」「炎上地獄」「旱魃(かんばつ)地獄」へと旅していく

振り替え後の自席は1階3列11番、左ブロック右通路側です こんなに前の席で鑑賞したのは初めてです 指揮者の横顔がよく見える位置です

ナターシャ役のイルゼ・エーレンスはベルギー出身のソプラノです 幅広いレパートリーによりヨーロッパ各国の歌劇場を中心に活躍しています 新国立オペラでは2018年の細川俊夫「松風」タイトルロールで出演しました 表現力豊かな歌唱で聴衆を魅了しました

アラト役の山下裕賀(やました ひろか)は東京藝大・大学院を首席修了 第92回日本音楽コンクール声楽部門第1位。大野和士✕都響ではベートーヴェン「第九」、ヴェルディ「レクイエム」などでソリストを務めたソプラノです 説得力のある歌唱と演技で存在感を示しました

メフィストの孫役のクリスティアン・ミードルはドイツのユーゲント・ムジツイールトコンクールで優勝 ザルツブルクのモーツアルテウムで学ぶ。深みのあるバスが魅力的でした

ポップ歌手A役の森谷真理は武蔵野音大・大学院、マスネ音楽院修了。新国立オペラ「ジュリオ・チェーザレ」クレオパトラで好評を博すなど多方面で活躍中 力強くも美しいソプラノと卓越した演技力で聴衆を魅了しました

 【追伸:訂正】(8月14日20:40)

 文中に「マスネ音楽院」とありますが、クラシックファンさんから「マネス音楽院」である旨のご指摘をいただきました。調べた結果、ご指摘の通りでした。お詫びの上、訂正させていただきます

ポップ歌手B役の冨平安希子は東京藝大・大学院、シュトゥットガルト音楽大学を修了 二期会のオペラ公演を中心に活躍中のソプラノです 表現力豊かな歌唱で存在感を示しました

サクソフォン奏者役の大石将紀は東京藝大・大学院修了、パリ国立高等音楽院修了。クラシック、特に現代音楽の分野で活躍中 「快楽地獄」におけるサックスのご機嫌なインプロビゼーションが印象的でした

エレキギター奏者役の山田岳は中学生のときジミ・ヘンドリクスに憧れギターを始める 国内外の音楽祭に招聘されるなど世界的に活躍中 「快楽地獄」におけるロックンロール的なカオスな演奏が素晴らしかったです

本公演で特に印象に残ったのはドイツ出身のクリスティアン・レートによるハイテクを駆使した映像表現による舞台作りと総合的な演出です

ところで2人の難民は「森林」「快楽」「洪水」「ビジネス」「沼」「炎上」「旱魃(かんばつ)」という7つの地獄を旅しますが、これを見て、モーツアルトの歌劇「魔笛」を思い出しました ザラストロの命により、タミーノは「沈黙の試練」を課せられますが、これをクリアします 次いでパミーナと2人で「火の試練」を、次いで「水の試練」をクリアして、2人はめでたく結ばれます これを「ナターシャ」に置き換えれば「洪水」「炎上」と「旱魃(かんばつ)」(誰もが砂漠では愛を失う)の3つの地獄に相当すると思います 魔笛に比べてナターシャでは4つも試練(地獄)が増えています 現代はそれだけ地獄が多いということでしょう 「快楽地獄」では一般的なエンターテインメント的な表現がある一方で、プラスチックにより海が汚染されていく様子が描かれます また、「ビジネス地獄」ではコーラスが じゃらじゃら(お金)、ばりばり(仕事に励む)、しゃらしゃら(表面的)といった擬音語によって現代人を揶揄するように歌います

こうしたことから、「ナターシャ」は現代の地獄(試練)をそのまま描いたオペラだということができると思います

また、主人公のナターシャはウクライナからの難民、アラトは日本からの難民という設定になっています さらに、このオペラでは日本語で歌われたり、ドイツ語で歌われたり、序盤では「海」という言葉が30以上の言語で重なり合って囁かれたりする「多言語オペラ」です したがって、グローバルな共通テーマを扱った先駆的なオペラと言えると思います

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新日本フィル「2026ー2027シーズン・ラインナップ」発表 / Netflixでアダム・ウィンガード監督「ゴジラ ✕ コング 新たなる帝国」を観る

2025年08月13日 00時39分44秒 | 日記

13日(水)。新日本フィルが公式ウェブサイトで「2026ー2027シーズン」のラインナップを発表しました

各シリーズの日程・プログラムは以下の通りです

Ⅰ.トリフォニーホール・シリーズ & サントリホール・シリーズ(共通プログラム:全7公演)

(1)4月11日(土)14時開演:トリフォニーホール、4月12日(日)14時開演:サントリーホール=①バツェヴィチ「オーケストラのための序曲」、②クララ・シューマン「ピアノ協奏曲イ短調」、③サン=サーンス「交響曲第3番」(指揮=カレン・二ーブリン、P=小林愛実)

(2)5月8日(金)19時開演:サントリーホール、5月9日(土)14時開演:トリフォニーホール=①ラヴェル「ラ・ヴァルス」、②ショスタコーヴィチ「チェロ協奏曲第1番」、③ブラームス「交響曲第2番」(指揮=ミシェル・タバシュニク、Vc=アンドレイ・イオニーツァ)

(3)6月12日(金)19時開演:サントリーホール、6月13日(土)14時開演:トリフォニーホール=マーラー「交響曲第3番」(指揮=佐渡裕、メゾソプラノ=藤村実穂子ほか)

(4)9月25日(金)19時開演:サントリーホール、9月26日(土)14時開演:トリフォニーホール:ブルックナー「交響曲第5番」(指揮=佐渡裕)

(5)10月17日(土)14時開演:トリフォニーホール、18日(日)14時開演:サントリーホール=①ムストネン「トリプティーク」、②ベートーヴェン「ピアノ協奏曲第5番」、③メンデルスゾーン「交響曲第3番”スコットランド”」(指揮・ピアノ=オリ・ムストネン)

(6)1月23日(土)14時開演:サントリーホール、24日(日)14時開演:トリフォニーホール=①サン=サーンス「ヴァイオリン協奏曲第3番」、②リヒャルト・シュトラウス「英雄の生涯」(指揮=佐渡裕、Vn=アレクサンドラ・コヌノヴァ)

(7)2月20日(土)14時開演:サントリーホール、21日(日)14時開演:トリフォニーホール=①テレマン「リコーダー協奏曲ハ長調」、②J.S.バッハ「管弦楽組曲第3番」、③ベートーヴェン「交響曲第2番」(指揮・リコーダー=ドロティー・オーバーリンガー)

上記7公演で興味を引かれるのは6月のマーラー「交響曲第3番」と9月のブルックナー「交響曲第5番」です どうしても好きな作曲家の大編成による作品が気になります 他公演の指揮者はほとんど初めて目にする名前なので、何とも言いようがありません ただ、演奏曲目としては、クララ・シューマン「ピアノ協奏曲 イ短調」(P=小林愛実)、サン=サーンス「交響曲第3番」、ショスタコーヴィチ「チェロ協奏曲第1番」、メンデルスゾーン「交響曲第3番”スコットランド”」、サン=サーンス「ヴァイオリン協奏曲第3番」、J.S.バッハ「管弦楽組曲第3番」と魅力のあるラインナップになっています

Ⅱ.すみだクラシックへの扉シリーズ(全8公演。金・土の14時開演:トリフォニーホール)

(1)4月17日・18日:①モーツアルト:歌劇「フィガロの結婚」序曲、②同「ヴァイオリン協奏曲第5番」、③ベートーヴェン「交響曲第7番」(指揮=アルマ・ドイチャー、Vn=中原梨衣紗)

(2)5月15日・16日:①シベリウス「トゥオネラの白鳥」、②グリーグ「ピアノ協奏曲イ短調」、③同「ペール・ギュント」第1組曲・第2組曲(指揮=コルネリオス・ミハイリディス、P=角野未来)

(3)6月5日・6日:①ブラームス「ヴァイオリン協奏曲」、②同「交響曲第1番」(指揮=佐渡裕、Vn=三浦文彰)

(4)7月3日・4日:①芥川也寸志「交響管絃楽のための前奏曲」、②伊福部昭「ヴァイオリンと管絃楽のための協奏風狂詩曲」、③吉松隆「交響曲第3番」(指揮=藤岡幸夫、Vn=木島真優)

(5)9月11日・12日:①ラヴェル「左手のためのピアノ協奏曲」、②同:組曲「マ・メール・ロワ」、③同「ダフニスとクロエ第2組曲」他(指揮=沼尻竜典、P=久末航)

(6)10月23日・24日:ワーグナー(マゼール編曲)「言葉のない『指環』 ~ ニーベルングの指環管弦楽曲集」(指揮=上岡敏之)

(7)11月13日・14日:①リスト「ピアノ協奏曲第1番」、②ドヴォルザーク「交響曲第8番」他(指揮=ジュリアン・ラクリン、P=石井琢磨)

(8)1月29日・30日:①プロコフィエフ:組曲「3つのオレンジへの恋」、②ハチャトゥリアン「ヴァイオリン協奏曲」、③チャイコフスキー「交響曲第4番」(指揮=佐渡裕、Vn=アレクサンドラ・コヌノヴァ)

上記8公演で一番興味を引かれるのは、7月の①芥川、伊福部、吉松の邦人作曲家によるコンサート(指揮=藤岡幸夫)です このほか9月の沼尻竜典指揮、久末航ピアノ独奏によるラヴェル「左手のためのピアノ協奏曲」も面白そうです 演奏曲目としては5月のグリーグ「ピアノ協奏曲 イ短調」(ピアノは角野隼斗の妹・角野未来)、6月のブラームス「ヴァイオリン協奏曲」(Vn=三浦文彰)、1月のハチャトゥリアン「ヴァイオリン協奏曲」などが面白そうです 一方、10月のワーグナー(マゼール編曲)「言葉のない『指環』 ~ ニーベルングの指環管弦楽曲集」は、フェスタサマーミューザのオープニング・コンサート(7/26)でジョナサン・ノット ✕ 東響で聴いたので、ノットとの比較で上岡のワーグナーを聴くのも一興かな、と思います

ということで、わが家に来てから今日で3865日目を迎え、トランプ米大統領が11日、「首都ワシントン(コロンビア特別区)の治安対策に州兵を派遣する。ワシントン警察を連邦政府の指揮下に置く」と表明したことに対し、50年ほど自治権を行使してきた特別区に対し連邦政府が介入を強めることを懸念する声が多く上がっている  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

何でもかんでも自分の支配下に置きたがるトランプは  ”部下に 任せられない”タイプの人間だな

         

昨日、夕食に「ビーフシチュー」と「生野菜とモッツアレラチーズのサラダ」を作りました ビーフは久しぶりにブロック肉を使いましたが、柔らかくて美味しく出来ました  ワインは息子が宮城県から持ってきた赤ワインです

         

Netflixでアダム・ウィンガード監督による2024年製作アメリカ映画「ゴジラ ✕ コング  新たなる帝国」(117分)を観ました

怪獣と人類が共生する世界。未確認生物期間「モナーク」が異常なシグナルを察知したことを発端に、ゴジラが君臨する地上世界とコングが生きる地底世界の2つのテリトリーが交錯し、ゴジラとコングが激突する しかし、その先には人類にとってさらなる未知の脅威が待ち受けており、怪獣たちの歴史と起源、さらには人類の存在そのものの謎に迫る新たな冒険が繰り広げられる

この映画は、2014年の「GODZILLA ゴジラ」から始まったハリウッド版「ゴジラ」シリーズ「キングコング:髑髏島の巨神」の世界観をクロスオーバーさせた「モンスターバース」シリーズの第5弾です

伊福部昭のゴジラのテーマを期待して観たのですが、まったく流れませんでした ひょっとして日本で製作する「ゴジラ」シリーズだけで使用されているのかもしれません

ゴジラ ✕ コングなので、モスラは出てこないのかと思っていたら、美しい華麗な姿を現したので良かった 初代のモスラの野暮ったさがなく、すっかり洗練されていて、ちょっと寂しさも感じました

         

今日は新国立劇場「オペラパレス」に細川俊夫「ナターシャ」を観に行きます

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原田慶太楼 ✕ 服部百音 ✕ 東京交響楽団でバルトーク「ヴァイオリン協奏曲第2番」、ニールセン「交響曲第4番」、芥川也寸志「八甲田山」を聴く ~ フェスタサマーミューザ・フィナーレコンサート

2025年08月12日 00時02分20秒 | 日記

12日(火)。昨日午前、宮城県白石市に単身赴任している息子が帰省しました お土産に宮城県の日本酒とワインを持ってきてくれたので、さっそく「夏限定にごり酒」を夕食時にいただきました とても美味しかったです

ということで、わが家に来てから今日で3864日目を迎え、トランプ米政権第1期で米国安全保障補佐官を務めたジョン・ボルトン氏は10日、世界の主要な紛争仲介者として名乗りを上げ、各国の首脳からノーベル平和賞候補として推薦されているトランプ大統領の最近の外交姿勢について、「彼は何よりもノーベル平和賞を求めている」と非難した  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

   

   過去にヒットラーも推薦されたことがあるが 受賞はしていない 同じ独裁者のトランプは?

         

昨日の夕食は、娘が北海道旅行の際に送ってくれた「いくら」を基に、息子が「鮭いくら丼」を作り、大学時代の友人S君が送ってくれた「鰯」を梅煮にして、「豆腐と豆と野菜のサラダ」、「ハマグリの味噌汁」を作ってくれました いつもながらプロ級の味で、とても美味しくいだだきました

         

昨日、ミューザ川崎シンフォニーホールで「フェスタサマーミューザ フィナーレコンサート」を聴きました プログラムは①芥川也寸志「八甲田山」、②バルトーク「ヴァイオリン協奏曲 第2番」、③ニールセン「交響曲第4番 作品29 ”不滅”」です 演奏は②のヴァイオリン独奏=服部百音、指揮=原田慶太楼です

指揮を執る原田慶太楼は東京交響楽団正指揮者、愛知室内オーケストラ首席客演指揮者兼アーティスティック・パートナー、米ジョージア州サヴァンナ・フィル音楽・芸術監督を務め、2025年7月からオハイオ州デイトン・フィル音楽・芸術監督にも就任

開演前に原田、服部の2人によりプレトークが行われました 最初に原田が服部に「バルトークの第2番は、数あるヴァイオリン協奏曲の中でも1,2を争うほど演奏が困難な曲です なぜ、あえてこの曲を選んだのでしょうか?」と問いかけると、服部は「チャイコフスキーやメンデルスゾーンの方がチケットの売れ行きが良いと言われるのですが(会場)、自分としては、そればかりではなく、あまり演奏されない曲で美しく素晴らしい作品もあるので、そのような曲を取り上げるのも演奏家の務めだと思います バルトークもそういう曲です」と答えていました いつも思うのですが、彼女は芯がしっかりしています 服部だけ舞台袖に引き上げた後で、原田がこの日のプログラミングの趣旨を説明しました 「今年は芥川が生誕100年、バルトークが没後80年、ニールセンは生誕160年のアニバーサリーイヤーを迎えますが、この日演奏する作品はいずれも50代の時に作曲されました」と共通点を指摘しました トークの最後に「皆さん、ミューザの扇子、買いましたか?今日が最後ですよ。売れ残ると困ります。全員で買いましょう」とアジを飛ばして舞台袖に引き上げて行きました

会場はほとんど満席に近い状況です

オケは14型で 左から第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、その後ろにコントラバスという並び コンマスは小林壱成、隣はグレブ・ニキティンという2トップ態勢を敷きます なぜか、ティンパニが正面奥のほかに下手にも設置されています 原田の場合は通常ヴァイオリンが左右に分かれる「対抗配置」がほとんどですが、プレトークでの解説によると、3曲目のニールセンは「不滅」の演奏についてはこの配置を指定しており、ティンパニも2台登場させ、1台はできるだけ客席に近い場所で演奏するようにという指定があるそうです

1曲目は芥川也寸志「八甲田山」です この曲は芥川也寸志(1925-1989)が1977年に公開された森谷司郎監督による映画「八甲田山」のために作曲したもので、第1回日本アカデミー賞最優秀賞を受賞しています 演奏するのは第1曲「八甲田山」(タイトル)、第10曲「徳島隊銀山に向かう」、第37曲「棺桶の神田大尉」、第38曲「終焉」の4曲です

原田の指揮で演奏に入りますが、ほとんど「昭和」の世界です NHK大河ドラマ風の雄大な音楽がフルオーケストラで演奏されます

2曲目はバルトーク「ヴァイオリン協奏曲第2番」です この曲はベラ・バルトーク(1881-1945)がハンガリー出身のヴァイオリニスト、ゾルタン・セーケイのために1937年から38年にかけて作曲、1939年3月にアムステルダムで初演されました 第1楽章「アレグロ・ノン・トロッポ」、第2楽章「アンダンテ・トランクイロ」、第3楽章「アレグロ・モルト」の3楽章から成ります

ヴァイオリン独奏の服部百音(はっとり もね)は1999年生まれ。桐朋学園大学大学院修了。10歳以降様々な国際コンクールで優勝やグランプリを受賞 国内外でオーケストラとの共演を重ねるほか、自主企画によるコンサートも展開している

協奏曲の場合は通常、弦楽器の編成を縮小する(本公演では14型を12型に)例が多いのですが、服部の強靭な演奏力に対峙するためか、14型のままの編成を維持します

グリーンのラメ入り衣装で登場した服部が指揮台の下手にスタンバイしますが、彼女の前には譜面台がありません

原田の指揮で第1楽章に入ります ハープの和音連打に導かれて、服部のヴァイオリンが入ってきます 服部は目まぐるしく変化するテンポをものともせず、超絶技巧により切れ味鋭い演奏を展開します 第2楽章では独奏ヴァイオリンにより美しいメロディーが奏でられ、一息つきます と思っていると、一寸先は闇で、再びテンポが上がり情熱的な演奏が繰り広げられます 第3楽章は再び切れ味鋭い独奏ヴァイオリンが縦横無尽に天翔けます 原田 ✕ 東響とのコラボは「協奏曲」というよりは「競争曲」です 何かに憑りつかれたような熱狂的な演奏で曲を閉じると、服部がちょっとフラっとしてバランスを崩しました 一瞬、大丈夫か?と思いましたが、すぐに立ち直りました あまりの熱演に一時的に酸欠状態になったのかもしれません

満場の拍手とブラボーが飛び交うなか、カーテンコールが繰り返されました あれだけ難しい曲を終始暗譜で演奏し、両腕を酷使したのだからアンコールは期待しない方がいいな、と思っていたら、そこは不死身の服部百音です 左腕をぶるんぶるんさせて緊張した筋肉をリラックスさせてから、ファジル・サイ「クレオパトラ」の音楽を、いとも鮮やかに演奏、再び満場の拍手に包まれました 彼女はまだ26歳ですが、とてつもない精神力と表現力の持ち主です まだまだ彼女のチャレンジは続くでしょう すごく楽しみです

プログラム後半はニールセン「交響曲第4番 作品29 ”不滅”」です この曲はカール・ニールセン(1865-1931)が1914年から16年にかけて作曲、1916年にコペンハーゲンで初演されました 単一楽章ですが、4部から構成されています

オケは14型のままで、前述の通りティンパニが中央奥とステージ下手にスタンバイします

原田の指揮で演奏に入ります 第1部では弦楽セクションの渾身の演奏と、伊藤文嗣のチェロ独奏が印象的でした 第2楽章ではフルートの竹山愛、クラリネットの吉野亜希菜、オーボエの荒絵理子、ファゴットの福井蔵の演奏が冴えていました 第3部では厚みのある弦楽セクションのアンサンブルが印象的でした 第4楽章では2人のティンパニ奏者による掛け合いが迫力満点で、オケの総力を挙げて演奏されたフィナーレは爽快でした

満場の拍手とブラボーが飛び交うなか、カーテンコールが繰り返されました 原田はプレトークで「今から言っておきますが、アンコールをやります フィナーレ公演のアンコールはこの曲しかありません」と語っていた山本直純「好きです かわさき 愛の街」を、聴衆の手拍子を求め、聴衆参加型のアンコールで今年のフェスタサマーミューザを締めくくりました

         

本公演をもって7月26日から始まった「フェスタサマーミューザ KAWASAKI 2025」も終了です オーケストラ・セット券(全11公演)を取ったので、全て同じ指定席(2階2CA6列53番)で聴きました 2階センターブロックとは言え、右端の方の席です 昨年までは1階席の良い席が取れていたのですが、次第に良い席が取りにくくなっていると感じます 今年の特徴は①初めて「九州交響楽団」が参加したこと、②プレトークが各公演とも20分間みっちり話されたこと(昨年までは5分とか10分で終わるトークがあり、ガッカリした)の2点だと思います このほか、例年どおり洗足学園音大のバレエ公演を観ましたが、秋山和慶氏の姿が見られなかったのが寂しかったです

この日の公演は、今年聴いた120回目のコンサートでした 今後は在京オーケストラの定期演奏会や新国立オペラ中心の従来ペースに戻ります

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芥川也寸志著「私の音楽談義」を読む ~ 生誕100年を迎えた作曲家による平明な文章で書かれたクラシック入門書:興味深いショスタコーヴィチのエピソード / 芸術は静寂から生まれる

2025年08月11日 00時04分13秒 | 日記

11日(月)。昨日の朝日新聞朝刊のコラム「日曜に想う」で吉田純子編集委員が次のように書いています

「闇はもはや贅沢品である。闇と静寂は畏れと自省をもたらす 芸術は静寂から、娯楽は喧騒から生まれる。思想統制と娯楽政策の両輪で、政府が国民を総動員していた時代があったことを忘れてはならない

「芸術は静寂から、娯楽は喧騒から生まれる」というのは名言です 「芸術は静寂から」の部分では、マーラー「交響曲第1番」第1楽章の冒頭を思い浮かべました

ということで、わが家に来てから今日で3863日目を迎え、イスラエル政府がパレスチナ自治区ガザ地区での紛争を拡大し、北部ガザ市制圧を承認したことを受けて、イスラエルのテルアビブで9日、紛争終結を求めるデモが行われ、数万人が参加した  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

   

   イスラエルは 紛争拡大よりも 人質解放を優先すべきだ  ネタニヤフはとち狂っている

         

芥川也寸志著「私の音楽談義」(中公文庫)を読み終わりました 芥川也寸志は1925年に東京・田端で芥川龍之介の三男として生まれる。1949年東京音楽学校研究科卒業。伊福部昭らに師事後、作曲家として「交響三章」「ラ・ダンス」などを発表 53年に團伊玖磨、黛敏郎と「三人の会」を結成。作品に「弦楽のための三楽章」、オペラ「ヒロシマのオルフェ」など NHK大河ドラマ「赤穂浪士」のテーマ音楽も手掛ける。このほか「音楽の広場」「N響アワー」の司会などテレビ出演でも親しまれた。89年に63歳で死去

本書は関西労働者協議会(関西労音)の機関紙「新音楽」に連載されたものを、1959年5月に単行本「私の音楽談義」として音楽之友社から刊行したものです 巻末の「解説」で音楽評論家の片山杜秀氏が次のように書いています

「芥川の信じる日本の音楽文化の理想的未来を実現するために、音楽を愛する労働大衆としっかり結びつきたくて、その回路を作る最良の規範と質を有する社会勢力として労音に魅力を感じ、深入りしていったのでしょう そもそも芥川の音楽観は音楽文化の主体として労働大衆を考えていたのですし、本書を読めば、音楽とは専門家や高尚な人々が民衆に外から偉そうに与えるものではなく、民衆の生活の中から内在的に迸り出てくるものでなければならず、芥川ら専門家は産婆役としての地位に徹するべきだと思い詰めていることが、極めて直截的に伝わってくるでしょう

本書は次の各章で構成されています

第1章「音楽談義」

第2章「リズム談義」

第3章「旋律談義」

第4章「ハアモ二ィ談義」

第5章「形式談義」

第6章「楽器談義」

第7章「音楽談義再説」

アラカルト

本書の「帯」に書かれている「クラシック音楽をもっと身近に。現代音楽の作曲家が残した、かぎりなくやさしい音楽入門」の通り、今から66年前の一般的な労働大衆にも分かるような平明な文章で書かれています ただ、時代があまりにも離れすぎているので、現在からみると 時代背景やエピソードに古さを感じます 例えば、著者はヨーロッパ諸国と違い、日本にはクラシック専門のコンサートホールやオペラ専門のオペラハウスがないことについてさかんに嘆いてます また、映画については、映像はともかく音が酷いと嘆いています これらは、東京のみならず地方各地にもコンサートホールが作られ、映画館ではドルビー・サラウンド・システムによる大迫力サウンドが当たり前の現代社会からは隔世の感があります しかし、音楽そのものに対する音楽家としての考えや姿勢は古いも新しいもありません

第2章から第4章までは「音楽の3要素」である「リズム」「メロディー」「ハーモニー」を取り上げていますが、著者は基本になるのは「リズム」であると強調しています これは彼の「交響三章」や「弦楽のための三楽章」などで聴かれる「オスティナート」に特徴的に表れています

著者は最後の「アラカルト」の中の「青少年向作曲法序説」で、作曲家を目指す人のためのアドヴァイスを書いていますが、そのうちの一つは音楽を聴く人のためのアドヴァイスとしても通じるものがあります

「貴方の音楽的体験を豊富にしていくことです 学校唱歌しか知らない人はその範囲でしか音楽を考えることができません まず、いい音楽、名曲、傑作といわれる音楽を数多く聴くことです それは貴方の音楽的感覚と知識を高めるばかりでなく、創作意欲を湧き立たせ、音楽に対する正しい思考力を増やし、ウマク出来た音楽とマズク出来た音楽とを判断する力を養うという点で、作曲生活をどれだけ豊かにするか分かりません

本書を読んで一番面白かったエピソードは、「アラカルト」に収録された「ショスタコーヴィチの笑い」です   芥川はショスタコーヴィチと親交があったことで知られています

「絶えず何かにおびやかされているように、眼玉をせわしなくきょろつかせている、見るからに気の弱い神経質そうなこの男 ポケットからタバコを取り出す。けいれんするような手つきでさぐりあてた1本を口にくわえるとあわただしくマッチ箱をさがす。あっちのポケット、こっちのポケット・・・・ その動作はまことにせせこましく、フットボールの選手が機敏にグラウンドを走りまわるさまにやや似ていないこともないが、その他のあらゆる点でこの2つのものはくっつかない

「たしかに彼はフットボールが好きでたまらないらしく、この話が続いている間、うすいくちびるをななめにまげて薄笑いを続けていた 仮面の笑いー不思議な笑い方である。笑いにフィルターがかかっている フットボールの話はまだよかった。話題が音楽に移るとぼくはすっかり困惑してしまった。話が一向にのってこない まるで2人の人間がいるようで、どちらに焦点をあわせていいのかわからない。そのうちに、ぼくの相手になっているのは2つの仮面で、本物はどこか別のところにいるような錯覚さえ起こしそうになった ぎごちない会話が続いた。『今のお仕事は?』『新しい11番目の交響曲を出来れば夏までに書き上げます。これは1905年の革命の歌が主題になっています この頃はどうも身体が疲れて仕方がありません。だから、仕事は朝から5・6時間しかしません。朝はものを考えるのに一番よいように思います』『作曲にピアノはお使いになりますか?』『ほとんど使いません。その方が音楽を深く考えられるような気がします』。彼の表情はまるでスポークスマンのそれで、とても自分のことをしゃべっている人の顔とは思えない そして時々例のフィルター・カットの笑いが浮かんでは消える。こんなやり取りをしている間に、ぼくは少しずつクセモノの正体がわかってきたような気がした。おそらく彼は猛烈なお人好しで、少年のような天真爛漫な精神の持ち主に違いない だから、無遠慮に批判の問題を切り出した時も、『われわれの間の批判は同志的なものですから、もし批判を恐れる人がいたら、それは臆病というより他ないでしょう。(そして例の笑いを浮かべながらフットボールと同じ調子でしゃべりだす)。重苦しい音楽ばかり出来たら、聴く方はやりきれないでしょう。楽しい音楽もたくさん必要ですよ 私の音楽についていろんなことをいう人がいますけれども、これからも私は軽い面白い音楽をたくさん書こうと思っていますよ』という 『好きな外国作品は?』と訊くと、いとも簡単に『レスピーギのローマの泉。それからミヨーのフランス組曲。それから・・ブリッテンの作品。それから・・・ボギーとベス。ガーシュイン。それから・・・』と続けた

ショスタコーヴィチの人と成りがよく描写されていて興味深いものがあります 絶えずせせこましく動き、本物は別のところにいるような錯覚を起こしそうになる、天真爛漫な精神の持ち主・・・という描写は、まるでモーツアルトみたいだな、と思いました

好きな外国作品は意外に感じました すべてがショスタコーヴィチの作品とは真逆の作品だと思ったからです

本書はアマチュア・オーケストラ「新交響楽団」の創設指揮者でもある芥川也寸志による音楽入門書です 平明な語り口で書かれており、すらすらと読めます クラシックファンに限らず幅広くお薦めします

         

今日はミューザ川崎シンフォニーホールに「フェスタサマーミューザ・ファイナル・コンサート」を聴きに行きます

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下野竜也 ✕ 宮田大 ✕ 日本フィルでサン=サーンス「チェロ協奏曲第1番」、ドヴォルザーク「交響曲第8番」他を聴く ~ フェスタサマーミューザ参加公演

2025年08月10日 00時12分35秒 | 日記

10日(日)。わが家に来てから今日で3862日目を迎え、米メディアは8日、米司法省が、過去にトランプ大統領を厳しく追及していた東部ニューヨーク州のジェームス司法長官と民主党のシフ上院議員に対する調査を開始したと報じた  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

調べたって何も出てこないのが分かってるのに命令するのは  政敵の委縮効果を狙っているからだ

         

昨日、ミューザ川崎シンフォニーホールで「フェスタサマーミューザ 日本フィル」のコンサートを聴きました プログラムは①小山清茂「管弦楽のための鄙歌 第2番」、②サン=サーンス「チェロ協奏曲第1番 イ短調 作品33」、ドヴォルザーク「交響曲第8番 ト長調 作品88」です    演奏は②のチェロ独奏=宮田大、指揮=下野竜也です

指揮を執る下野竜也(しもの たつや)は鹿児島生まれ。2001年ブザンソン国際指揮者コンクール優勝 読売日響正指揮者、京都市響常任首席客演指揮者、広島交響楽団音楽総監督などを歴任。現在、NHK交響楽団正指揮者、札幌交響楽団首席客演指揮者、広島交響楽団桂冠指揮者

開演に先立ち、下野氏によるプレトークがありました 下野氏は扇子を持って登場し、「私はいつもセンスで扇いでいるわけではありません ミューザ側から記念グッズのセンスを宣伝してほしいと頼まれたので、持ってきました。皆さん記念にいかがでしょう それではこれでプレトークを終わります」と言って立ち去ろうとし、「というわけにはいきませんので、続けさせていただきます」と、センスの良いギャグをかましてトークに入りました トークではこの日に取り上げたプログラムについて簡単に説明しました 「日本人の作曲家の作品を取り上げることについて、西洋音楽と比べて劣っているとか思う必要はないし、誇るべきだ」と語りました また、「ドヴォルザークは人間としていい人だったに違いないと思います この日演奏する第8番についても、各楽章で 最初は強く主張するけれど、次第に遠慮がちになるところがあります ドヴォルザークはこの曲の作り方のようにシャイなのだと思います 反対に付き合いたくない筆頭はマーラーです 食事をするときも、『君は何故そっちの料理から食べ始めるのか』とか いちいち指導されるような気がします」と語り 会場の大爆笑を誘いました 最後に、「最近、何でも省略して言うのが流行っているようです ドヴォルザークの第8番は『ドボハチ』とか。『マイジン』て何だか分かりますか? 『マイスタージンガー』だそうです 『アオダニ』って何でしょう? 青きダニューヴで、『美しき青きドナウ」だそうです。呆れてしまいます そんな中、呼ばれた本人も満足している省略形があります・・・コバケン」どうもありがとうございました、と澄まし顔で言い残して 笑いと拍手が渦巻く中、シモタツは舞台袖に引き上げて行きました

完売御礼が出ています よく入りました

オケは14型で 左から第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、その後ろにコントラバスという並び コンマスは扇谷泰明です

1曲目は小山清茂「管弦楽のための鄙歌 第2番」です この曲は小山清茂(1914‐2009)が1978年に「日本フィル・シリーズ」の第27作として作曲しました 第1曲「和讃」、第2曲「たまほがい」、第3曲「ウポポ」、第4曲「豊年踊り」の4曲から成ります 「和讃」とは「日本語で仏を讃える歌」、「たまほがい」は「天に昇った魂と地上の魂の交感」、「ウポポ」は「アイヌ民族のわらべうた」、「豊年踊り」は「伊予に伝わる伊予萬歳による音楽」とのことです

下野の指揮で演奏に入ります 「和讃」における冒頭のチェロのアンサンブルが印象的です 最後の「豊年踊り」では打楽器が大活躍し、いかにも村祭りといった雰囲気が出ていて楽しく聴けました

2曲目はサン=サーンス「チェロ協奏曲第1番 イ短調 作品33」です この曲はカミーユ・サン=サーンス(1835-1921)がパリ音楽院のチェロ教授だったオーギュスト・トルベックのために1872年に作曲、1873年にパリで初演されました 第1部「アレグロ・ノン・トロッポ」、第2部「アレグレット・コン・モート」、第3部「テンポ・プリモ」の3部構成ですが、続けて演奏されます

協奏曲のため弦楽器は12型に縮小します 宮田が登場し指揮者の下手でスタンバイします

下野の指揮で第1部に入ります プレトークで下野氏が語っていたように、冒頭はシャンパンの栓をポンと抜いた時のような、勢いの良い宮田のチェロが衝撃的に入ってきます 独奏チェロとオケにより情熱的な演奏が展開します 第2部は一転、愛らしい旋律が奏でられます 弦楽アンサンブルが、次いで宮田のチェロが美しく会場に響き渡ります 第3部では第1部のテーマが繰り返される中、スピード感あふれる演奏が繰り広げられ、華麗なフィナーレを飾りました

満場の拍手とブラボーが飛び交うなか、カーテンコールが繰り返されました サン=サーンスの曲のチェロのアンコール曲としてはこれ以外に考えられません 「動物の謝肉祭」から「白鳥」が静けさを讃えながら演奏され、宮田は再び満場の拍手に包まれました

プログラム後半はドヴォルザーク「交響曲第8番 ト長調 作品88」です この曲はアントニン・ドヴォルザーク(1841ー1904)が1889年に作曲、1890年にプラハで初演されました 第1楽章「アレグロ・コン・ブリオ」、第2楽章「アダージョ」、第3楽章「アレグレット・グラツィオーソ ~ モルト・ヴィヴァーチェ」、第4楽章「アレグロ、マ・ノン・トロッポ」の4楽章から成ります

オケは14型に拡大し、下野の指揮で演奏に入ります 噂には聞いていましたが、ホルン、トランペット、トロンボーンなど金貨楽器が素晴らしい演奏を展開します また、木管もフルートを中心に冴えた演奏を繰り広げます 第2楽章では弦楽セクションの美しいアンサンブルが会場に響き渡りました 第3楽章は何故か日本人の郷愁を誘う抒情的な演奏が素晴らしい 第4楽章は冒頭のトランペットのファンファーレが天を衝くような鮮やかさで鳴り響きました この楽章でもフルートの演奏が素晴らしかった オーケストラ総力を挙げての渾身の演奏によって爽快なフィナーレを飾りました

会場いっぱいの拍手とブラボーの嵐がステージに押し寄せる中、カーテンコールが繰り返されました 下野はマイクを持って「アンコールを演奏します フランスの作曲家プーランクが作ったピアノ曲『平和のためにお祈りください』を私がオーケストラ用に編曲しました 今日は8月9日です。そのことを胸に抱きながら演奏します」とアナウンスして演奏に入りました この日は長崎に原爆が落とされてから80回目の『原爆の日』です。演奏は祈りそもののでした

再びカーテンコールが繰り返され、大きな拍手の中 コンサートを閉じました

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沼尻竜典 ✕ 北村朋幹 ✕ 原田節 ✕ 神奈川フィルでメシアン「トゥランガリーラ交響曲」を聴く ~ フェスタサマーミューザ参加公演

2025年08月09日 00時02分53秒 | 日記

9日(土)。わが家に来てから今日で3861日目を迎え、税率の扱いをめぐって日米間で食い違いが生じている「相互関税」について、訪米中の赤沢亮正経済再生相は7日、日本政府の主張を反映する形で、関税の根拠となっている大統領令を米側が修正するとの認識を示した  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

   

   米側は「事務処理上のミス」と言っているようだが  トランプ政権はやる気があるのかね!

         

昨日、夕食に「鶏とアスパラガスの塩炒め」「生野菜とモッツアレラチーズのサラダ」「舞茸の味噌汁」を作りました 「鶏と~」は 細いアスパラしか売っていなかったので、数が多く見えますが、量的にはバランスが取れているはずです

         

昨夜、ミューザ川崎シンフォニーホールで「フェスタサマーミューザ 神奈川フィル」のコンサートを聴きました プログラムはメシアン「トゥランガリーラ交響曲」です 演奏はピアノ独奏=北村朋幹、オンドマルトノ独奏=原田節、指揮=沼尻竜典です

指揮を執る沼尻竜典(ぬまじり りゅうすけ)はドイツ・リューベック歌劇場音楽総監督、びわ湖ホール芸術監督などを歴任 2022年4月から神奈川フィル音楽監督を務める

ピアノ独奏の北村朋幹(きたむら ともき)は東京藝大、ベルリン芸術大学、フランクフルト音楽・舞台芸術大学で研鑽を積む 東京音楽コンクール第1位、浜松、シドニー、リーズなどの国際コンクールで入賞 国内外のオーケストラと共演するほか、独自のプログラムによりリサイタルを開くなど多面的に活躍している

オンド・マルトノ独奏の原田節(はらだ たかし)は慶應義塾大学経済学部卒。パリ国立高等音楽院オンド・マルトノ科を首席で卒業 世界各国の一流オーケストラと「トゥランガリーラ交響曲」で共演、その数は20か国350回を超える

メシアン「トゥランガリーラ交響曲」はオリヴィエ・メシアン(1908-1992)がアメリカのクーセヴィツキー財団の依頼によりボストン交響楽団のために1946年から48年にかけて作曲、1949年12月2日にレナード・バーンスタイン指揮ボストン交響楽団によりボストンで初演され、その後90年から92年にかけて改訂されました

 「交響曲」と銘打っていますが、第1楽章「序奏」、第2楽章「愛の歌 第1」、第3楽章「トゥランガリーラ 第1」、第4楽章「愛の歌 第2」、第5楽章「星々の血の喜び」、第6楽章「愛の眠りの園」、第7楽章「トゥランガリーラ 第2」、第8楽章「愛の展開」、第9楽章「トゥランガリーラ 第3」、第10楽章「終曲」の10楽章から構成されています    つまり、全体の構成としては「愛の歌」の楽章(第2、4、8楽章)と、リズムなどを中心とする「トゥランガリーラ」の楽章(第3、7、9楽章)の2つの系列に、第1楽章(序奏)と第10楽章(終曲)、第5、6楽章が組み込まれています

メシアンによれば、サンスクリット語で「トゥランガ」はリズムの推移、「リーラ」は神々による創造と破壊、「トゥランガリーラ」は「愛の歌、リズムの研究、喜びの讃歌」を意味するといいます。平野貴俊氏のプログラム・ノートによれば、メシアンがこの曲でテーマとしたのは恋人たちの盲目的な喜びと際限のない愛、死と表裏一体にある愛だったとのことです

開演前に沼尻氏と原田氏によるプレトークがありました 沼尻氏が原田氏にオンド・マルトノの仕組み等についてインタビューする形で進みました 原田氏の話では現在、日本人でオンド・マルトノを演奏する人は6人くらいとのことです 沼尻氏が「この機会にCDなどをPRしてはどうですか?」と話を向けると、原田氏が「CDの話よりも、こう見えても、私はシャンソンの『愛の賛歌』なども歌っているんですよ」と言うと、沼尻氏が「それじゃあ、プレトークじゃなくてプレコンサートで『愛の賛歌』を歌えば良かったですねぇ 第1部:原田節「愛の賛歌」、第2部:メシアン「愛の賛歌」ということで」と語り、会場の笑いを誘いました

オンド・マルトノは、フランスの音楽家であり電気技師でもあったモリス・マルトノ(1898-1980)が10年間の研究を経て、1928年にパリのオペラ座で公開された電子楽器です

左側が操作卓、右の2つがスピーカーです。操作卓の左側にもスピーカーが設置されています

この曲は100人を超える大編成のため滅多に演奏されませんが、私は今年2回目です 1回目は3月22日にサントリーホールで、久石譲 ✕ 角野隼斗 ✕ 原田節 ✕ 新日本フィルの演奏で聴きました 詳細は3月23日付のtoraブログに書きましたので、興味のある方はご覧ください

オケは14型で 左から第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、その後ろにコントラバスという並び ステージ中央にはピアノ独奏の北村、上手にはオンド・マルトノの原田、下手奥にはチェレスタとグロッケンシュピールがスタンバイします コンマスは石田組・組長です

神奈川フィルがこの曲を演奏するのは今回が初めてとのこと ”進取の精神”の沼尻監督ならではのチャレンジでしょう

沼尻の指揮で「序奏」の演奏に入ります オンド・マルトノの「ヒュイーン」という独特の音が会場に響き渡ります 一方ピアノは鍵盤楽器というよりも打楽器として使用され、激しく打ち下ろされます その後は、「トゥランガリーラ」の楽章(第3、7、9楽章)では複雑なリズムが打楽器をはじめ様々な楽器により高速で交差し、アグレッシブな演奏が展開します 一方「愛の歌」の楽章(第2、4、8楽章)では比較的ロマン的な音楽が演奏されます この曲の白眉は第6楽章「愛の眠りの園」における北村のピアノです 弦楽器の静謐な演奏に乗せて北村のピアノが”鳥の声”を詩情豊かに奏でます 終わりそうで なかなか終わらない作品ですが、最後の第10楽章ではこれまでの様々な動機や主題が回想され、オーケストラと独奏ピアノとオンド・マルトノの総力を挙げての演奏によって、宇宙の広がりを感じさせるスケールの大きなフィナーレを飾りました

満場の拍手とブラボーが飛び交うなか、カーテンコールが繰り返されました 約75分タクトを振り続けた沼尻氏は さぞかし両腕が痛くなったに違いありません 沼尻氏は卓越したタクト捌きにより神奈川フィルの面々から持てる力を全て引き出し、神奈川フィル初挑戦の「トゥランガリーラ交響曲」を成功に導きました

   

         

今日もミューザ川崎シンフォニーホールに 日本フィルのコンサートを聴きに行きます

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太田弦 ✕ 高野百合絵 ✕ 九州交響楽団でビゼー「カルメン」から前奏曲・間奏曲・アリア、ショスタコーヴィチ「交響曲第5番」他を聴く ~ フェスタサマーミューザ参加公演

2025年08月08日 00時21分17秒 | 日記

8日(金)。わが家に来てから今日で3860日目を迎え、米西部のカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)は6日、トランプ政権から助成金5億8400万ドル(約860億円)の差し止めを受けていると公表した  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

これで優秀な人材のアメリカ離れが一層進むだろう トランプはプーチンロシアと同じ轍を踏んでる

         

昨日、夕食に「豚ニラ豆腐」「生野菜とモッツアレラチーズのサラダ」「大根の味噌汁」を作りました 「豚ニラ~」は新聞の「料理メモ」を見て初めて作りましたが、美味しくできました まあ、レシピ通りに作れば誰でも出来ますけどね

         

昨夜、ミューザ川崎シンフォニーホールで「フェスタサマーミューザ 九州交響楽団」のコンサートを聴きました プログラムは①小出稚子「博多ラプソディ」、②ビゼー:歌劇「カルメン」から第1幕への前奏曲、アリア他、③ショスタコーヴィチ「交響曲第5番 ニ短調 作品47」です 演奏は②のソプラノ独唱=高野百合絵、指揮=太田弦です

指揮を執る太田弦は東京藝大指揮科を首席で卒業、同大学院修士課程を修了。その間尾高忠明、高関健の指導を受ける 2015年、第17回東京国際音楽コンクール(指揮)で第2位及び聴衆賞を受賞 2019年4月から2022年3月まで大阪交響楽団正指揮者、23年4月から仙台フィル指揮者、24年4月に九州交響楽団首席指揮者に就任 25年に第23回斎藤秀雄メモリアル基金賞(指揮部門)を歴代最年少で受賞

オケは14型で 左から第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、その後ろにコントラバスという並び。コンマスは西本幸弘です

1曲目は小出稚子「博多ラプソディ」です この曲は小出稚子(こいで のりこ:1982~)が九州交響楽団の委嘱により、「博多どんたく」「博多祇園山笠」「博多手一本」のテーマを取り込んで作曲、2020年7月の定期演奏会で初演されました

「ラプソディ」というと外山雄三の「管弦楽のためのラプソディ」のような賑やかな曲を思い浮かべますが、和太鼓のドーンという強烈な2発以降は、現代曲っぽい曲想に変わって演奏されたので、拍子抜けしました 「博多どんたく」も「博多祇園山笠」も一度も見たことも聞いたこともない私にとっては、残念ながら曲の良さが分かりませんでした

2曲目はビゼー:歌劇「カルメン」から「第1幕への前奏曲」、「ハバネラ」、「セギディーリャ」、「第2幕への間奏曲(アルカラの竜騎兵)」、「ジプシーの歌」です 歌劇「カルメン」はジョルジュ・ビゼー(1838-1875)が1873年から74年にかけて作曲、1875年にパリのオペラ・コミック座で初演されました

ソプラノ独唱の高野百合絵は東京音楽大学・大学院を首席で修了 第九、ジルベスター、ニューイヤーコンサートなどで主要オーケストラとの共演のほか、オペラでは「NISSAY OPERA」、佐渡裕プロデュースオペラなどで活躍中

最初にオーケストラによって「前奏曲」が勇ましく演奏され、ステージ下手から赤の勝負衣装の高野百合絵が赤い薔薇を持って登場、深みのあるソプラノで「ハバネラ」を歌い、薔薇を太田に手渡しました   太田は「わーい、美人にバラをもらっちゃったー」とばかりに、バラを手に指揮台の上で一回りして喜びを表現しました 世間では これを”役得”といいます

続いてオーケストラによって間奏曲(アルカラの竜騎兵)がファゴット、フルートなどの木管楽器によって演奏され、高野が再び登場し「ジプシーの歌」を激しく歌い上げました

満場の拍手とブラボーが飛び交うなか、カーテンコールが繰り返されました

プログラム後半はショスタコーヴィチ「交響曲第5番 ニ短調 作品47」です この曲はドミトリー・ショスタコーヴィチ(1906-1975)が1937年に作曲、同年11月21日にレニングラードでエフゲニー・ムラヴィンスキーの指揮により初演されました 第1楽章「モデラート ~ アレグロ・ノン・トロッポ」、第2楽章「アレグレット」、第3楽章「ラルゴ」、第4楽章「アレグロ・ノン・トロッポ」の4楽章から成ります ショスタコーヴィチはソヴィエト連邦の当局から、オペラやバレエが「難解で、社会主義レアリズムに反する」として痛烈に批判されましたが、この曲によって名誉を挽回したと言われています

オケは14型のままですが、ステージ下手にハープが2台スタンバイします 右手の女性は自称「フリーランスの手酌系ハーピスト」高野麗音です 在京、地方を問わず全国のオーケストラから引っ張りだこのハーピストで、数日前に 本公演のリハーサルのために福岡に出張し、本番はミューザで演奏するという変則スケジュールをこなしています

太田の指揮で第1楽章に入りますが、冒頭から弦楽セクションを中心に渾身の演奏が展開します フルートをはじめ木管楽器が冴えた演奏を繰り広げます 第2楽章では力強く歯切れのよい演奏が展開し、全ての楽器がよく鳴っています 第3楽章は演奏の白眉でした 弦楽セクション、とくにチェロが素晴らしい オーボエ、クラリネットといった木管楽器の演奏が冴えています 中盤におけるフルートと高野のハープによるアンサンブルは極上の美しさでした また、この楽章の最後のハープの独奏も素晴らしかった アタッカで入った第4楽章は、冒頭こそゆったりめのテンポで演奏されましたが、次第にテンポを上げ、高速テンポによるアグレッシブな演奏が展開しました 管楽器が咆哮し、打楽器が炸裂し、弦楽器が渾身の演奏を展開して迎えたフィナーレは圧巻でした

満場の拍手とブラボーが飛び交うなか、カーテンコールが繰り返されました 九州交響楽団は初めて聴きましたが、「九響、なかなかやるな」と思いました

         

今日もミューザ川崎シンフォニーホールに 神奈川フィルを聴きに行きます   18時20分からの沼尻竜典氏のプレトークは聴き逃せません 絶対に面白いと思います

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出口大地 ✕ 前田妃奈 ✕ 東京フィルでヴィエニャフスキ「ヴァイオリン協奏曲第2番」、ベートーヴェン「交響曲第7番」&「エグモント序曲」を聴く~フェスタサマーミューザ

2025年08月07日 00時03分19秒 | 日記

7日(木)。わが家に来てから今日で3859日目を迎え、トランプ米大統領は5日、日米関税合意で日本が約束した最大5500億ドル(約80兆円)の対米投資について、「我々が好きなように投資できる資金だ。野球選手が受け取る契約金のようなもの。私は日本から550億ドルの契約金を受け取った。これは我々のお金だ」と語った  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

トランプの本業が企業経営者だとは思えない自分勝手な解釈だ  こんな奴を相手に商取引はできない

         

昨日の夕食は「プルコギ」「生野菜とモッツアレラチーズのサラダ」「シメジの味噌汁」でした ご飯にはキムチを乗せました

         

昨日、ミューザ川崎シンフォニーホールで「フェスタサマーミューザ 東京フィル」のコンサートを聴きました プログラムは①ベートーヴェン:劇付随音楽「エグモント」序曲、②ヴィエニャフスキ「ヴァイオリン協奏曲第2番 ニ短調 作品22」、ベートーヴェン「交響曲第7番 イ長調 作品92」です    演奏は②のヴァイオリン独奏=前田妃奈、指揮=出口大地です

出口大地は関西学院大学、東京音楽大学で研鑽を積む。2023年ハンスアイスラー音楽大学指揮科修士課程修了。第17回ハチャトゥリアン国際コンクール指揮部門で日本人で初優勝 リエージュ王立フィルハーモニーのアシスタントコンダクター(2024/2025シーズン)

オケは14型で 左から第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、その後ろにコントラバスといういつもの東京フィルの並び。コンマスは依田真宣です

1曲目はベートーヴェン:劇付随音楽「エグモント」序曲です この曲はルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン(1770-1827)が宮廷f劇場からの依頼により、ゲーテの戯曲「エグモント」を題材に1809年から10年にかけて作曲、1810年にウィーンのブルク劇場で初演されました

サウスポーの出口により演奏が開始されますが、苦悩から歓喜へという流れがよく分かる集中力に満ちた演奏でした

2曲目はヴィエニャフスキ「ヴァイオリン協奏曲第2番 ニ短調 作品22」です この曲はヘンリク・ヴィエニャフスキ(1835-1880)が1862年に作曲、同年サンクトペテルブルクで初演されました 第1楽章「アレグロ・モデラート」、第2楽章「ロマンス:アンダンテ・ノン・トロッポ」、第3楽章「アレグロ・コン・フォーコ ~ アレグロ・モデラート(ジプシー風に)」の3楽章から成ります

ヴァイオリン独奏の前田妃奈は全日本学生音楽コンクール全国大会第1位、日本音楽コンクール第2位、東京音楽コンクール第1位。2022年には第16回ヘンリク・ヴィエニャフスキ国際ヴァイオリンコンクール優勝    現在、東京音楽大学アーティストディプロマコース在学中

協奏曲のためオケは12型に縮小し、出口の指揮で演奏に入ります 冒頭はオーケストラによって2つの主題が演奏され、独奏ヴァイオリンが弱音で入ってきます やがて美しい音色でロマン溢れる流麗な演奏が展開しますが、随所で超絶技巧による速いパッセージの演奏が繰り広げられます ヴィエニャフスキ・コンクールでの優勝がバックにあるためか、前田の演奏は自信に満ちています 全体を通してクラリネット、フルート、オーボエといった木管楽器がよく歌い、ソリストに華を添えました

満場の拍手とブラボーが飛び交うなか、カーテンコールが繰り返されました 前田はアンコールにヨアヒム「スコティッシュ・メロディ」を鮮やかに演奏、再び大きな拍手に囲まれました

プログラム後半はベートーヴェン「交響曲第7番 イ長調 作品92」です この曲は1811年から12年にかけて作曲、1813年にウィーンのルードルフ大公邸で私的に初演され、同年ウィーン大学講堂で公開初演されました 第1楽章「ポコ・ソステヌート ~ ヴィヴァーチェ」、第2楽章「アレグレット」、第3楽章「プレスト」、第4楽章「アレグロ・コン・ブリオ」の4楽章から成ります 楽章構成を見ると、アダージョ(緩徐)楽章がないことに気が付きます この曲が一貫してリズム中心に展開するためだと思われます

開演前のプレトークで、出口はこの曲にまつわる苦い思い出を語りました

「(東京音大指揮科の)2年生の時の学年末試験でべートーヴェン「第7交響曲」を、無理して右手にタクトを持って指揮をしたのですが、広上淳一先生に「ひどい指揮だ」とごっぴどく叱られました 私が左利きであることを知っている知人が先生にそのことを伝えてくれたおかげで、「それを早く言え」と言われ、それ以来、左手で指揮をするようになりました

最初に彼が左手で指揮をするのを見た時(東京フィルへのデビュー公演)はすごく違和感を感じましたが、何度か見ているうちに慣れました 今や”華麗なるサウスポー”です

オケは再び16型に拡大し、出口の指揮で演奏に入ります この曲を聴くと「のだめカンタービレ」を思い出します ワーグナーはこの曲を「舞踏の神格化」と呼びましたが、すべての楽章がリズム中心です 全楽章を通してオーボエ、フルート、クラリネットを中心とする木管楽器が冴えた演奏を展開しました また、第3楽章ではトランペットとティンパニが大活躍しました 私が一番好きなのは第4楽章の終盤におけるコントラバスのうねりです ヴァイオリンを中心にメイン・メロディーが演奏される中、コントラバスの重低音のうねりが絶妙のバランスで存在感を示します オーケストラの総力を挙げてのトランス状態のフィナーレは圧巻でした

演奏を振り返ると、出口は第1楽章と第2楽章をアタッカ気味につなぎ、第3楽章と第4楽章もアタッカ気味につないで演奏しました 交響曲を大きく2つの部分に分ける この演奏スタイルは 過去に誰かが採用していましたが、残念ながら指揮者の名前は思い出せません

満場の拍手とブラボーの嵐に、出口 ✕ 東京フィル(弦楽セクション)はアンコールにヨーゼフ・シュトラウス「ピチカート・ポルカ」を演奏しました 時々アインザッツ(出だし)が揃わないところに愛嬌を感じましたが、あれはわざとずらしたのではないか ともあれ最後はきちんと締めて大きな拍手を浴びました

   

さて、通常は上のカーテンコール時の写真でおしまいですが、ちょっと書いておきたいことがあったので、しばし お付き合いください

べートーヴェン「第7番」の演奏中、私の2つ隣りの高齢のおじさんが、ず~っと 右手の人差し指で「舞踏の神格化」に合わせて"指揮"をしていたのです    もちろん、大きく腕を振っているわけではありませんが、その指の動きが芋虫が蠢いているようで気味が悪いのです    時々いますね、一人で悦に入って勝手に指揮をしている御仁が    本人は自分が指揮者になったつもりで楽しくてたまらないのでしょうが、周囲の人たちにとっては これほど目障りで集中力を妨げられる行為はありません コンサート会場はパブリック・スペースであって、プライベート・スペースではありません お互いに気持ちよく演奏が聴けるように心がけるべきだと思います お互いにあと4回 同じ席で聴くことになるので、先が思いやられます

         

今日もミューザ川崎シンフォニーホールに九州交響楽団のコンサートを聴きに行きます

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Netflixでミカエル・マルシメーン監督によるスウェーデン映画「偽りなき日々」を観る~スウェーデンの法学生がアナーキーな女生と出会い、転落する物語

2025年08月06日 00時01分14秒 | 日記

6日(水)。昨日は「危険な暑さ」でした 今日から4日連続コンサートを控えていたので、外出を避け 家で新聞や本を読んだり、Netflixで映画を観たりして過ごしました

昨夜、娘が2泊3日の名古屋旅行から帰ってきました 先週の北海道旅行のお土産は「いくら醤油づけ」ですが、いま冷凍庫に入っています 息子が帰省してから一緒に食べることになっています 今回のお土産はジブリパークで買ってきた缶入りクッキーです 黒いのは「まっくろくろすけ」でしょうか

ということで、わが家に来てから今日で3858日目を迎え、参政党の神谷宗幣代表は5日の参院予算委員会で、米国との関税交渉を優位にするため、DEI(多様性・公平性・包括性)の廃止、脱炭素政策の廃止、世界保健機構からの脱退、ウクライナ支援の見直しなどを挙げ、「こうしたことを一緒にやろうと(トランプ大統領に)提案したり、直接会って話し合いしたりするつもりはないのか」と石破首相に訊ねたが、否定された  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

  

  独裁者トランプに忖度して国の方針を変えろだって? カリスマ党首の柔な正体が露見したな

         

昨日、大学時代の友人S君が送ってくれた「ホッケ」を塩焼きにして、「生野菜とモッツアレラチーズのサラダ」「冷奴」と一緒に食べました 2日連続でS君の魚ですが、ホッケは肉厚で脂がのってとても美味しかったです

         

Netflixでミカエル・マルシメーン監督によるスウェーデン映画「偽りなき日々」(122分)を観ました

これから本当の人生が始まる期待に胸を膨らませながら、スウェーデンの学園都市ホルンドに到着したサイモン(シモン・ルーフ)だが、ロースクールでの生活は、彼の期待をすぐに裏切るものだった   暴力的なデモが行われる中、サイモンはアナーキストの若き女性マックス(ノラ・リオス)と出会い、恋に落ちる    サイモンは彼女の手引きに寄り、元政治学教授のシャールズの邸宅で暮らすアナーキストたちと関りを深めていく。 彼らの思想やライフスタイルに感化されたサイモンは、次第に法律への情熱を失い、いつしか強盗などの犯罪に手を染めていく やがてサイモンは、自分が彼らに利用されていることに気が付くが、マックスやアナーキストたちの本名さえも知らないサイモンは、もはや後戻りが出来なくなっていた

サイモンは自分自身の人生に確たる信念がないため、退屈逃れを理由にマックスと行動を共にすることになります しかし、マックスと行動を共にするうちに、自分とはあまりにも違う人生観で生きるマックスの行動を見て、自分の愚かさに気が付くようになります 強盗についてサイモンが「犯罪行為だ」と問い詰めると、マックスは「違う。奪い返すだけよ」と答えます マックスの理論は、階級社会では経済的に弱い立場の者は裕福な立場の者から富を奪っても良いという考えに基づいています しかし、サイモンは強盗はあくまでも犯罪行為であって詭弁は許されないという立場に立ちます 最後に彼は、アナーキスト・グループのスローガン「言行一致。思想に従い行動せよ。さもなくば、日々は偽りだ」という言葉を唱えて、その場を去っていきます サイモンには従うべき明確な「思想」がなかった。したがって、「思想に従って行動すること」が出来なかった。だから「彼の日常は偽りだった」ということでしょう そこに気が付いたからこそ、サイモンはラストシーンで、確固たる信念をもって生きていこうという表情を見せていたのだと思います

蛇足ですが、この映画ではベートーヴェン「交響曲第7番 イ長調」の第2楽章「アレグレット」の葬送行進曲風の音楽が2つの場面で流れました 一つはアナーキスト・グループの会食シーン、もう一つはアナーキスト同士の内輪もめで仲間が拳銃に撃たれるシーンです また、ヴィヴァルディ「スターバト・マーテル」とペルコレージ「スターバト・マーテル」の静謐な音楽が冒頭シーンをはじめ数カ所で流れていました

         

今日はミューザ川崎シンフォニーホールに 東京フィルのコンサートを聴きに行きます

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松本宗利音 ✕ 阪田知樹 ✕ NHK交響楽団でガーシュイン「ラプソディ―・イン・ブルー」、メンデルスゾーン「交響曲第3番」、チャイコフスキー「イタリア奇想曲」を聴く

2025年08月05日 00時27分02秒 | 日記

5日(火)。わが家に来てから今日で3857日目を迎え、ロシアのプーチン大統領は、2026年3月31日までにロシア全土の高速鉄道網を完成させるよう政府に指示したと、クレムリンが7月31日に公式サイトで明らかにした  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

    

    そんなお金があるのなら ウクライナへの多額の賠償金を貯金しておくべきだ

         

昨日、夕食に大学時代の友人S君が送ってくれた「鯖」を塩焼きにし、「生野菜とモッツアレラチーズのサラダ」「冷奴」と一緒に食べました 鯖は脂がのっていて美味しかったです

         

昨日、ミューザ川崎シンフォニーホールで「フェスタサマーミューザ NHK交響楽団」のコンサートを聴きました プログラムは①チャイコフスキー「イタリア奇想曲」、②ガーシュイン「ラプソディ―・イン・ブルー」、③メンデルスゾーン「交響曲第3番 イ短調 作品56 ”スコットランド”」です 演奏は②のピアノ独奏=阪田知樹、指揮=松本宗利音です

指揮を執る松本宗利音(まつもと しゅうりひと)は1993年大阪府豊中市出身。東京藝大で研鑽を積む。2019年から2022年まで札幌交響楽団指揮者を歴任 2025年4月に大阪フィル指揮者に就任

15時からの本番の前 14時15分からプレコンサートがありました フルート=中村淳二、ヴァイオリン=船木陽子、ヴィオラ=小畠茂隆により、ベートーヴェン「Fl,Vn,Vaのためのセレナード ニ長調 作品25」(全6楽章)のうち3つの楽章が演奏されました フルートの中村氏が「この日のプログラムは、チャイコフスキー、ガーシュイン、メンデルスゾーンという何のつながりもない組み合わせなので、プレコンサートは3人が聴いたであろうベートーヴェンの作品を選びました」と語り、演奏に入りました 演奏は軽快そのもので、特に最後の楽章はモーツアルトのセレナーデのような愉悦感に満ちたもので、2人の作曲家の親近性を感じました 素晴らしい演奏でした

完売御礼です 松本宗利音 ✕ 阪田知樹 ✕ 郷古廉の「白波三人男(?)」ですから、「女子トイレ長蛇の列の法則」が適用されます

オケは14型で 左から第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、その後ろにコントラバスという いつものN響の並び   コンマスは郷古廉です

1曲目はチャイコフスキー「イタリア奇想曲」です この曲はピョートル・イリイチ・チャイコフスキー(1840ー1893)が1878年から80年にかけて複数回行ったイタリア旅行の思い出に基づき1880年に作曲、同年モスクワで初演されました 第1曲「アンダンテ・ウン・ポーコ・ルバート」、第2曲「アレグロ・モデラート」、第3曲「プレスト」、第4曲「アレグロ・モデラート」、第5曲「プレスト ~ ピウ・プレスト ~ プレスティッシモ」の5曲から成ります

松本の指揮で演奏が開始されますが、冒頭のトランペットのファンファーレはイタリアの青空を突き抜けるような輝きに満ちた素晴らしい演奏でした その後のミュート付きトランペットのとぼけた味わいの演奏も冴えていました 吉村結実のオーボエ、甲斐雅之のフルートがよく歌い、弦楽器が軽快な演奏を繰り広げました

2曲目はガーシュイン「ラプソディー・イン・ブルー」です この曲はジョージ・ガーシュイン(1898-1937)がポール・ホワイトマンの騙し討ちのような依頼によりわずか2週間で作曲、1924年にニューヨークで初演されたピアノと管弦楽のための作品です オーケストレーションはポール・ホワイトマン楽団でピアノスト兼編曲家を務めていたファーディ・グローフェが担いました

ピアノ独奏の阪田知樹は2016年フランツ・リスト国際ピアノコンクール第1位 2021年エリザベート王妃国際音楽コンクール第4位入賞。世界各国のオーケストラと共演を重ねる

曲の冒頭はクラリネットのグリッサンドで駆け上がりますが、松本健司の演奏はジャジーで完璧でした やがて阪田のピアノが軽快に入ってきますが、クラシックだけでなくジャズのセンスの良さを感じさせる素晴らしい演奏が展開します 特にピアノ・ソロによるカデンツァの部分は変幻自在で、ほとんどジャズ・ピアニストです 聴いていてワクワクしました 松本 ✕ N響はソリストにピタリとつけ、スケールの大きな演奏を繰り広げました

満場の拍手とブラボーが飛び交うなか、カーテンコールが繰り返され、阪田はガーシュイン(アール・ワイルド編)「魅惑のリズム」を鮮やかに演奏、再び大きな拍手に包まれました

プログラム後半はメンデルスゾーン「交響曲第3番 イ短調 作品56 ”スコットランド”」です この曲はフェリックス・メンデルスゾーン(1809-1847)が20歳の頃に行ったスコットランド旅行の思い出に基づいて1830年に作曲に着手、その後ブランクの後1842年に完成、1842年3月にライプツィヒで初演されました   第1楽章「アンダンテ・コン・モート ~ アレグロ・ウン・ポコ・アジタート ~ アッサイ・アニマート ~ アンダンテ・コメ・プリマー」、第2楽章「ヴィヴァーチェ・ノン・トロッポ」、第3楽章「アダージョ」、第4楽章「アレグロ・ヴィヴァチッシモ ~ アレグロ・マエストーソ・アッサイ」の4楽章から成ります なお、第3番というのは楽譜の出版順であり、完成順には第1番、第5番、第4番、第2番、第3番となっており、実質的に最後に完成された交響曲です

松本の指揮で第1楽章に入りますが、序奏部のヴィオラと木管による悲壮感に満ちたアンサンブルが素晴らしい このメロディーこそ メンデルスゾーンが、16世紀にメアリー・ステュアート女王が暮らしたエディンバラのホリールード宮殿の近くにある礼拝堂廃墟を訪れた時に浮かんできた旋律です 第2楽章では、冒頭の松本健司のクラリネットの軽快な演奏が素晴らしい 第3楽章では、低弦に乗せて演奏される第1ヴァイオリンのロマンに満ちた美しいメロディーが印象的です 第4楽章では、冒頭の弦楽器を中心とする鋭いキザミが全体を支配します オーボエ、フルート、クラリネットがよく歌います 終盤では、ホルンの明朗な演奏が幸福を呼び込むかのように高らかに響き渡ります

全体的に引き締まった集中力に満ちた演奏でした 満場の拍手とブラボーがステージに押し寄せる中、まさかのアンコールがありました グリーグ「ペール・ギュント」より「朝」です この曲もメインのチャイコフスキー、ガーシュイン、メンデルスゾーンとは何のつながりもない曲で、その意味では「不揃い」で徹底していました 甲斐のフルートを中心に素晴らしい演奏が展開しました

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