14日(木)。昨日は午前中、子どもたちと品川の親戚にお盆の挨拶に行き、鰻をごちそうになって、私だけオペラのためお先に失礼しました 鰻も煮物も漬物も、デザートのマンゴーとマスカットも美味しかったです
ということで、わが家に来てから今日で3866日目を迎え、米ホワイトハウスのレビット大統領報道官は12日の記者会見で、15日に予定する米ロ首脳会談でウクライナ停戦に合意するのは難しいとの見解を示し、ウクライナのゼレンスキー大統領は参加しないと明かした というニュースを見て感想を述べるモコタロです
紛争当事国のウクライナが参加せず 無関係のアメリカが参加するって どういう意味があるんだろ?
昨日の夕食は、息子が「ブリと夏野菜のスパゲッティ」「茄子のトマトソース・ソテー」「コーン・スープ」を作ってくれました スパゲッティはあまりにも美味しくて お代わりしました
昨日、新国立劇場「オペラパレス」で多和田葉子原作・細川俊夫作曲「ナターシャ」を観ました 私はプルミエ(初日)会員なので、本来は11日の公演を観る予定だったのですが、「フェスタサマーミューザ・フィナーレ」公演とダブってしまったので、振り替えの利くオペラをこの日に振り替えました
出演はナターシャ=イルゼ・エーレンス、アラト=山下裕賀、メフィストの孫=クリスティアン・ミードル、ポップ歌手A=森谷真理、ポップ歌手B=冨平安希子、ビジネスマンA=タン・ジュンポ、ビジネスマンB=ティモシー・ハリス、サクソフォン奏者=大石将紀、エレキギター奏者=山田岳。管弦楽=東京フィル、合唱=新国立劇場合唱団、指揮=大野和士、演出=クリスティアン・レートです
「ナターシャ」は多和田葉子の台本により細川俊夫が作曲したオペラです 新国立劇場オペラ芸術監督・大野和士による日本人作曲家創作委嘱作品第3弾として制作され、この度の世界初演となりました
難民のアラトは母なるものを求め地底への入口を探し、故郷を追われ彷徨う難民のナターシャと出会う 言葉が通じないながら名を伝え合った2人の前に”メフィストの孫”と名乗る男が登場する
2人は”メフィストの孫”に誘われ、海辺から離れ「森林地獄」「快楽地獄」「洪水地獄」「ビジネス地獄」「沼地獄」「炎上地獄」「旱魃(かんばつ)地獄」へと旅していく
振り替え後の自席は1階3列11番、左ブロック右通路側です こんなに前の席で鑑賞したのは初めてです
指揮者の横顔がよく見える位置です
ナターシャ役のイルゼ・エーレンスはベルギー出身のソプラノです 幅広いレパートリーによりヨーロッパ各国の歌劇場を中心に活躍しています
新国立オペラでは2018年の細川俊夫「松風」タイトルロールで出演しました
表現力豊かな歌唱で聴衆を魅了しました
アラト役の山下裕賀(やました ひろか)は東京藝大・大学院を首席修了 第92回日本音楽コンクール声楽部門第1位。大野和士✕都響ではベートーヴェン「第九」、ヴェルディ「レクイエム」などでソリストを務めたソプラノです
説得力のある歌唱と演技で存在感を示しました
メフィストの孫役のクリスティアン・ミードルはドイツのユーゲント・ムジツイールトコンクールで優勝 ザルツブルクのモーツアルテウムで学ぶ。深みのあるバスが魅力的でした
ポップ歌手A役の森谷真理は武蔵野音大・大学院、マスネ音楽院修了。新国立オペラ「ジュリオ・チェーザレ」クレオパトラで好評を博すなど多方面で活躍中 力強くも美しいソプラノと卓越した演技力で聴衆を魅了しました
【追伸:訂正】(8月14日20:40)
文中に「マスネ音楽院」とありますが、クラシックファンさんから「マネス音楽院」である旨のご指摘をいただきました。調べた結果、ご指摘の通りでした。お詫びの上、訂正させていただきます
ポップ歌手B役の冨平安希子は東京藝大・大学院、シュトゥットガルト音楽大学を修了 二期会のオペラ公演を中心に活躍中のソプラノです
表現力豊かな歌唱で存在感を示しました
サクソフォン奏者役の大石将紀は東京藝大・大学院修了、パリ国立高等音楽院修了。クラシック、特に現代音楽の分野で活躍中 「快楽地獄」におけるサックスのご機嫌なインプロビゼーションが印象的でした
エレキギター奏者役の山田岳は中学生のときジミ・ヘンドリクスに憧れギターを始める 国内外の音楽祭に招聘されるなど世界的に活躍中
「快楽地獄」におけるロックンロール的なカオスな演奏が素晴らしかったです
本公演で特に印象に残ったのはドイツ出身のクリスティアン・レートによるハイテクを駆使した映像表現による舞台作りと総合的な演出です
ところで2人の難民は「森林」「快楽」「洪水」「ビジネス」「沼」「炎上」「旱魃(かんばつ)」という7つの地獄を旅しますが、これを見て、モーツアルトの歌劇「魔笛」を思い出しました ザラストロの命により、タミーノは「沈黙の試練」を課せられますが、これをクリアします
次いでパミーナと2人で「火の試練」を、次いで「水の試練」をクリアして、2人はめでたく結ばれます
これを「ナターシャ」に置き換えれば「洪水」「炎上」と「旱魃(かんばつ)」(誰もが砂漠では愛を失う)の3つの地獄に相当すると思います
魔笛に比べてナターシャでは4つも試練(地獄)が増えています
現代はそれだけ地獄が多いということでしょう
「快楽地獄」では一般的なエンターテインメント的な表現がある一方で、プラスチックにより海が汚染されていく様子が描かれます
また、「ビジネス地獄」ではコーラスが じゃらじゃら(お金)、ばりばり(仕事に励む)、しゃらしゃら(表面的)といった擬音語によって現代人を揶揄するように歌います
こうしたことから、「ナターシャ」は現代の地獄(試練)をそのまま描いたオペラだということができると思います
また、主人公のナターシャはウクライナからの難民、アラトは日本からの難民という設定になっています さらに、このオペラでは日本語で歌われたり、ドイツ語で歌われたり、序盤では「海」という言葉が30以上の言語で重なり合って囁かれたりする「多言語オペラ」です
したがって、グローバルな共通テーマを扱った先駆的なオペラと言えると思います