大阪のご常連さんはカメラや腕時計の入手はオークションではなく、古いお店を回って見つけて来るというポリシー。この腕時計は田舎の小さな時計屋さんのショーケースにあったデッドストックのようです。ご主人は「売りたくない」とのことだったようですが、「そこを何とか」が楽しいようです。
すでにオイルはカラカラですのでオーバーホールをしますが、キャリバーはCal 5002Cとなっていて、1970年ぐらいの製造ですね。当時の児童用腕時計やディズニータイムなどに使われたようです。しかし、6振動なんですね。裏蓋を開けますが、開け口のスリットがありません。どこからでも、ということでしょうか。
デッドストックでも、スペーサーのようなプラ部品は劣化をして割れています。文字盤には位置決めの足は無い簡易構造です。
カレンダー表示付ですが、日車や輪列はすべてプラ製です。
簡素化された設計ですね。
香箱は蓋の部分が歯車になっています。密閉式ではありません。
セイコーの技術解説書によれば、分解せずにそのまま超音波洗浄をして注油をするとなっているようですが、すでにパラパラで洗浄組立中です。部品点数は少ないですが、アンクルが特殊な形状で、受ケは1枚の設計なので、各ホゾ穴に収めることが難しい。で、分解するなということか・・後の祭り。
天真の耐震装置ダイヤショックに注油をします。
ゼンマイの巻き量によって、かなりデータに差が出る機械です。一人前に片振り調整装置も付いています。
6時位置にある梵字のようなマークは、クレストマークと言って、あるサイトさんよによれば、当時の物品税が免税となる1万円以下の製品に着けられたマークだそうです。この製品は諏訪製ですが、亀戸製でも共通とのことです。しかし、このマークだけだと小さくてバランスが悪いですね。
ケーシングをしてプラのスペーサーをセットして裏蓋を圧入します。
部品点数が少ない機械だから組立易いとは限らない。まぁ、慣れですけどね。製造期間が短く、子供用の消耗品なので、これだけきれいな個体は貴重だと思います。次はお隣のスピードタイマーです。
裏蓋を開ける水気による腐食は無いきれいな機械です。回転錘を外すと6139A(Bもあり)ですね。
過去に一度程度の分解を受けていると思います。帰零ボタンの復帰が悪いのですが、普通は汚れが原因ですが、今回はボタンの変形もあります。故意に変形させていますね。理由は分かりません。
水気の侵入は無いと書きましたがありますね。文字盤に水滴となって乾燥した痕跡があります。
すべて分解洗浄のうえ組み立て開始。
裏返しは二番車にS-4油を塗布してセットします。
秒クロノグラフ車(中央)をセットしてコハゼを取り付けます。
クロノグラフ受をセットしてアンクル、テンプを取り付ければ動き出します。
クロノグラフ部分。⇧の分送ツメが反時計回りに回転して左の分クロノグラフ車を回転させクロノグラフ分針を進めます。⇧のレバーは正確に1分針を進めるための規制バネです。
日ノ裏側を組み立てて日車、曜車を取り付けます。
自動巻き機構は最後に取り付けますので、この時点では取り付けません。これから歩度調整などをして行きます。
実用に支障はありませんが、データでは天真の摩耗による姿勢差と水平クラッチの切れがあまり良くありません。文字盤を取り付けて針を付けていきますが、クロノ針の軸は四角断面なので、癖のついていない新品の針でない限り、どうしても同じ位置に噛み合うため微調整が困難です。
帰零ボタンの戻りが悪い原因は、故意にパイプ部をペンチで潰してあるためです。しかも、ボタンバネが短くカットされている。考えても意味が分かりませんね。
形状の修正は困難のためストックから交換しました。
ケーシングをして自動巻き機構を組み込んで組立完成。
ベルトはバンビの社外品です。今回は風防ガラスの交換は行わないため、ケースの研磨はしていません。軽く擦ってはあります。6139-7011は1970年12月の製造です。