今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
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女性PEN使いさんのPEN-FT(B)の巻

2017年05月31日 13時34分41秒 | ブログ

ベテランさんのご紹介で来られた女性PEN使いさん(になる)方からのご依頼です。その前にすみません。作業の途中で目薬を点そうとしましたら、めまいが起きまして少し休養をしておりました。眼精疲労と三半規管の耳石が悪さをしたようです。現在は回復しましたが、ブログの更新にも目に負担を掛けますので、当分の間、簡略してのUPとさせて頂きます。で、ベテランさんのご助言でPEN-FTのブラックを入手されたようです。流石にベテランさんは目利きで基本的には悪くない個体です。シリアル№が#2288XXと、ブラックモデルとしては初期の方ですね。過去には#1989XXという個体も確認しています。新しいデジタルPEN-Fも発売になっているのに、あえてフィルムのPEN-FTを選ばれるとは感心ですので、頑張ってO/Hをして行きます。ポストカードありがとうございます。

で、分解前に点検をしてみましたが、露出計の1段ほどアンダーとピントの無限が少しですが行き過ぎるようです。リターンミラーを確認すると・・ははぁ、貼り替えられていますね。ピントの再調整は行われてはいるようで、ネジロックは塗布されていますが、調整後に変化をしたのかも知れません。

 

リターンミラーの奥側。接着剤がはみ出していますね。あまりお上手な修理ではありませんので接着強度も不安がありますが、さりとて無理に剥離するとミラーにダメージを与える可能性があるので、今回はこのまま使用します。実使用でミラーが剥離をしても責任は・・

トップカバーを分離して見ると、基本的にメカには手を付けられていません。リターンミラーのみ分解せずに貼り替えられたようです。

 

電池室が変です。リード線の半田付け外れは良いとして、セルウケが黒接着剤で固定されていますね。正規は2か所のモルトでネジ留めです。何をしたのでしょう?

 

シャッター幕の軸(セクタビス)は無給油ですので、摩耗による抵抗大により回転抵抗が大きくなっている個体があります。この個体もかなり回転は重い方です。メンテナンスをしておきます。

 

ここで問題。スプロケットのクラッチ部を点検すると、かなり滑って削られた痕が確認出来ます。経験的には、すでにフィルムの巻上げ不良が起きていても不思議はない状態です。オーナーさんは、入手後は撮影をしていないようですので、すでに症状はあったのかも知れませんね。軽度の場合は36枚フィルムの後半のコマが巻き上げ不良になります。

前回取り上げた個体#2183XXのシャッターユニットは変更前(旧タイプ)でしたが、この個体は変更後のメインスプリングの条数が多い新タイプです。大体この辺りでシャッターの変更を受けているようです。スプロケットは予防的に交換をして組んであります。

 

シャッターは非常に安定している良いユニットです。20万台近くですとプリズムのコーティングが厳しい頃ですが、この個体は画像のプリズムは良好で接眼プリズムは半分劣化です。

 

露出計ユニットのTTLナンバーを露出計指示窓に導く反射ミラーがかなり腐食していますね。20万台は劣化が進んでいる個体が多く、30万台以降は比較的良好な個体が多いと感じます。

 

これでメカ部は完成。これから各部の調整をします。

 

 

 ボトルプレートは三脚穴部分がネジの締め込みにより凹んでいるものがありますね。板厚が薄いですから。修正をしてから組み立てます。

 

ストロボの発光テストをします。すべて洗浄をしてからの組立で、非常にきれいなブラックモデルになりましたね。女性ですから丁寧に扱ってもらえるでしょう。あとは既存の38mmを清掃します。

 

付属の38mmは34万台の設計変更後の個体ですから、カメラ本体より後に製造されたものですね。あまり使用されていないレンズですが、後玉2枚に曇りが発生しています。

 

前玉は幸い曇りは軽微です。清掃をして組み込んでいます。スチールボールにグリスを塗布してフィルターリングを取り付けます。

 

ハーフミラーとスプロケットを交換してあります。これですべて完成です。どこにもウィークポイントの無い、良いコンディションのFTブラックが出来ました。コンパクトPENからのステップアップですと、慣れるまではカメラが重いと感じますが、デジタルPEN-Fの本革ストラップでも奢ってあけでください。(1968年9月製)

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