本物のPEN-Sブラックに気を良くして、次は程度の良さそうなPEN-FTブラックと思ったのですよ。最初はね・・シボ革はすでに剥がされて再接着をされていますが、この剥がし方。強引に剥がしてビニール地を破って前板側に残っています。(私の仕業ではありませんよ)これを見れば分解の素性が分かります。
ハーフミラーは汎用のミラーから切り出されたものに交換されています。いえ、これが悪いとは言いませんよ。
あ~、ダメだなぁ。トップカバーのシリアル№は#3281XXですが、本体はもっと古い、たぶん20万台初期です。リターンミラーユニットが前期型(リンケージ)そもそも一番右のボタンキャップは32万台ならシールに変更されています。
巻き上げレバーユニットの取付けネジが一度外されて傷になっていますね。ブラックの個体から外して移植したのでしょう。それにしても、こんなに傷をつけることも無いのに。ネジロックも塗布されていません。この個体は最近オークションで入手されたそうですが、20万台の本体に32万台のブラック外装を換装したものですね。カバーの状態は良い方で、32万台の本体を何故放棄しなければならなかったのでしょうね? 私なら32万台の本体を治しますけど、フィルムレールの腐食などがあったのかな?。残念ですがオリジナルの個体ではなくなってしまいましたね。
スプール軸を留めているネジが真鍮のスリ割ネジ。前期型の特徴です。
すべて分解洗浄をして組み立てに入っています。ご覧のようにスカッときれいになっています。巻き上げレバーの端部は何故こんなに削られているのだろう? 故意に研磨されています。レバーユニットの取付けネジ下に入る調整ワッシャーが取り去られているため、そのまま組むと巻き上げレバーが復帰しなくなりますのでストックから追加をしてあります。
シャッターの洗浄をして、各部の点検をして行くと・・コントロールレバーの軸受けナットが緩んでいます。ここは緩み易いところです。放置をするとシャッタースピードが変わらなくなります。
部品構成はこのようになっています。プーリーが組み込まれているのが味噌。
完成したシャッターユニットを搭載します。シャッター幕の軸受けは無給油のため多少の「かじり」があって回転抵抗が重い状態でした。電池室のリード線は新製しました。
何故かセルフタイマーユニットは本体に付属の変更前のユニットを使っているのに、レリーズのリンケージは後期型を使っている。(ブラックモデルのものでしょう)しかし、調整をすれば使えないことはありませんが、そのまま無調整で交換してあるため、画像のようにタイマーが途中で衝突して止まってしまいます。
セルフタイマーの改良前と後では地板も異なり、調整も異なるのです。そこで、当方の前期型のリンケージに交換します。セルタイマーレバーをブラックに交換したため、止まり位置が水平になっていませんね。調整がされていないのです。
この個体はフィルムカウンターが戻らない状態でした。原因は、ブラック用に巻上げレバーユニットに交換したため、裏蓋で抑えるレバーが本体と接触して作動を規制しているため。単に部品を交換すれば良いのではなく、すべて調整がされていない個体なのです。
セルフタイマーレバーの白色入れが何故か痛んでいたので入れ直してあります。レバーも水平に調整してあります。
32万台の本体を何故放棄したのか? 後期型ですから、それほど機械は疲労しているとも思えませんが、何とも残念な個体でした。
付属の20mmですけど、こちらは悪くはないですよ。持病は中玉の曇りと後玉の水滴状の汚れなのですが、後玉の汚れが出始めています。早めに清掃をしておかないとコーティングを侵します。
現存中では非常のきれいなレンズです。本体に装着して完成です。幸いオーナーさんは大切にしたいとのお言葉でした。