今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
(お問合せ)tomytmzk@titan.ocn.ne.jp
 

SEIKO ワールドタイム+PEN-FTメディカルの巻(2)

2015年06月14日 20時28分52秒 | ブログ

PEN-FTメディカルのType 3というモデルです。メディカルには用途、仕向け地によって色々と仕様が異なる個体があり、あまり正確には把握していません。トップカバーの表示はPEN-FですがFTベースです。この個体は初めからセルフタイマーは搭載されておらず、トップカバーにレバー用の穴加工もありません。穴加工はあってメクラ蓋で塞いでいる個体もありますね。プリズムは〇型で、ピントの山は掴みにくいですが、ファインダー像は見えます。

Type 3と彫刻されていますね。裏蓋のシボ革には、圧板を留めるダボの腐食による盛り上がりがあります。

 

この個体は過去にプロの手が入っているのですが、マウントネジとタイマーユニット固定用の2本が瞬間接着剤で留められていて分離出来ません。元々、タイマーユニットの固定用ですから上の真鍮ナットで留められている方はマウントの体裁用で意味はありません。不思議なのは下のネジ。本来はいらないはずでしょ? 。意味ないと思いますけど・・

マウントが外れないからかは不明ですが、シボ革も破っています。乱暴な剥がし方です。

 

 

この個体はリターンミラーを貼り直していますね。接着剤がはみ出しています。もう少しきれいに出来ないものでしょうか?

 

右が普通のプリズムで左がこの個体用。フレネルレンズはありません。他は普通のFTと同じですので、すでに分解洗浄の上、巻き上げレバーまで組み立てています。

 

工場での作業ではないのは明らかですが、前回担当したリペアマンは、どうも接着剤を使うのがお好きと見えて、シャッターダイヤルのジョイントが接着されています。茶色の接着剤はプロの修理で良く見る接着剤ですね。すべて清掃をしておきます。

オーナーのINOBOOさんのご希望で、シボ革に出っ張りのある裏蓋を交換して欲しいとのことですので、当方の在庫から探してきました。

 

裏蓋のラッチが粘ってスムーズに動かない。分解してみると、粘度の高いグリスが多量に塗布されています。工場では、この部分はごく僅かの塗布はしてありますが、このように多量に付けてあるのを見たことはありません。グリスが流化すると外部に流れ出す危険性があるので、メーカーでは絶対にやらないことです。すべて洗浄で取り除きます。

基本的な仕様はFVですから全反射ミラーですが、妙な腐食がありますね。しかし、どうせ使わない(コレクション)でしょうから、このまま再使用としておきます。

 

とにかく、要らぬところの接着とグリスで手間の掛かる個体でしたが、やっと完成です。と思ったら、シンクロのターミナルが天邪鬼に逆向きに半田付けされていますね。なんで?

 

なんとターミナルが瞬間接着剤で着けられていてセンターピンが回転しませんでした。裏蓋に修理シールらしきものが貼られていますが、正しい作業をするのが先のように思いますが・・

 

オーナーさんがこの個体を選んだ理由は、吊環が無いこと。完全にないのではなく、環部をカットしてあるのですね。後天的な加工かとも思いましたが、本体との接着(ネジ留め併用)はオリジナルのままと判断します。

 

反対側。既存の部品をカットして使用したと見えて、端面処理は荒いです。

 

 

プリズム部分の拡大画像。フレネルレンズはありません。

 

 

過去の修理作業のリカバリーに手間が掛かりましたね。セルフタイマーレバーと吊環が無いのは、ちょっと雰囲気が変わりますね。コレクションとしては面白い個体でした。

 

ワールドタイムは1964年5月製でPEN-F(T)Medical Type 3 は1969年6月ですから辛うじて60年代の製品。画像は東京オリンピック(1964-10)のマラソン競技で国立競技場近くの千駄ヶ谷付近(40km)まで戻って来た独走のエチオピアのアベベビキラ選手。優勝タイムが2.12.11.2ですから、この7分後に国立競技場のゴールテープを切ったことになります。オリンピックで初めて公式時計となったSEIKOは子供心に誇らしかったのを覚えています。青いコマーシャルカーはトヨタ・クラウンワゴンだったと思います。先導の白バイはホンダ・CP77。


SEIKO ワールドタイム+PEN-FTメディカルの巻

2015年06月11日 21時12分19秒 | ブログ

セイコー・ワールドタイム6217-7000は1964年の東京オリンピック開催を記念して発売をしたモデルですね。裏蓋には聖火のマークが入っています。機械はCal6217Aと普及機クラスですが、個体数が少なく、現在では希少となっていて高価です。で、パッと見て変ですね。ダイヤルリングは回転式ですが、風防の内側に本来は無いはずのOリングが見えます。

自動巻きの効率が悪く、マジックレバーと伝エ車が摩耗しているようです。

 

 

風防を分解してみました。内側にOリングが入っています。これは純正風防ではなく、別モデル用を流用するためにダイヤルリングを抑えるために入れられているようです。

 

SSケースは年代相応のキズが多いですね。軽く研磨をすることにします。

 

 

発売当時からコレクション用とされた個体やデッドストックではない通常の実用品ですから深いキズや打痕があって、完全に研磨をするとオリジナルのカットやデザインが崩れてしまいますから、軽く研磨をするに留めるようにしています。当時、新品を購入されたオーナーさんも、まさか後年に希少価値が出るなどと思いもしなかったことでしょう。

長期間の使用によって、裏蓋にあるはずの聖火のマークも、光線の角度によって辛うじて「なにかあったんだろうなぁ」と思わせる程度に残っています。この部分は研磨をしないことにします。透明の保護シールでも貼っておかれた方がよいですね。

内緒で専門書の画像を拝借して・・このようなデザインが描かれていたのです。元々、凹凸の少ない加工方法が採られたため、使用されたものできれいに残っているものは少ないのでしょう。見本の製造時期は1964年3月で、今回の個体は1964年5月の製造のようです。東京オリンピックは1964年10月10日です。

書き忘れましたが、機械の状態はフラフラとやって動く状態で測定が出来きません。さて、ちゃんと動くようになりますか? 24時間針を駆動するために筒車がダブルになっています。

 

正常に作動しない原因の1つにゼンマイがあるようです。香箱の内周は摩耗が進んで、ゼンマイのスリップを止めるためか自動巻きゼンマイ特有のスリッピングアタッチメント(尻尾)が極端に曲げられています。汚れがひどいので、きれいに洗浄をして注油、ゼンマイをセットします。

香箱真の受けが摩耗拡大したためにポンチで修正をしてあります。地板を交換したいところ。

 

輪列の組立は割愛。ダイヤショックのバネを専用工具で外して注油をします。

 

日ノ裏側。日車を制御する日制レバーを取り付けます。カンヌキバネを飛ばさないように・・

 

辛うじて、デッドストックの純正風防が手に入りました。ダイヤルリングを清掃してケースにセット。風防を研磨しておいたベゼルで取り付けます。

 

自動巻きのマジックレバーが摩耗のため、他の62系から調達して使います。

 

機械をケースにセットして、竜頭でダイヤルリングが回転するかを見ます。

 

回転錘を取付けて組立は完成。

 

 

何とか普通のデータになって来ましたね。

 

 

長期間、普通に使われた個体ですから状態が悪くて当然ですね。役目を果たしてくれたのです。それだけに修復は困難ですが、まぁまぁのコンディションにはなったと思います。私も機会があれば欲しいモデルの一つです。

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目覚まし時計とジョンブリアンの巻

2015年06月06日 20時06分28秒 | ブログ

久しぶりに大阪のご常連さんから目覚まし時計とPENのジョンブリアンが届きましたよ。PENと時計の掘り出し物を骨董市などで探していらっしゃる。大変よろしい行動をされていますね。で、今回は時計は時計でも腕時計ではなく小型の目覚まし時計です。私も自分用のトラベルクロックを数個直したことはありますが、あまりやりませんね。

時代物ですから結構ばっちいです。あら、裏側のフレームを無理にこじった形跡がありますね。修理をしようと考えたのでしょうけど、開くわけないでしょ。

 

この手の時計は、大概使い込まれてホコリの混入と天真の摩耗で止まっているものが殆どです。途中は飛ばして、機械を清掃をしてから注油をしました。幸い、天真の摩耗はそれほど進んではいないようです。摩耗の場合は、鉛筆の芯を研ぐように研磨するしかないのですけど。腕時計の輪列と違って右端のゼンマイから左に円周状に輪列が並んでいます。左端がテンプです。

目覚まし時計ですから、時計とは別回路で目覚まし機構が組み込まれています。ピンセット側が目覚まし用のゼンマイです。12時位置のベルを止めるボタン部の機構が過去に修理を受けており、リターンスプリングはやっつけで作ったもののようです。正常にベルが鳴ってボタンで止まるように調整をします。

ボディーは風防ガラスなどを分解して洗浄してあります。脚と12時ボタンを取り付けます。フレームのリングの変形を修正してはめ込みます。

 

こんな感じです。真鍮のノブなども磨いておきます。

 

 

タイムグラファーで測定すると4振動なんですね。カチカチカチと規則正しく作動をしていますが、当時の生活音としては気にならなかったカチカチ音は、現在の基準で行くとうるさくて眠れないかも知れませんよ。私の実感です。

 

今日の日曜日は関東地方は少し風が強かったのですが、行楽日和の良い一日でした。梅雨入り前の晴天ってとこでしょうね。で、今日は作業はサボって、気になっていた自転車とバイクを見てやりました。「あ~、覚悟はしていましたが結構来ています」やはり物には日頃の愛情が必要です。日曜日ぐらい趣味が出来たらうれしいのですが・・。交換して殆ど走っていないグランボアのタイヤ。ひび割れがしています。ママチャリタイヤと違って、高圧なので交換することにしましょう。安いタイヤで良いかな?

不思議にルマン号のフレームはそんなに錆は出ないのですが、キャリアなど鉄のメッキものがダメですね。

 

ハンドルやステムは表面処理無しだからすぐに酸化してきます。昔からメッキやアルミの磨き出しにはネバーダルを使っています。綿に研磨剤が浸み込んでいて、細かなところにも馴染みます。

 

自転車は殆どアルミとステンレスなので錆の進行はそれほどでもありませんが、問題は鉄の塊のバイクです。新品で組んだウィンカーのボディーが腐食しています。もう入手出来ないのに・・(あっ、もう一台分新品で持っていたんでした)今日は時間が無くて全部は見てやれません。シリンダーはくっ付いているのでエンジンは回りません。どなたかFS1のシリンダー譲ってください。

で、PENジョンブリアンです。このオーナーさんは以前に1台所有されています。最近探していらっしゃる方いましたよね? あまり使用せずに保管されていたという感じの、どこと言って欠点のない個体ですね。これは掘り出し物でした。

 未分解機と思いましたが、過去に一度整備を受けていました。ファインダーの対物レンズが再接着されています。ファインダーブロックは樹脂が劣化を始めて、ガラス淵部が白化しています。

 

ファインダーは軽く研磨をしてあります。対物レンズはすでにガラス製となっていますが、四隅の墨塗りはされていません。反射防止の黒紙が入っています。

 

シャッターには「61-4」の捺印があります。ボディーはすべて洗浄したところ。これからシャッターをO/Hします。

 

スローガバナーはユニットではなく、地板に直接取り付ける前時代的な設計ですね。

 

スプール軸も初期の滑り機構が組み込まれていない、真鍮の挽物です。

 

 

本体側とトップカバー側の組立が終わりました。この頃は、駒数針はまだ金色です。

 

メッキの弱いシャッターリングは非常にきれいです。あまり使われなかった証拠です。

 

 巻き戻しダイヤルのレバー基部にクラックが入っていますね。後期の製品に比べて少し肉厚が薄いようです。設計変更をされたのでしょう。

 

きれいなPENジョンブリアンですね。製造番号も2000XXと覚えやすい? たぶん、目覚まし時計も同じ時代の工業製品なのでしょう。現代にない人間的というか、何となくホッとする素晴らしいデザインだと思います。オーナーさん曰く「あのころの工業製品はなぜこんなに気を引くのでしょう」に納得です。

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SEIKO ウィークデータ+56キングセイコーの巻

2015年06月02日 20時55分24秒 | インポート

しばらくカメラが続いたので、O/Hの時計が増えて来ました。まず、このモデルはセイコーマチック・ウィークデータ 6218-8010(35石)ですね。非常に人気のあるモデル。手巻きはないので、ゼンマイ量が少ないと進み方向です。

キャリバー6218Cで1967年3月製造は最終の頃のようです。

 

 

四番車をレバーで止める秒針規正装置付で歩度調整には微動緩急調整装置は歯車式となって微調整が可能となっています。

 

特徴的なのは、日車と曜車が段付きになっていること。文字盤から見ると、日車が奥まって見えるんですね。以後のモデルでは同一面になるように改良されていきます。

 

機械の状態は良いと思いますね。輪列を組んでいきます。金色が規正レバー。

 

 

マジックレバー式の自動巻き機構をセットして、ケーシングをしたところ。回転錘のベアリングは摩耗気味で、受けに接触した形跡がありますね。

 

ケースは全体的に研磨をされていて、角が丸くなっちゃってますね。ベルトのラグ幅は19mmですが、この個体には18mmのベルトが装着されています。現在は19mmの選択肢は少なくなっています。

 

もう1台のモデルは、うちでも良く紹介している56系のキングセイコー5626-7000と定番のケースですが、やりにくいワンピースケースなんですね。ロードマチックの5606A(6振動)を改良して8振動化した5626A(日付曜日付)が搭載されています。

ワンピースケースのため、簡単に歩度調整が出来ないので、ラグ間のネジをを取り去って、ドライバーを差し込むことで、調整が出来るようになっています。

 

ベゼルを取り外してみましたが、腐食は多めです。風防ガラスを専用工具で取り去って、機械を取り出します。

 

腕時計の軸配置は基本的にはモデルが異なっても、ほぼ同様の設計が多いのですが、この56系はセイコーの異色作として、全く異なるレイアウトで高機能をコンパクトに纏めることに成功しています。

 

8振動化のためゼンマイも強化されています。豪華?にゴールドで区別をしています。

 

輪列を組んだところ。全く配置が異なっています。

 

 

8振動化に伴って、ガンギ車、アンクルなども専用部品です。極端に曲げられたアンクルに注意。

 

日の裏側を組んでいきます。カレンダーを送る日送車をセットします。

 

 

日車をセットしました。ピンセット先は日車と曜車を早送りする揺動レバーで、この機械のウィークポイント。ギヤの破損により早送りが出来ない個体が多数あります。幸い、この個体は正常に早送りすることが出来ます。殆ど早送り禁止時間帯(9時~1時)に無理に操作したことが原因でしょうね。でも、調整するのはその時間帯なんですよね。

この個体は、ワンピースケースですが湿気が侵入したようです。56系の文字盤は弱いと見えて、このように腐食劣化しているものが多いです。時分針の中央の黒線はプリントなので、不用意にピンセットでつまむと剥離してしまいます。

自動巻き用の一番仲介車をセットして、ベアリングに注油をした回転錘をセットします。錘の裏側がかなり腐食が激しいです。材質は何なのでしょうね?

 

ワンピースケースなので裏蓋はありませんが、メダリオンが付いています。しかし、ちょっと輝きが変ですね。左が私所有の同モデルですが、ピカピカ光っています。右は金色の塗料で塗装をしたような輝きの無い濃い金色をしています。最近は、複製パーツも出回っているようですが・・

5振動機と8振動機で作動音は全く異なりますが、どちらも中々優秀な歩度を示しています。ケースは両方とも研磨をされていますが、エッジが立っていないのが惜しいですね。研磨は非常に難しいです。

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