今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
(お問合せ)tomytmzk@titan.ocn.ne.jp
 

セイコー・ミリタリーのオーバーホール

2013年12月10日 23時22分39秒 | インポート

Img_318165 現行でも逆輸入で流通しているセイコー7S26-3060という自動巻きのミリタリー調モデル。10年前に購入されたとのことで、初めてのO/Hということになりますね。現行のセイコー5逆輸入品は非常に安価で入手することが可能ですので、コストを掛けてのO/Hにはちょっとネックがありますね。しかし、オーナーさんは、この時計に愛着をお持ちですのでO/Hをすることになりました。キャリバーは7S26Aですが、極限までコストダウンをされた部品は、60年代の機械に慣れている私としてはカルチャーショックも感じます。カレンダーの歯車、日車、曜車などはすべて樹脂製になっています。

Img_318215 すべて分解洗浄を済ませたところ。石数は21石と、結構頑張っていますが、部品の材質は、あれれと戸惑うぐらい安い作りですね。

Img_318552 組立は特に問題なく終っています。私が気になったのは、セイコーご自慢のマジックレバー式の自動巻機構。簡略化もここまでするか・・

Img_318425 マジックレバーの心臓部はこれだけ。ここまでしても、正常に作動するのかと驚くばかり。部品のコストは何円の世界でしょうね。

Img_318624 日車、曜車をセットしました。当時の部品は、ちゃんとアルミにアルマイト、それから印刷の工程で作られていました。「スペイン」とプリントされていますので、スペイン語圏向けのモデルなんでしょうね。

Img_318847 針を取り付けて、元気に作動を始めました。文字盤のカレンダー枠は省略。機械への取り付けはビスを使用せす、差し込んであるだけです。

Img_318966 しかし、10年使用しても精度は出ますね。O/H前はテンプの振り角は140°程度で片振りが4.5ぐらいありました。新品の時にちゃんと調整されていないのでは?と思いましたね。

Img_319088 私所有のハミルトンとツーショット。逆輸入であれほど安価に入手が可能の秘密が分かったような気がしましたが、それでも、10年以上、性能を維持しているのはさすがSEIKOです。コストパフォーマンスは驚異的な製品ですね。


PEN-F ブラックを作るの巻

2013年12月05日 20時28分52秒 | インポート

Img_314753 PEN-F #1830XXです。未分解機のようですが、放置期間が長かったような印象ですね。付属の38mmは絞り羽根が復帰しない状態です。

Img_314834 何故か、底部の三脚環が分離された形跡がありますけど、トップカバー内は工場から出たままです。この方が私には都合がよろしいです。

Img_314915 全反射ミラーはカビと曇りが発生していますね。この程度であれば再使用は可能ですが、反射率は低下傾向ですので、ご希望によって新品と交換する予定です。

Img_315067 すべて分解洗浄をしてあります。カバー類はクロームを剥離した状態。ニッケルだけでも、シャンパンゴールドに輝いてきれいですね。

Img_315366 今日は、一日中神経を使って疲れたので画像だけUPします。めっきを剥離して真鍮母材に戻した状態。

Img_3164511 ブラック塗装が完了したところ。トップカバー前面の↓部分がプレス型の問題で陥没しています。梨地ではあまり気にならないので、このプレスではブラックモデルは出せなかったのではないかと推測します。

Img_316522 トップカバーと巻き戻しレバーに色入れをしています。花文字も同色はオーナーさんのご希望です。ターミナルの取り付けのあと、駒数ガラスは劣化がありますので、当方のオリジナルを接着して完成させておきます。

Img_317056 まだまだ当分終りませんよ。気が付けば、今日は12月8日かぁ、真珠湾奇襲の開戦記念日だね。奇襲だなんて大笑い。アメリカが日本に仕掛けたトラップだね。アメリカは真珠湾に来ることを知っていた。先に手を出させるということ。何やら、中国のネット上では日本を攻撃せよ。との書き込みが増えて来た。戦争は過去のものではない。オバマでは日米同盟もあてにはならないからね。

話が逸れました。ダイカスト本体に塗装をしておいた裏蓋の蝶番を取り付けておきます。

Img_316748 つぎは、本体のメカを仕上げて行きます。シャッターユニットですが、過去に分解を受けています。

Img_316977 シャッターのブレーキが効いていないので(殆どそうです)分解をしてみると・・ダンパーのOリングがカッターナイフで削られているのかなぁ? 分解の結果、このOリングは途中で交換されたものと思われます。みすみす交換をしておいて、なんで外周のブレーキリングと接触しないようにカットしたの??? 他人様のすることは理解が出来ません。Oリングは交換します。

Img_317154 本体は完成。ブレーキは良く効いて、シャッターのショックは少ないです。

Img_317210 最近は中華圏の方も見てくださっているので危ない危ない。。で、PEN-Fのプリズムは腐食が多いのですが、この個体も黒点が幾つかありますね。マット面にカビが発生していますので清掃しました。この辺りの構造はPEN-FTとは異なります。

Img_317544 長くなるのではしょって本体は完成。全反射ミラーは新品と交換しています。上下カバーを取りつけて行きます。

Img_317655 花文字も白も落ち着いて良い感じですね。リターンミラーの奥に腐食が発見されましたが、今回はそのままとします。あとは38mmのレンズですね。

Img_317911 花文字が他と同色の白というのは作ったことがありませんでしたが、結構しぶいですね。クロームと同じ金色とすると、ちょっとおもちゃチックになってしまう傾向もあります。経時的には真鍮粉が酸化をして良い感じにはなるのですが・・これですべて完成となりました。

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初期型PEN-S 2.8を復活させるの巻

2013年12月03日 21時00分24秒 | インポート

Img_313666 先日やりましたコーワSWのオーナーさんからPEN-S 2.8 #1493XXと比較的初期生産分の個体が来ましたよ。かなり汚れていてシャッターもご覧のように開いたまま。しかし、この個体は永い眠りについていたと推測されて、意外にも基本的な状態は悪くはなく、クラカメブームで消耗される以前に収集保管をされていたものではないかと思います。初期型なので、スプロケットはアルミ地、スプールはグレーです。ファインダーや駒数窓は汚れと曇りで見えませんね。

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しかし、痛み易い距離リングやファインダーのリンクル塗装は剥離も無く良い状態を保っています。ダイカストの巻戻し軸は改良前の形です。

Img_313834 ファインダー部の裏側に貼られているモルトはすでに風化していますので、きれいに取り去っておきます。

Img_313951 この個体は未分解機ですので、ファインダーも清掃を受けていませんが、長期に保存されていた個体の対物レンズは清掃では取れない曇りが発生します。これは、ガラス研磨でクリーンにしておきます。

Img_314019 シャッターね。スローガバナーやその他のフリクションが大きいため、シャッターは開いた状態から進めず開いたままで止まります。

Img_314175 カメラ本体とシャッターは全て分解洗浄をしておきます。

Img_314246 古いシャッターですけど、消耗は少なめです。ただし、シャッター羽根は目視では分かりませんが、表面に赤錆が発生しています。このままでは止まります。

Img_314337 シャッターユニットは完成しましたよ。では、ダイカスト本体側を組立てて行きます。汚れ放題だったダイカストも洗浄で新品のようになっていますね。元々は非常に良い個体と睨んだのは間違いではありません。

Img_314455 完成した本体にシャッターユニットを搭載しました。初期型はターミナルの接続は半田付けになっています。その後は接片によるビス留め。分解を考慮した改良です。

あっ、それから九州ご在住のオーナーさんから、明太子送って頂きました。ご馳走様でした。

Img_314631 これで完成です。PEN-Sに搭載されているコパル-Xシャッターは、自身、多くの個体を組立てて来た印象としては、非常にひ弱で非力なシャッターと感じますが、耐久性にも問題があって、部品の僅かな磨耗によって、すぐに不調となる傾向があります。そんな中で、この個体は実質的な使用はごく僅かではないかと推測します。ダイカスト本体の塗装部分は劣化や剥離はなく、距離リングやピントリングの腐食も全くありません。長く使用された後に放置された個体は、人の汗が付着していて塩分により腐食が進行している場合が殆どです。製造は1961年2月と推定します。PEN-S2.8の発売は、1960年6月ということですから、生産開始から1年未満の製品ということになります。

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