先日やりましたコーワSWのオーナーさんからPEN-S 2.8 #1493XXと比較的初期生産分の個体が来ましたよ。かなり汚れていてシャッターもご覧のように開いたまま。しかし、この個体は永い眠りについていたと推測されて、意外にも基本的な状態は悪くはなく、クラカメブームで消耗される以前に収集保管をされていたものではないかと思います。初期型なので、スプロケットはアルミ地、スプールはグレーです。ファインダーや駒数窓は汚れと曇りで見えませんね。
しかし、痛み易い距離リングやファインダーのリンクル塗装は剥離も無く良い状態を保っています。ダイカストの巻戻し軸は改良前の形です。
ファインダー部の裏側に貼られているモルトはすでに風化していますので、きれいに取り去っておきます。
この個体は未分解機ですので、ファインダーも清掃を受けていませんが、長期に保存されていた個体の対物レンズは清掃では取れない曇りが発生します。これは、ガラス研磨でクリーンにしておきます。
シャッターね。スローガバナーやその他のフリクションが大きいため、シャッターは開いた状態から進めず開いたままで止まります。
古いシャッターですけど、消耗は少なめです。ただし、シャッター羽根は目視では分かりませんが、表面に赤錆が発生しています。このままでは止まります。
シャッターユニットは完成しましたよ。では、ダイカスト本体側を組立てて行きます。汚れ放題だったダイカストも洗浄で新品のようになっていますね。元々は非常に良い個体と睨んだのは間違いではありません。
完成した本体にシャッターユニットを搭載しました。初期型はターミナルの接続は半田付けになっています。その後は接片によるビス留め。分解を考慮した改良です。
あっ、それから九州ご在住のオーナーさんから、明太子送って頂きました。ご馳走様でした。
これで完成です。PEN-Sに搭載されているコパル-Xシャッターは、自身、多くの個体を組立てて来た印象としては、非常にひ弱で非力なシャッターと感じますが、耐久性にも問題があって、部品の僅かな磨耗によって、すぐに不調となる傾向があります。そんな中で、この個体は実質的な使用はごく僅かではないかと推測します。ダイカスト本体の塗装部分は劣化や剥離はなく、距離リングやピントリングの腐食も全くありません。長く使用された後に放置された個体は、人の汗が付着していて塩分により腐食が進行している場合が殆どです。製造は1961年2月と推定します。PEN-S2.8の発売は、1960年6月ということですから、生産開始から1年未満の製品ということになります。