今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
(お問合せ)tomytmzk@titan.ocn.ne.jp
 

外観のきれいなPEN-Wとその他

2011年10月04日 22時56分50秒 | インポート

Dscf2945331 ちょっとその前に時計を・・例の極端に遅れる56キングセイコーですが、もしやと思い、部品を点検してみました。あちゃ~。LMの部品に換えられていたのです。じつは、LM(ロードマチック)とKS(キングセイコー)は基本的に56系という同じ機械です。しかし、基本形のLMは6振動の機械でKSは8振動にグレードアップされています。それによって、香箱(ゼンマイの強さ)、ガンギ車、アンクル、アンクル受け(画像)とテンブが別部品となっています。この個体ではアンクル、アンクル受け、テンプが交換されていました。これでは、絶対に正確な時は刻みません。規格が異なるのを知らない分解マニアが組んだものか、それとも承知で悪意で組んだものか? カメラ以外でも、このような個体があるのですよ。

画像のLMとKSの下面左の切符の切り欠きの形に注意。アンクルの作動範囲が異なるため。

Dscf294555 上が自動巻きのローターと下がテンプですが、このテンプがLM用でした。テンワの直径がKSの方が0.2mm程度小さい。このテンプが機械式時計の命です。

Dscf294665 ではカメラです。ご常連さんから過去にO/HをしましたPEN-FT(B)が里帰りしています。これは簡単な調整だけで作業は終了となりました。しかし、最近PEN-FTを修理していなかったなぁ・・

Dscf294755 付属で20mm f3.5が来ています。最近20mmが良く来ますね。38mmなどとサイズ的には同じようですが、構造は全く違って大変なんですね。レンズは6群7枚ですから、下段の左に2枚、中央1枚、右が1枚と上の後玉に3枚で構成されています。豆レンズがきっしりと詰まっていますね。下段は3段ロケットのように積み上げていく構造です。20mmは曇りや原因不明の透明液(粘る)が出る厄介なレンズですね。この個体は過去にも清掃を受けていますが、幸い保管が良かったようで、曇りは見られませんでした。全て分解して清掃します。

Dscf294615 組立の最後にシボリリングを組立てますが、この個体は何故かクリック用のスチールボールが欠落しています。新しいボールを追加して組みます。

Dscf2947341_2 PEN-FT(B)+20mm f3.5は終了です。隣りのPEN-W #1101XXはきれいじゃないですか? 塗膜に新品時の艶消しの肌が充分残っています。また、見難い腐食も出ていませんので、この個体は殆ど使用されなかった個体と分かります。塗装の艶は現存に多いピカピカではないのですよ。良く覚えておいてくださいな。私もリペイントは、この艶を標準としています。

Dscf2948241 このPEN-Wは確かに使用された形跡は少ないのですが、保管がねぇというところ。ボディーの塗装劣化は免れていますが、シャッター内部の腐食やレンズにダメージが進んでいました。画像はシャッターで重要な部分。軸孔の内部を見てください。軸が嵌っていたにも係わらず、真鍮素材が腐食して青白く緑青が噴いていますね。ここの精度がシャッタースピードに影響を与えます。どうりで眠い作動のシャッターでした。

Dscf295067 スローガバナーもあまり調子よくありませんね。観察すると画像で見えるホゾ孔の一番左の孔横に二つのポンチ跡がありますね。このユニットは、全体的にホゾ孔が大きいようですので、ホゾ詰めをして孔の大きさを縮めたのでしょう。未分解のシャッターですので、コパルの工場で行った修正ですね。(画像外左の孔も修正跡あり) カメラの精密さを時計に置き換えると、ウォッチではなくてクロック級ですね。

Dscf295164まぁまぁ、何とかシャッターは組み上がって本体に搭載しましまた。レンズの後玉にはバルサム黄変と周辺剥離がありますが、現存の個体では軽微な方でしょう。レンズ中央に白い曇り個所が幾つかあって心配でしたが、清掃で取れています。レンズとファインダーは清掃した痕跡がありましたので、その時の拭き上げが不完全だったのでしょう。ピントリングも腐食しているものが多いですが、この個体は汚れを洗浄してみたところ、「あら、きれい」ローレット部分の腐食剥離もありません。使われなかった証拠ですね。

Dscf295276この個体だけではなく、 PEN-Wの塗装でいつも気になっているのは、シューの取り付け部分の塗装状態です。この個体は、何故かこの部分にだけ、ブツブツ状の塗膜剥離を起こしていますが、それは別にしてシューをビスで押し付けたことによる塗膜の圧縮が見られることです。通常、焼付塗装の場合、このように圧力を掛けてへこむということは考えにくいのです。これは、組立の時点で、塗膜が完全に硬化していなかったか、経時的に塗膜の硬度が低下したことを意味しています。この個体では、ビスを取り去ってもシューが接着されたように密着して剥がれませんでした。中央部分の艶はPEN-Wの新品時の艶になります。露出している部分は塗膜の摩滅で光り気味(それでも良い状態)となっていることが分かります。

Dscf295464 開閉キーが光ってちょっとアンダーですが、底の部分も見ていただきましょう。ひゃ~、ほれぼれするぐらい新品時の塗膜状態を残していますね。決してピカピカではないのです。

Dscf295582 ご依頼のメールを見返すと、フードもご希望でしたね。この個体はフードを装着するシボリリングの直径が少し大きく仕上がっていますね。23.90mmぐらいあります。公差の範囲ですが、うちのフードは23.88mm程度を狙って作っていますので、ちょっと修正をしました。また、フードの製作ですが、仕掛のブランクが少なくなって来ましたので、製作が難しくなるかもしれません。

Dscf2956181 オリジナルフードの塗装をしました。今回はご常連のINOBOOさんからのご依頼分と合わせて2個製作しました。心配していたレンズの状態も改善されて、結果的に塗装のコンディションの良い個体となりましたね。実用の場合は、使用後は手汗を拭うようにしてくださいね。

http://www6.ocn.ne.jp/~tomys800/


最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。