何故か同じモデルのご依頼が同時に入ることがあるものです。こちらのPEN-FV #1106XXは前回の個体より2カ月後の1967年4月の製造です。こちらも外観は非常にきれいな個体ですが、巻き上げが高頻度で「2回巻き上げ」になります。
この頃の個体に起こる劣化として「駒数ガラス」の樹脂の劣化により見えにくくなることがあります。色入れ工程での溶剤が悪影響を与えたものと思います。
圧板のカシメが片方外れています。これは良くある不良で、そもそもカシメピンの強度が足りず、無理に裏蓋から外そうとすると容易にカシメが外れてしまいます。皆さんはここには手を触れない方がよろしいです。補修はネジで留めることは可能です。
前回の個体の画像と比較して欲しいのですが、どこが異なるのか見比べてください。
では、ボディーを洗浄して組み立てて行きます。FVは電池は使いませんが、セルウケはFTと共通部品です。モルトを貼り替えて取り付けます。
スプロケットのギヤネジは緩みやすいのでネジロックを塗布してねじ込みます。
シャッターユニットを洗浄して点検します。チャージギヤ #1の内径と軸の前側に摩耗が認められます。
チャージギヤ(軸)の摩耗の他は問題のないユニットですが、スローガバナーはまだ改良前のユニットです。低速側へ無理な変速には気を付けなければなりません。
前板関係を点検して行きます。スクリーンの端にカビのようなものがあるのでプリズムを分離すると・・菌糸状のカビですね。清掃は可能です。しかし、このプリズムには中央一点に黒い腐食があります。PEN-FとFTの初期までのプリズムは腐食し易いのです。
全反射ミラーは意外に見にくい腐食はありませんが、オーナーさんのご希望により新品と交換します。
最後に駒数板を取り付けますが、この個体は初期型仕様のため駒数オサエがナット式になっていますが、中期以降は逆で駒数オサエがネジになります。理由? 普通にネジ式の方が組立易いからでしょ。
洗浄をしたアンダーカバーを取り付けますが、手前のボトムキャップがポロッと落ちて来ました。ここの接着が外れかかっている個体は意外にあります。まぁね私の手元にある時に取れて良かった。古い接着剤を落として再接着をしてあります。
圧板の新品ストックが、あと10個程度になりましたので、今回はネジで修復して使います。
駒数ガラスは数字が判読できる程度に研磨をしておきました。これより劣化が進むと内部までクラックが入り修正は出来なくなります。
付属の25mm/f2.8ですがオーナーさんの見立てよりレンズの状態は良くありません。
前玉2枚のバルサムが全体に劣化しています。これは清掃出来ません。
中玉は清掃出来ました。問題は後玉。結構カビと曇っていますよ。
今回は私の都合で時間が掛かりました。巻き戻しノブが初期型FTと同じローレットタイプの初期型仕様FVとしては良好な個体と思います。くれぐれもシャッタースピード1/8から1/4に回す時はゆっくりと操作してください。