PEN-S 2.8 ね。全体の疲労はそれほどでもないのだけれど、保管が良くなかったたために、ダイカスト本体と裏蓋に湿気による塗装の劣化が見られます。駒数ガラスはクラック入りで脱落しています。まぁ、このぐらいの個体であれば、問題は無いと感じる方も多いと思いますが、オーナーさんは気になってしょうがないご様子です。
と言うことで、ダイカスト本体のみリペイントをしましたよ。元々のダイカストの巣が向かって左方のシボ革部にあります。シボ革に隠れるので良品採用となったのでしょう。縁部分は意外に腐食が進んでおり、傷消しの修正吹きをしてあります。
メカ的には特に問題はありませんので淡々と組んでいます。この頃はスプールはグレー色の成形ですね。スプロケットはちゃんとアルミの黒アルマイト製です。上側のモルトも丁寧に貼ってあります。
上前面を見たところ。シャッターは過去に分解を受けていましたね。何故かシャッター羽根付近に水油が塗布されていました。全て洗浄脱脂をして組んであります。
前面の洗浄したシボ革を再接着しました。オーナーさんは工場での接着の時にはみ出して、経時により茶色になった接着剤を気にされています。まぁ、これを溶かすための溶剤はシボ革自体も傷めるので簡単には使えないのです。出来るだけ削り取るようにしました。気にされない方の方が多いですけどね。
トップカバーです。クラック入りで脱落していた駒数ガラスは新品と交換接着をしてあります。吊り環ですが、この頃の吊り環の材質は真鍮にメッキですので、腐食をして緑青が噴いているものがあります。そこで、後期生産機に採用されているステンレス製の吊り環に左右セットで交換してあります。
清掃したレンズを接着したファインダーブロックをトップカバーに取り付けています。これを本体とドッキングします。
レンズはカビがありましたが比較的軽微で殆ど清掃出来ています。しかし、湿気のためレンズの分離が親の仇のように困難でした。ヘリコイドのねじピッチは変更前の細かいタイプにより、変更後のヘリコイドとはグリスの硬さを調整する必要があります。駒数カニメねじは新品と交換、ファインダーのリンクル塗装が剥離した部分のタッチアップ、フィルム位置マークなどの抜けた色入れを補修してあります。裏蓋については清掃、モルト交換をしてありますが、塗装の補修は今回は省略です。PEN-Sは1960年から長きに渡って生産されましたので、24万代のこの個体は1962年4月の製造とかなり古いのですね。それによって、あまり使われなかった個体ですが、保管の問題でコンディションを落としていたというわけです。よって、一番劣化をする、距離リングやピントリングなどの部分が良好だったのはラッキーでした。良いコンディションで長く使いたいというオーナーさんのご希望にはお応え出来たでしょうか。