ご常連さんから30万代のPEN-FT #3224XXが来ています。何でも譲り受けたとのことですが、巻上げもシャッターも全く不動状態。緊急脱出を試みても効果は無し。こういう場合は、何か重大な問題をはらんでいることが多いのです。では、トップカバーを分離して・・と、思いましたが、この個体に付いているセルフボタンは面取りの非常に大きなタイプで、体裁は良いのですが、とにかくレンチが掛からない。レンチを諦め、裏技でボタンを外したところ。カメラが急に動かなくなると、皆さんやるのがセルフタイマーを掛けちゃうのね。FTは構造上、シャッターの作動中にタイマーを掛けてしまうと、二つの指示がかち合うことになって、にっちもさっちも動けなくなってしまいますからやめましょうね。
あぁ、これだぁ。テンションスプリングが先端で折れていて、かみ込んだ状態で固着停止していますね。後期型のスプリングですから、自由長は前期型より長くなっていますので、折れる事故は少なくなっているのですが、ミラーアップなどで停止した場合は、シャッター側のテンションは掛かっているのに、再度巻上げをしてしまうとダブルテンションとなってスプリングが折れます。先端で折れているケースは殆どこれです。30万代の個体ですしオーナーさんの復活希望もありますので、スプリングを交換して治すことにします。
シャッターユニットは洗浄してあります。スプリングはテンションシャフトのピンに脱落しないようにカシメられています。シャフトASSYでの交換も可能ですが、シャフトのなじみがありますからスプリングだけ交換してカシメておきます。
あとは30万代の個体だし、特に問題は無く組み上がって行きます。ダイカスト本体は改良後のタイプ。プリズムの状態は当然良好でプリズムホルダーは留めビス孔は2つですが、片方にしかタップ加工はなく、1ヵ所留めになっています。裏蓋の圧板はまだ4ヶ所留めですが、この後すぐに2ヶ所留めになります。
ファインダーハウジングを取り付けます。モルトは交換してあります。
組み立ては殆ど終っています。これから調整作業をして行きます。30万代としてはハーフミラーの腐食は進んでいる方でしたね。右の異物は、スローガバナー内から出て来た、フィルムの残骸だと思うのですが、果たしてどこから浸入したのでしょう?
↑分解途中でMシンクロ接片が折り曲げ位置からポロッと折れて来ました。シャッターが作動するたびに叩かれている部品ですので、金属疲労でしょう。そこで半田付けをして組み立ててあります。あまり用はないと思いますが、一応付いているものなので・・Rボタンを挿入して底蓋を取り付けます。
外れなかったセルフボタン。面取りのRが大きいですが、これは製造ロットによりさまざまなんですね。Rが大きい方が、デザイン的にはきれいなんですけど、組立や再分解をするリペアマンにとってはレンチが掛からず分離しにくいもので、後期の生産になるに従ってRは小さくなる傾向にある(気がする)のは、SSなどからの要望でしょうか? うちのリプロ部品は、分解組立のし易さを優先して面取りのRはあえて小さく作ってあります。意外に撮影に夢中になって紛失する方もいらっしゃいますし、メッキ処理をしない真鍮地のものも供給可能ですから、MazKenさんのようにピカピカに研磨をしてアクセントとする楽しみ方も出来ます。みなさん買ってくださいね。
と言うことで、30万代のPEN-FTを救出しました。露出計の感度などは、やはり製造が新しい分だけ元気ですね。その他は、それほど変わらないのですけどね。