今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
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私のO/HしたPEN-W ?

2011年08月03日 23時13分13秒 | インポート

Dscf2812331 ご常連さんからPEN-WとPEN-Dが来ています。「動かなくなった」とのことで、すわ、過去に私がO/Hをした個体かな? と心配になります。このシャッターは非常に小さな動力で作動しており、今となっては、肝心な部品が磨耗している個体も多いのです。その状態では、同じように作業をしても信頼性(安定性)に差が出て来て、シャッターが開かないという状態に陥るユニットもあります。それだけに、非常に神経を使って組んではいるのですが・・

この個体は殆ど使われなかったのでしょう。トップカバーの塗装がこれだけきれいな状態で残っているのは、人間の手汗があまり付いていなかったからです。ただ、残念なことに、シュー角の部分が大きく塗膜剥離をしており、タッチアップがされています。これ、私かなぁ? もう少し上手に塗ると思うんだけどなぁ。。

Dscf281365 シャッターユニットを分離してみると・・これ、私の仕事ではありませんね。分解した3本のビスは白いネジロックが破られたままです。私の場合は、全て取り去ってからブルーのネジロックをしてあるはずです。ほっ・・

Dscf281457 過去にO/Hを受けているシャッターユニットですね。真面目な作業ですが、画像の部分などは分解はされていません。シャッターの部品消耗は少ないのですが、この組み方ですと動かなくなることがあるでしょうね。構造は簡単ですけど、本当のところは奥の深いシャッターです。

Dscf281564 そこへ持ってきて、シャッター羽根をベンジンか何かで拭きませんでしたか? このシャッターはそれは厳禁です。一時的には動くようになってもすぐにシャッター羽根は開かなくなります。で、シャッターユニットは良好に完成しています。洗浄済みの本体に組み込んで行きます。

Dscf2816511 トップカバーの裏をチュックします。カウンターガラスは工場を出たままではなくて交換されていますね。→の横ビス孔を良く見てください。ここには本体との隙間を調整するワッシャーが貼られていたはずですが、剥離して無くなっています。殆どの作業者は無視をするか、ワッシャーが入っていたことすら気がついていません。ワッシャーを追加して組立てます。

Dscf281815

PEN-Wは調子は最高に仕上がっていますが、この個体で特筆すべきことは、レンズの状態が現存の個体中では最高の部類に入ると言うことでしょう。バルサム剥離や黄変もありませんので、オリジナル通りの写真が撮れることでしよう。

次です。PEN-D #2633XXで、こちらもシャッター羽根が張り付いていますので、全く作動しませんね。こちらも過去に分解歴があり、巻き戻しダイヤル下の皿ビスのスリ割りが壊されています。ちょっとイヤな予感・・・全体的にはきれいに保存されている個体ですね。

Dscf281992 すみません。ちょっと検診に行ってました。で、このシャッターですが、前期頃までの個体はヘリコイドグリスが古いタイプでして、変質して流れ出すのですね。同じ形式のシャッターのPEN-SやWなどでは起きないトラブルですが、D系の場合は背中にヘリコイドネジを背負っている関係で、どうしても流れ込んでしまうのです。この個体の場合は画像のように、シボリリングの回転重さを規制するブラシが1個だけですね。本来は3個の設計ですけど、2個の個体もあって、工場での組立時に組立重さによって個数を選択使用していたようです。

Dscf282012 ハウジングカバーを分離してみると・・・見事にシャッター羽根が張り付いていますね。

Dscf282102 張り付きだけではなくて、メカもダメですね。ピンセット先のレバーがスローガバナーを押し切れていません。全く固着しています。

Dscf282357 ハウジング内のシボリ羽根を点検してみますと、見事に油が回っていました。まぁ、こちら側から浸透して来たので当然ですが。すべて洗浄してから組立てておきます。また、ヘリコイドグリスは全て洗浄してホワイトグリスに交換しておきます。

Dscf282445 で、シャッターは無事組立られました。本来、磨耗はありませんでしたし、シャッター羽根も油漬け(笑)でしたから保存状態は良好でした。調子は非常に良好です。これにヘリコイド部分をドッキングして本体に搭載します。と、ここまで終ったところに、名古屋のご常連さんからエクスパックが届きました。アラ~、時計ですね。ご自宅に有った物だそうで頂戴してしまいました。懐中時計やスモールセコンドも有りますが、ベルトの付いた時計が目に止まります。これは、私の好きなセイコーのスポーツマチックファイブの初期のモデルですね。キャリバー№6619Aの諏訪製21石で、日付の日送りがリューズをプッシュすることで簡単に出来るようになった2代目のモデルです。非常に斬新な文字盤ですが、1964年製で、東京オリンピックの年ですから、PEN-Wなどと同じ時代に製造されたモデルです。残念なことにケースに腐食が目立ちますね。これは、ケースの材質は真鍮製で、それにステンレスメッキを施したセイコーではSTPと称する仕上げです。この後のモデルは、無垢のステンレスですから、耐久性を改善したのでしょう。そのうちオーバーホールをして使いたいですね。PEN-Dの方は、完成をしていますが、画像を撮り忘れました。