今なにしてる         (トミーのリペイント別館)

カメラ修理などについてご紹介します。
富塚孝一
(お問合せ)tomytmzk@titan.ocn.ne.jp
 

お盆休み中のPEN-FTとKING-SEIKO

2011年08月13日 11時15分30秒 | インポート

Dscf28381598 毎日暑いですねぇ。日本国中お盆休みですから旅行や帰省に出掛けていらっしゃる方も多いと思います。修理のご依頼も一段落ですが、私はこの猛暑では外出の予定はありませんので、在庫のPEN-FTのO/HとキングセイコーをO/Hして行きたいと思います。PEN-FTはご希望の方にお譲りします。暑い中、中古屋さん回りをして探すよりはO/H済みを入手出来ますので楽ちんだと思いますよ。#1944XXは1968-3月製造の個体になります。

Dscf283768 こちらはセイコーのKING-SEIKOです。1970-11月諏訪製造で、56系(5625-7000)というセイコー自動巻きの定番キャリバーを搭載したモデルです。上級のグランドセイコーと同じ機械ですが、グランドセイコーは特別調整品で、キングセイコーは量産品というところでしょうか。この個体はジャンクとして入手したもので(良品は高価です)外観の状態は良くないですね。ケースと風防はキズが多数ありますから、大切に使われた個体ではないですね。風防は普及時計のようにプラスチックではなくてハードレックスというガラス製です。普通の使用ではあまりキズはつかないのですが、それにしては深いキズが多いです。この風防は研磨することが出来ません。幸い、時計部品商社に最後の1個の在庫がありましたので確保です。良く見ると文字板も良くないなぁ。湿気浸入による外周の自然劣化と分解キズも見えます。ガラスを交換すると劣化が目立ちますのでリダンもしたいところです。このキャリバーの欠点である日送り不良は現状では正常に作動しています。裏側のゴールドのメダリオンは外周部を無理に押し込んだような痕跡がありますので、或いはこの個体のオリジナルではないかもしれません。GSやKSには分解マニアが多くて、寄せ集めの個体の可能性もありますね。その辺りはカメラと一緒です。まぁ、自分で治して楽しんで使うことが目的ですからどうでも良いのですが・・

Dscf283951 裏側を見ます。一見、裏蓋のように見えますが、工具を掛ける溝がありませんね。このケースは一体ケースで、裏蓋はありません。したがって機械は前面の風防を外して取り出すようになっています。防水性を考慮してのケースと思いますが、バンドの足の中央に、テンプの調整が出来るビスがありますので、あまり防水性が良いとも思えませんね。真ん中には金メッキのメダリオンがついています。外周に圧迫キズがあるので、オリジナルではない可能性もあります。ヤフオクなどでは、純正ではない(複製)メダルも販売されています。このモデルの次が最終型になりますが、そのモデルには中央のメダリオンは省略されます。机に置いた時には、このメダル部分が当りますのでメッキの磨耗が気になりますね。

Dscf283761 では、本体から組立てて行きますが、元々不良の個体ではなく、仕上げ用に保管していたものですので特に問題はないですね。マニアさんは後期型がお好きですので、どうしても中期頃までの個体が残る傾向にありますが、後期型が良いのは、製造が新しい(とはいっても)分、光学系などの状態が良い傾向にあるためで、巻上げの感触などはギヤの規格変更で、返って保管の良かった中期までの個体をメンテナンスした方が良い傾向にあります。スプロケットギヤの留めビスは殆どの個体で緩んでいますので、ネジロックを併用して組立ておきます。

Dscf283851 リターンミラーです。O/Hに入って来た個体では問題なくそのままお出しする状態(右)ですが、せっかくですから新品でスカッときれいにしておきましょう。左は貼り替えた状態。

Dscf283937 交換したリターンミラーを組み込んだ前板を本体とドッキングします。シャッターユニットは全く問題はありませんので洗浄、注油をしてしあります。

Dscf284024組立完成です。リターンミラーとハーフミラーを新品に交換してありますが、リターンミラーにすり傷が無いのはやはり気持ちがよろしい。

Dscf284115梨地メッキには使用による小スリキズはありますが、大きな凹みや塗装の劣化はないですね。仕上がってみると非常にすっきりとした個体です。巻上げフィーリングも中期頃までのスムーズな感触を維持しています。暑い中、中古屋さんを探し回っている方にはメンテナンス済みの個体ですからよろしいと思います。ご希望の方にお譲り致しますのでメールでお問合せください。

http://www6.ocn.ne.jp/~tomys800/

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8月15日は終戦記念日という敗戦記念日ですね。この国は都合の悪いことを言い換える悪い癖があって、戦時中でも撤退を転進といったそうな。そして誰も責任を取らないのは今回の原発事故でも一緒。で、カメラの方は、次のPEN-Wの分解をしておりましたが、暑いし、世の中は連休中なので、それではと、ちょっとサボって時計で遊んでいました。キズだらけであったケースは研磨をしましたのできれいでしょ。SS(ステンレス)だから腐食しないと思ったら大間違い。ちょうどPEN-Wのトップカバーの真鍮のようにポツポツとピンホール状に多数の孔が開いていて、軽く研磨をしただけでは取りきれません。同じ人の汗の塩分が原因なのでしょう。かといって、あまりラグの部分を削りすぎるとデザインが変わってしまいますから、ギリギリの兼ね合いで研磨しました。ネット上では、リューターにバフをつけて磨くのが一般的なようですが、それをすると、角の部分まで削れて稜線がタレてしまうのです。ここは自動車板金で習得した方法のあて板をつけて、自分の手でシコシコと磨くのが一番よろしいです。プロに依頼すると一万円ぐらい掛かるとか。まぁ、手間と技術だからそんなもんでしょうけど、私としてはPEN-WのO/H工賃とほぼ同じでは割に合わないので自分でやります。

下の風防ですが、左がこのユニットに付いていた古いキズだらけのもの。右はデッドストック新品。このモデルは枠つきで新品の輝きがきれいです。こうなると文字板の黄ばみが気になりますが、リダンはやはり一万円以上掛かります。その仕事、私がやりたいなぁと思います。どこか弟子入り出来ないかしら?  と、ここで失敗。リューズを見ると防水用のOリングが入っていませんね。セイコーの純正は手に入らないかもしれないなぁ。このケースは裏蓋がありませんので、機械をO/Hした後でリューズだけ引き抜くのは非常に困難なので、Oリングを調達してからの組立になります。それまで、機械のO/Hは進めておきます。

Dscf2848851 5626AのキャリバーはLM(ロードマチック)と基本的には共通で、ハイビート化(8振動/秒)をした25石の機械です。それまでの機械と比べて非常に薄く小径に出来ていますね。自動巻き機構を専用設計としているので、それまでの手巻き機械に自動巻き機構を追加した機械とは比較になりません。それは良いとして、この機械のウィークポイントは←のギヤです。竜頭を正逆に巻くことによって、日付と曜日が別々に早送り出来る非常に便利な機構ですが、歯車の基部が回転方向によって動いて上のギヤか左のギヤのどちらかに接するようになっていますが、歯車が樹脂製のため摩滅をして、日付や曜日の早送りが出来ない個体が多数あります。すでにメーカーには部品在庫は無いので、基本的に同じ機械のLMジャンクから調達される場合が多いようです。この個体は健在でした。

Dscf285095 機械のレイアウトはそれまで見慣れた古典的な機械のものとは全く異なりますのでじっくり観察する必要があります。一部のギヤの磨耗と回転ローターの裏側の腐食が目に付きました。このまま組むか、ジャンクのLMを調達してギヤを交換するか・・

Dscf285377 と思ったのですけどね。分解前にハック(秒針停止)機能が利かないのを思い出しまして、点検をして見ますと・・・あぁ、バネが無くなっていますね。がハッをさせるためのレバー。このレバーでテンワと接触させて秒針を止める機構ですが、レバーを押し付けるためのバネは本来の部分にセットされているはずです。これが前回の分解時に紛失させて気づかずに組んだものでしょう。当然プロはこのようなミスはしませんのでアマチュアの仕事です。カメラの世界でも時計の世界でも事情は同じなんですね。よって、LM(ロードマチック)の部品取りを入手するまで組立は中止としますね。