東京新聞寄居専売所

読んで納得!価格で満足!
家計の負担を減らしましょう!
1ヶ月月極2950円です!
アルバイト大募集中です!

今日の筆洗

2021年08月30日 | Weblog
「ジャミラ」と聞いて身を乗り出してくるのは六十前後の方だろう。「ウルトラマン」に退治された怪獣である。半世紀以上も昔のジャミラの悲しげな声が今でも耳に残っているという方もいるだろう▼怪獣ではあるが元は人間。宇宙飛行士だったジャミラは事故で水のない星に着陸。過酷な環境に耐えているうちに怪獣となり、やがて地球を襲う。自分を救助することなく見捨てた人間への復讐(ふくしゅう)のためである▼俳優の二瓶正也さんが亡くなった。八十歳。「ウルトラマン」の科学特捜隊のイデ隊員役の印象が残っている。イデ隊員はとりわけジャミラに同情し、攻撃をためらっていたっけ▼ジャミラは科学の進歩という美名の下に捨てられた犠牲者ではないのか。その死に際してもイデ隊員はジャミラを生みだし、殺した人間側を冷ややかに見ていた▼二瓶さん演ずるイデ隊員は明るく心やさしかった。屈強とはいえない。失敗も目立ち、ベッドから落ちて目のまわりにあざをつくるような隊員でもあった。それでいて怪獣側の事情にも理解を示し、怪獣は退治すればいいという一方的な正義に対し、時に疑問を投げかけていた▼あのころの子どもは自分と同じようにドジで悩みもあるイデ隊員を身近に感じていたのだろう。そしていくつになってもイデ隊員を忘れない。なんだか、古くからの友達が遠くに行ってしまった気がする。