東京新聞寄居専売所

読んで納得!価格で満足!
家計の負担を減らしましょう!
1ヶ月月極2950円です!
アルバイト大募集中です!

今日の筆洗

2021年08月12日 | Weblog
映画「キング・コング」(一九三三年)のラストといえば、飛行機からの攻撃によってニューヨークのエンパイア・ステート・ビルディングから落下し、息絶えるコングである▼コングは一目ぼれした女性をさらって逃げていたのだが、よほど大切に思っていたのだろう。飛行機の銃撃から女性を守っているのが分かる。コングの最期が哀れである▼舞台は同じニューヨーク。こちらの転落劇に同情はない。ニューヨーク州のクオモ知事である。十一人の女性からセクシュアルハラスメントの告発を受け、辞任を表明した▼つい最近まで新型コロナ対策での指導力が称賛された人物である。英雄。未来の大統領候補。高い評判は同意のない口づけやみだらな言葉によって一瞬で地に落ちた▼「私は一線を越えていない。だが、引き直された一線の範囲を理解していなかった。世代や文化の変化を知るべきだった」。自分にとって一連の行為は親密さの表現とでも言いたいのか。テレビ演説でこう述べていたが、時代や人の気持ちに敏感であるべき政治家の言い訳にはならない▼ハラスメントの一線がどこにあるのかを絶えず確認する。用心のため、その一線からもう二、三歩下がって歩く。それぐらい注意深ければ、大転落はなかっただろう。日本でいえば、どこかの市長が女性五輪選手のメダルを口に入れるような悲劇も起こるまい。