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今日の筆洗

2021年08月01日 | Weblog
 五歳の男の子なら自分を救い出してくれる正義のヒーローがやって来ることを願い、辛抱強く待っていたのではないか。そんな想像をしてしまう▼「遅くなってごめん」。重い扉を片手で軽々と押し破り、空を飛んで自分をお母さんのところに連れて帰ってくれるヒーローを。ヒーローは来なかった。その事実に胸が痛くなる。福岡県中間市の保育園の送迎用バスの中で見つかった男の子が熱中症で亡くなった事件である▼朝、バスで保育園に到着したが、男の子はバスから降りていなかった。園長は気が付かず、そのままバスにかぎをかけて園内に駐車していた▼三〇度を超える七月の暑さと閉め切った車内。想像するまでもない。五歳の子どもにはどれほど苦しかったか。暑さや喉の渇きばかりではないだろう。閉じ込められた恐怖、家族に会いたいという願い。ここから出してと声を上げ、泣いていたはずだ。男の子が見つかるまで九時間。数字を見るのがつらくなる▼警察は業務上過失致死の疑いで調べているが、園長は男の子がバスから降りたことを確認していなかったという。別の職員は男の子は休みと思い込んでいたと聞く▼同じような事故は過去にも起きている。もしもバスから降りていなかったら…。命を救えるのはそうした人間の想像力しかない。乗り降りの確認を徹底したい。正義のヒーローは来ないのだから。