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今日の筆洗

2021年08月17日 | Weblog
戦闘員が大統領府を占拠している写真を見て、思い浮かべるのは城である。普通の城ではない。浜辺にこしらえた砂の城。長い年月をかけ、苦労して造り上げたその砂の城はまたたく間に跡形もなく、大波にさらわれていった▼アフガニスタンの反政府武装勢力タリバン。その大波はついに首都カブールまでのみ込んだ。ガニ大統領は国外に退避し、政権は事実上崩壊した。二〇〇一年の米中枢同時テロ後に成立した民主国家という「砂の城」はあっけなく消えた▼米国が武器を与え、教育したはずの政府軍はいともたやすく、敗走した。タリバンが州都の攻略を始めたのは六日。わずか十日間という信じられないスピードで全土を掌握した▼つい数日前、米軍幹部が首都が陥落するまでは「なお数カ月かかる」と語っていたが、あっという間にタリバンの手に落ちた。いかに米国の見通しが甘かったか▼その城は米国という存在が呪文の役割を果たし、それなりの強固さを保っていたのだろう。米軍の撤退によって呪文を失い、もろい砂の城へとなってしまった。米国の選んだ撤退時期は正しかったのか。今となってはその判断が恨めしい▼心配なのは砂の城の中で暮らしていた人々である。タリバンは「平和的権力の移行」を強調する。その言葉を信じたいが、人権を軽視する勢力である。タリバンという戻ってきた波が恐ろしい。