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今日の筆洗

2021年08月07日 | Weblog
受け継がれてきた精神であろう。沖縄空手会館の一角に昔の達人たちの言葉が記されているのを見たことがある。「空手に先手なし」「長年修行して、体得した空手道の技が、生涯を通して無駄になれば、空手修行の目的が達せられたと心得よ」「人に打たれず 人を打たず」▼鍛えよ、しかし自ら仕掛けるな。そんな倫理観の色濃い格闘技や武術もあまりないのではないか。平和を願う沖縄の人の心に、どこかつながっているようでもある。近代的なスポーツの中に入ると、異色の競技にも思える空手だ▼沖縄ではぐくまれたその精神が、ついに世界に披露される時を迎えたようで、いつにない誇らしさを感じる。沖縄に源流を持つ空手は、東京五輪で初めて正式競技として実施されている▼形の喜友名諒(きゆなりょう)選手が昨日、沖縄県出身者で初めてという金メダルを獲得した。殺気を感じる突きや蹴りの中、打たずして、見えない敵をすくませるような目線の強さ。門外漢にも沖縄空手の伝統的な精神が重なったように感じられた▼空手は野球などと同様、次のパリ大会では採用されない。都市型スポーツといわれる競技の存在感が増す中、ブレイクダンスの実施が決まり、沖縄発祥の武道は、五輪から去ることになる▼いずれ大会を振り返る時があれば、少し異質な張り詰めたこの空気に、あの目力も思い出すことになるのかもしれない。