桂歌丸さんが冥土で五代目の三遊亭円楽さんとばったり出会う。「楽太(郎)はどうした」と聞かれる▼「楽さんはまだ、あっちだよ」。歌丸さんの言葉に五代目はしょんぼり。「だめだよ。あいつ連れてこなきゃ。あいつが私たちの面倒を見るのに一番、気が利いている」−▼何年か前、その人が語ったマクラを思い出して、しんみりする。「楽太郎」の六代目円楽さんが亡くなった。七十二歳。連れていくには早過ぎる▼今でこそ珍しくもないが、大卒の噺家(はなしか)のはしりだろう。大学の落語研究会時代先代の付き人アルバイトに選ばれた。面接で灰皿を手早く片付け、テーブルを拭く。要領が良く、気が回る。入門も先代の勧めだったというから才能を買われると同時によほど重宝されたのだろう。円楽襲名も先代の願いだった▼生意気を書けばフラ(生まれながらのおかしさ)とは正反対の抜け目のなさやインテリくささがかつては噺の邪魔と思えたが、それを逆手に「腹黒さ」で売った。なるほど腹黒さやしたたかさもまた落語には欠かせぬ人間くささであり、味となる。高価な皿をだまし取ろうとして逆に一杯食わされる、「猫の皿」が最後の高座。この人にはぴたりときた▼人脈を生かして落語会のプロデュースにも励んだ。落語界全体の発展を模索していたのだろう。「笑点」メンバーがまた、お一人。日曜が寂しくなる。