東京新聞寄居専売所

読んで納得!価格で満足!
家計の負担を減らしましょう!
1ヶ月月極2950円です!
アルバイト大募集中です!

今日の筆洗

2022年10月28日 | Weblog
フィリピン出身の女優ルビー・モレノさんは、一九九三年公開の映画『月はどっちに出ている』(崔洋一監督)で出稼ぎのフィリピン人ホステスを演じ、賞ももらった。八三年に十八歳で初めて来日した時は実際に、東京でホステスとして働いたと自伝『銀色の月』で明かしている▼実家の近所に、日本で働き三年で立派な家を建てた女性がいた。「日本は黄金の国のよう」と出稼ぎを勧められ、決心したという▼ダンサーになると聞かされて来日したのに実際は接客業。それでも故郷に仕送りし、両親や妹たちの生活を助けた▼円安で日本の「稼げる国」としての地位が揺らいでいるようだ。フィリピンのペソなど東南アジアの各通貨に対する円相場も下落傾向。各国から来た働き手は仕送りできる額が実質的に減り、落胆しているという▼日本経済新聞は米ドル換算の日本の賃金が過去十年で四割減り、非製造業の賃金水準はシンガポールなどに抜かれたと報じた。アジアの労働者の「日本離れ」も起きているらしい。円安は日本の国力全体への評価が低下したためという厳しい指摘もある▼ルビーさんはホステス時代に、なじみの日本人客から高価なプレゼントをもらい恐縮したという。贈られたのは、世界を驚かせたソニーのヘッドホンステレオ「ウォークマン」。日本が称賛を集めた時代が遠くなり、いささか切なくもある。