ザ・ドリフターズの『8時だヨ!全員集合』は昭和の人気番組。放送開始から間もなく、加藤茶さんが交通事故を起こし、出演を見合わせた▼コントでリーダーのいかりや長介さんからいびられながら、笑いをとる加藤さんの役柄を誰が代行するのか。反抗的な個性で売る荒井注さんやボーッとした高木ブーさんでは難しい。本来は「いかりやさんの言う通り」と追従する役柄の仲本工事さんに任すとファンの心をつかみ、加藤さんの復帰まで視聴率を維持した▼いかりやさんは「やりゃあ出来るヤツなんだ。めったなことではやる気になってくれなかったが」と生前、著書で評した。ほめ言葉と思える。我の強い者ばかりではチームは困る▼仲本さんの訃報に接した。荒井さんの後継志村けんさんら人気者の脇を固め、体操のコントでは美技を見せた▼映画でも活躍。文春オンラインの取材に俳優業を語っていた。「全体を見回して出演者の中で自分のできることを見つけるんですよ。(中略)相手が早口だったら遅く言うとか、違う言い回しをしたりしてね。そうやってるうちに、自分のポジションもおのずと決まってくるんです」。この人らしい流儀である▼荒井さん、いかりやさん、志村さんを追っての旅立ち。天上の宴(うたげ)で個性の強い二人を相手にしてきたリーダーは歓迎しているだろうが、見送る昭和生まれはやはり寂しい。