ファンタジアランドのアイデア

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中国の強みが弱点に変わりつつある アイデア広場 その903

2021-05-26 20:04:42 | 日記


1,中国の強みにビジネスチャンスを見出す
 2020年は、中国で水害の多い年でした。 10年前の2010年11月23日の新聞も、今年のように中国の干ばつや豪雨の報道がなされていました。中国では、2010年11月上旬の野菜18種類の平均卸売価格が、前年同期に比べ62.4%上昇していました。春に干ばつ、夏には豪雨が発生した年でした。農産物の今年の収穫は、全般的に不作になっています。中国の農産物価格高騰の背景には、世界的な天候不順もあります。地方政府も、市民の不満の高まりへの警戒感を強めていました。地方政府は、独自の対策を相次ぎ打ち出しているのです。広州市は、約13万3000人の低所得者を対象に1人あたり月30元を支給し始めたのです。この10年前の報道内容と現在の中国の経済状態を比べると、自然災害に対する抵抗力を増している地方の実情が浮かび上がってきます。今年の集中豪雨は、かなりの被害を中国にもたらしました。でも、2020年の「独身の日」のアリババ集団の取扱高が、7兆7000億円を記録しています。昨年の取扱高が、4兆2000億円ということを考慮すると、被害の後遺症が見えないようです。日本のビジネスの立場からすると、中国にはチャンスが多いということになります。中国の方は、海外旅行に多くの支出をしていました。それができなくなりました。海外旅行に使っていた資金を、ぜいたく品に使う傾向もあるようです。そこに、ビジネスチャンスがあるように見えます。
 世界は、コロナ過で経済が停滞しています。そんな中で、中国はいち早く回復の兆しを見せています。その一つの指標が、段ボール原紙消費の増加です。段ボールは、宅配などでは必要不可欠な物資になります。特に、中国で年間最大のネット通販セール「独身の日」の通販には、膨大な段ボールが使われます。中国の2020年1~8月の段ボール原紙輸入量は、約417万6千トンと前年同期の2.4倍になりました。中国の製紙会社は古紙不足に陥り、段ボール原紙の減産を余儀なくされているわけです。段ボール加工会社は、不足分を輸入で補おうとしています。日本の段ボール原紙各社には、この輸出が追い風となっているともいえます。中国の段ボールの需要が堅調なことは、経済が堅調であることある意味で示唆しています。
 日本の貿易相手は、中国が第1位です。中国における日本企業の拠点数は3万2千余りと、アメリカの4倍近い多さなのです。日米欧で新型コロナ感染が再拡大する中、先駆けて経済が回復する中国では、「独身の日」を見るまでもなく消費が急増しています。中国からの日本の商品や製品の引き合いも強まるため、一定規模の輸出は維持されています。経済と文化、そして政治外交を使い分ける中国に対して、日本は警戒心を緩められない状況もあります。日本企業も、中国との外交リスクや突然のルール変更には不安を持っています。中国国内に3万2千の拠点を持つ日本の企業は、中国進出に濃淡をつけた戦略を立てているようです。製造業は、技術の保護や政治外交リスクに十分備えた個別対応になります。情報通信や最先端技術に関連した企業は、中国国内に拠点の新設などは控えた方が無難といわれるようになりました。一方、政治と距離を置ける文化、芸能、スポーツなどは積極的に進出し、ビジネスチャンスを獲得しても良いという判断が多いようです。

2,中国のしたたかさと陰り
 2020年2月の中国の春節の時期に、日本は中国人観光客で溢れていました。この時に、日本人が台湾のように、武漢の奇妙な感染症によるクラスターに注意を払っていれば、その後の悲劇は最小限に抑えられていたかもしれません。中国人観光客は、争ってマスクを大量に購入して帰国していきました。その後も、日本はネット通販を通して中国にマスクを提供していったわけです。もし、2月の中旬からでも日本製マスクの輸出の規制やマスク転売の規制と、店頭での販売個数のルール化が行われていれば、日本のマスク不足狂想曲は起きなかったと言われています。この時期、中国は国策として世界中からマスクを輸入する体制を取っていました。新型コロナウイルスには、高性能マスクが必要だと気づいていたわけです。余談ですが、昨年のマスク狂想曲は、現在の時点で皆無です。マスクがあれば、安心感は国民にいきわたります。おそらく、ワクチン接種が国民にいきわたれば、現在の不安は一挙されていることでしょう。そんな安心の日が、高齢者のワクチン接種が終わる今年の8月ごろには日本中を覆っているかもしれません。
 新型コロナ対策での強みが、弱点に代わることもあります。ワクチン外交での中国の強みは、スピードでした。早い段階のワクチン提供は、途上国をはじめとする受益国が、中国以外のワクチンを得られない時期には大いに力を発揮しました。今後の中国の成否は、ワクチンの供給とそのスピード、各国の需要にかかってくると言われています。中国の製薬会社は、4月、新型コロナ向けワクチンの年間生産能力が20億回に達したと発表しています。中国は6月末までに、5億6千万人にワクチンを接種するという目標を掲げています。でも、不安な面も出てきています。ワクチン輸出では多くの国で、中国製ワクチンの配送の遅れや不足で接種が十分に行われていない実情が明らかになりつつあります。ワクチン接種で供給の大半が中国国内で消費されれば、ワクチン外交を縮小せざるを得なくなります。有利な状況にあるような中国ワクチン外交ですが、初期の優位性は失われつつあるという見かたも出ています。期待の大きさが、かえって足かせになることもあるようです。
 中国に遅れていたアメリカが、ここにきて国内での接種が進み、ワクチンの余剰分を輸出に回す姿勢に転じてきました。アメリカは、国産だけでなくイギリスアストラゼネカのワクチンなども確保しています。中国製のワクチンが、追加接種なしに変異ウイルスに有効かどうかも不明になっています。中国製ワクチンの有効性に対する疑念が深まれば、欧米の質の良いワクチンを求める世界的な傾向がさらに強まります。中国医薬集団も2021年中に、10億回規模への拡大を目指しています。でも、供給が遅れれば、中国の生産能力がさらに高まっても、中国製を欲しがる国がなくなるかもしれません。ワクチンを必要とする国にとっては、中国製の調達の必要がなくなるかもしれないということです。中国製ワクチンが、いままでのような影響力を行使できないかもしれない事態も想定されてきています。ワクチンの生産だけでなく、いかに早く国民に接種を終了するかが、現在の課題になっているのです。中国が単独で、世界の途上国に供給することは、事実上難しいことが明らかになりつつあります。

3,中国の弱点
 中国では2018年10月ごろから、経済の厳しさの到来を予感して、家計の倹約に心がける人々が増えてきています。この倹約の流れは、民間企業にも出てきています。中国では、国有企業が増強し民有企業が縮小する局面が現れはじめています。政府の支援を受ける国営企業は、依然として資金や資材の不安がない状態になっています。イノベーション能力増強の担い手として、国有企業は政策的優遇を受けてきました。以前、国営工場は原材料が割安な公定価格で仕入れた後、市場に横流ししたほうが儲かるとまで言われていました。この非効率的な国有企業の利権に、メスを入れる姿勢が現在の共産党には見られませんでした。でも、状況は変わりつつあるようです。中国経済が拡大するにつれて、成長に必要な資源やエネルギーの確保は切実になっています。無駄が、許されない情勢になってきているのです。
 中国が自給を目指したトウモロコシ輸入増の背景には、東北部の干ばつへの懸念がありました。懸念があっても、中国の穀物在庫は、大豆を除けば高水準で推移いています。中国のアフリカ豚コレラによる飼育頭数が減り、飼料用穀物の需要が減少していました。最近、豚の消費量が徐々に増え、需要が本格的に上昇するとの観測が出ています。経済成長に伴う食生活の質の向上も当面は続き、飼料用穀物などの需要は増加する見通しになっています。豚肉の供給が再度悪化すれば、政権批判に飛び火しかねません。米中対立やコロナの長期化、気候変動を念頭に、物資不足が政権批判を招かないように、慎重な対策を練っているようです。戦略物質の備蓄を進める一方、倹約令などを通じて穀物在庫の維持を図る姿勢を示しています。
 中国では、いわゆる戦略物質と言われる資源を備蓄する動きが活発化しています。電気自動車(EV)の普及に力を入れている場合、リチウムイオン電池に使用するコバルトは不可欠な物質になります。このコバルハトの備蓄を、2000トン程度増やす計画が提示されています。中国は、E Vの普及に力を入れています。でも、コバルトの主産地のコンゴは、新型コロナの影響で出荷が伸び悩んでいる状況です。でも、ここで一気に備蓄を増やし、生産を安定させる狙いのようです。コバルトだけでなく、肥料原料のカリウムの備蓄を進めています。肥料には、3つの原料があります。窒素とリン、そしてカリウムです。中国は、すでに窒素とリンを十分に自国生産ができます。ただ、カリウムは自国だけでは完全自給できないのです。窒素やリンに比べ、国内資源が不足するカリウムの備蓄を増やす政策をとっているわけです。化学肥料の備蓄についての法令は、カリウムの民間備蓄に補助金支給を盛り込むものです。世界的な気候変動を視野にいれており、自然災害時に配布するカリウム肥料の積み増しに努めているのです。

4,今後の流れ

 中国の弱点は、工業生産施設が深川などの海岸地域に集中していることです。アフリカからマラッカ海峡を通過し、南シナ海を通過するルートには多くのリスクが伴います。たとえば、石油の輸送がマラッカ海峡で止まれば、中国の工業地帯は大きな打撃を受けます。この弱点を補うために、ベンガル湾に面するミャンマーから中国への陸のルートが、経済通路として期待されています。ベンガル湾からミャンマーに陸揚げされたアフリカの資源は、鉄道を通して中国に運ぶことができます。中国はミャンマーを開発し、アフリカからの原油や鉱物資源を中国に運ぶ通路にしようとしています。ミャンマーから雲南を通過して、中国の内陸部に工業資源を送ることが一つの念願です。中国の内陸部の開発が、国内の経済格差の解消につながるからです。また、中国はミャンマーを通じて、自国の商品をアフリカに送ることも可能になります。このようなルートは、パキスタンにも建設されつつあります。中国にとってリスクは少ない方が、良いというわけです。
 先進国でも富の偏在が進み、一部の富裕層が多くの富を占有するようになりました。中国でも、富が中国共産党の有力者に集まっています。中国の16億円を超える富豪は3200人と言われ、そのうち2900人は共産党幹部の子弟となっているようです。この国では、違法でも何でも売れれば良いというルールが無数に存在していました。利益集団化した官僚や共産党支配層の存在は、腐敗や汚職の蔓延と深く結びついていたのです。企業は、儲かったら従業員に少し分けます。工場長が多めに取って、党の幹部に付け届けするという構図ができていたようです。膨大な汚職が発生したけど、みんながうまく分けあったので、あまり不平は出ませんでした。共産党の権限がある限り、市場経済から巨額の収入が共産党幹部に入っていたのです。経済が順調なときには、ある面で分かりやすい仕組みでした。でも、経済成長が少しずつ低下してくると、分配が不公平に感じるようになります。下層の人々への分配が減ってきました。すると、収入の減少や環境破壊、そして汚職腐敗などが表立ってきます。これらを背景として、市民の不満が増大しているように見えます。
 国際政治の本質は、富と資源の分捕り合戦ともいわれています。デマや捏造の情報を流し、自国に有利なシステムを作り、富が自国に流れるようにする仕組みの構築に、大国はしのぎを削っています。中国の人口ボーナスがなくなり、富の分配が今までのように贅沢にはいかなくなります。今後は中国内部から、政治的にも社会的にも変化を余儀なくされてきます。このような事実を的確に把握しながら、中国を理解することになります。中国で起きる事件は、確度の高い情報を基に観察する仕組みが求められます。感情論を排した判断を積み重ねなければならないようです。