ファンタジアランドのアイデア

ファンタジアランドは、虚偽の世界です。この国のお話をしますが、真実だとは考えないでください。

本屋さんと図書館の協力関係が地域の文化水準を高める アイデア広場 その1322

2023-11-08 17:38:38 | 日記


 幼児教育の重要性が、改めて評価される時代になっています。良い幼児教育が、長期にわたって効果があることを証明した研究が数多く報告されています。特に、幼児教育は、計算などの認知能力だけでなく、非認知能力の重要性が指摘されています。おさらいになりますが、「認知能力」とは一般的には知能検査で測定できる能力のことを言い、「非認知能力」とは主に意欲、自信、忍耐、自立、自制、協調、共感など心の能力のことを言います。忍耐、協調、意欲、自制といった非認知能力が、社会的な成功に繋がるというデータが蓄積されてきています。非認知能力を高める教育を受けた子ども達は、学力検査の成績が良く、学歴が高く、収入が多いという報告が目につくようになりました。この非認知能力を一定程度持つグループは、一定の社会的地位を持ち、所得が多く、持ち家率が高く、健康意識が高い人間に成長していたということです。非認知能力の高い子どもを支援することへの投資が、租税負担能力を高め、健康状態を向上させ、社会保障費の軽減を実現させるという発想が生まれます。
 諸外国での良い幼児教育の評価は、非認知能力への効果は持続するという点で一致しているようです。1970年代半ばに、ニュージーランドで生まれた子ども約1000人を追跡調査した研究があります。この国でも、幼児期に自制心が高いと判定された子どもが大人になった後、所得や健康も安定していると報告されています。幼児期に自制心が高いと判定された子どもは、大人になった後、社会生活面でも安定しているのです。アメリカ保健福祉省の下に、全アメリカ保育質保証センターが主導する保育の質評価向上システムがあります。この評価向上システムは、幼児教育の質を評価し、保護者に情報を開示しています。この評価向上システムは、評価結果に基づく指導・助言・技術支援や財政的支援を行うことになっています。先進国の流れを見ると、教育の「質」を高める投資に重点が置かれるようになっています。そして、高い認知能力だけでなく、高い非認知能力も共に伸ばすことを志向していのです。
 幼児の読書活動は、非認知能力を高めるということが知られています。そのモデルのような県が、岡山県になります。岡山県の貸し出し数は140万冊で、日本一です。貸し出した本のうち、35万冊は児童書になっています。この地域の図書館は、児童図書が充実しています。図書館では、週末などの読み聞かせ会も盛んに行われています。このような活動を行う中で、子ども達の非認知能力を小さいうちから養われていくことでしょう。図書館にお世話になっている私も、岡山県の図書館に感心してしまします。実は、もう一つ感心した図書館があります。それは、山形県の酒田市立中央図館の素晴らしいサービスでした。駅前の立派な図書館に入ると、利用についての説明の掲示がありました。そこには、「借りたい本をゆっくり選びたい時に、託児経験の豊かな保育者がお子さんをお預かりします」と書いてあったのです。これには、びっくりするやら感心するやら、図書館もここまで進んだのかという感想を持ちました。日本の場合、女性は出産すると、所得がM字形になる不利があります。その不利を少しでも補うためには、新しい働き方を模索する女性が増えています。でも、この活動には、いろいろな制約が付きまといます。この図書館は、その模索する資料と時間を用意してあるのです。これからの図書館は、地域の知性を高める本の準備だけでなく、知性を高め易くする支援も行うことが求められるようです。
 もう一つは、この図書館の運営が、民間に任されていることでした。民間が図書館を運営すると、困った問題が起きると言われています。図書館は無料ですので、人々が利用すればするほど図書員の方の負担や経費が増えるのです。新しい本の購入にも出費がかさみます。図書館を運営する人々の負担も増え、結果としてサービスが低下するのではないかという問題です。この問題は、世界の民間水道ビジネスでは、顕著に現れています。でも、図書館に多くの方が来るようになれば、ビジネスチャンスも生まれることも事実です。そのモデルとして、岩手県紫波町の地域振興が有名です。10年間以上も放置されていた町有地を町の有志が借り受けて、図書館を中心に年間80万人以上の集客力を誇るビジネス地域に成長させています。信長が行った楽市楽座は、人々を集め市場を作り出す仕組みでした。人が集まれば、大きな市場になる可能性が出てきます。図書館で経費のマイナスを計上しても、飲食や農産物の販売でプラスを狙うことになります。経費だけでなく、図書館の利用による教養や知識が高まりには、一定の経費が必要です。その経費を、図書館と集客力のある市場の相乗効果で、黒字にしていくわけです。もっとも、このようなビジネスと成功させるには、有能なリーダーの存在が不可欠です。地域の人達が、何を望んでいるかを鋭敏に捉える人材の存在が重要になります。人を集める工夫、集めた人にどんな商品やサービスを提供するかなどの工夫する過程を経て、営業利益を高めていくことが求められます。その意味で、地域振興のリーダーは、想像以上に重要な存在になります。税金の投入は最小限にすることは当然です。一方で、リーダーが動きやすいように規制を弾力的にするとか、リーダーにはそれにふさわしい待遇を用意することになります。お金だけでなく、リーダーのモチベーションを高めるためには、地域のバックアップが不可欠です。現在ある地域のインフラを、有効活用できるリーダーの存在が不可欠になるようです。
 余談になりますが、いま本をネットで買う人が、非常に増えています。書店にはほとんど行かず、アマゾンで本を購入するという人も少なくありません。アマゾンのべストセラーは、全世界の人が見ていますから世界の集合知という考え方もあります。でも、みんなと同じ情報や知識しかなければ、みんなと同じ判断を下し行動を起こすことになりかねません。自分の課題を解決する場合、その課題解決に関与する内容をインプットすることになります。課題に向き合っている人たちは、一般の人と違う判断をするケースが増えます。行動を起こすためには、人とは違う判断材料が必要です。課題解決を求める向上心や好奇心がある限り、本屋に行けば、読みたい本を見つける可能性が高くなります。この目的や課題解決、そして好奇心の観点から、通販による本の購入は書店巡りに比べ、費用対効果が落ちるようです。読書をすると自分のなかに引き出しがたくさんできて、問題意識が生まれます。書店において、本の目次に目を通し、大枠を把握し、自分の知識の引出しの中にある問題意識と運よく本の内容がマッチングした時に、楽しさが生まれます。そんな楽しみを与える本屋さんは、貴重な場所になります。
 この本屋さんが、日本では地方を中心に激減しつつあるのです。このような状況を憂いて、新しい試みをする本屋さんも現れました。東京郊外の「街の本屋さん」が、公共図書館の本を貸し出すサービスを始めたのです。図書館と本屋さんの垣根を越えた連携強化が、街の本屋さんから始まっているのです。久美堂は、町田市立図書館全8館の書籍を対象に、店頭で受け渡しするサービスを始めました。この久美堂は1945年創業で、町田市内を中心に6店舗を展関する地域密着型の書店になります。受取場所に同店を指定すると、約3日後から、店内レジカウンターで借りられます。利用者は事前にネットなどで予約し、返却は専用ポストに入れるだけになります。手に取って見ることができる本屋さんの強みを生かしたうえで、全国でも珍しい「書店での公共図書館本の受け渡し」を実現したわけです。紙の出版市場が縮小する中、地域の読書文化維持への危機感がご主人にはありました。そして、「地域の読書文化を守りたい」との思いが強かったようです。
 この新しい試みは、順調に流れているようです。今年6月の貸し出し利用者数は、約200人、8月は約300人と順調に増加しています。このサービス導入は、市民の皆さんへの利便性の向上だけでなく、書店経営にもメリットが生じています。久美堂はでは6月以降、学習参考書や児童書などの売り上げが前年同月比1~ 2割増えています。図書館では扱わない小学生の勉強ドリルを、「ついで買い」している親子が増えているのです。子どもが何度でも読みたがる名作の読み物を、「ついで買い」しているようです。本屋さんと図書館には「複本問題」があり、良好な関係がなかなか築かれませんでした。「複本問題」は、図書館が新刊を無料での貸しだすために、書籍販売の妨げになるというものです。この問題も、人が多く集まることで、解決の道が見えてくるようです。図書館で予約待ちが続く人気作家の本を、本屋さんで紹介することで、待てずに買ってしまうお客さんもいるとのことです。人が集まれば、そこにビジネスチャンスが潜んでいるものです。それを素早くキャッチするのも、一つの才覚になります。
 最後になりますが、ハンバーガーは、単体だけでは利益が出ないとされます。利益率の高い商品とセットで販売をして利益をだすという仕組みでお店の運営をしています。これはハンバーガーだけでなく、飲食店やスーパーなどで行われている手法です。いくつかの分野は赤字だが、他の分野がそれを補うという仕組みです。食事を規則的に取り、運動をし、本を読んだり、趣味を持っている人は、健康寿命が長いことが報告されています。多様な活動を適度に行うことは、望ましいことです。ある自治体では、家に閉じこもる高齢者が認知症になる割合が高いという数字を基に、積極的に外出を奨励しています。図書館に行くとポイント1、公民館の学習活動に参加するとポイント2、温水プールに行くとポイント3というようにポイント制を導入しているのです。ポイントが100になると、図書券2000円を配付するそうです。大変な出費のように見えますが、医療費+介護費と図書券の費用対効果は、図書券に軍配が上がるそうです。お金をかけずに、地域の人々の健康水準を高めたいと誰しも願っています。この願いをかなえる一つの仕組みが、本屋さんと図書館のコラボにあるようです。この関係が、地域の知的水準を高め、医療費や介護費を節約し、地域の活性化を促すことになるかもしれません。