ファンタジアランドのアイデア

ファンタジアランドは、虚偽の世界です。この国のお話をしますが、真実だとは考えないでください。

理数系の女子人材を育成する仕掛け アイデア広場 その1388

2024-05-05 17:30:21 | 日記


 日本政府は、大学を中心に毎年理数系の人材を26万人ずつ育成していく方向性を打ち出しました。AIの活用が進むデータ社会を勝ち抜くには、「第1に数学、第2に数学、そして第3に数学だ」ということになります。当然、文部科学省も理系分野を専攻する学生を増やす施策を進めています。特に、女性の能力を生かしたいとの意向があります。世界の研究現場では、多くの女性が活躍しています。チームワークやデジタルスキルでは、男性研究者を上回るとの評価もあります。文科省によると、女性の理工系分野の割合は7%にとどまっています。この数字は、経済協力開発機構(OECD) 平均の 15%を下回り、OECD諸国でも非常に低いのです。この他国とのギャップには、「女性は理系に向いていない」といった誤った認識が日本では根強いとされています。この心理的なハードルがあるため、女性の能力が開花していないとの指摘もされるようになりました。もっとも、この心理的障壁が取り除けられれば、女性にとっても、日本にとってもハッピーなことになります。今回は、このハッピー実現の道筋を考えてみました。
 経済協力開発機構(OECD) は、2022年に実施した学習到達度調査(PISA)の結果を公表しました。このPISAには、世界81カ国・地域の15歳69万人が参加しました。日本からは、全国の高校など約180校の1年生約6000人が参加しています。PISAは、15歳を対象に義務教育で学んだ知識や技能の実生活での実用力をみるものです。その結果、数学的応用力が5位(前回6位)になりました。科学的応用力が2位(前回5位)という成績で、世界トップクラスを維持していることになります。日本の数学的リテラシーの平均得点は536点で、科学的リテラシーの平均得点は547点になります。OECD平均は、平均得点の長期トレンドが下降しています。一方、日本は高水準で安定している傾向が読み取れる結果でした。
 PISAの数学の成績と国の経済成長や生産性は、正の相関性があるとされてきました。高校1年生まで日本の高校生は、数学リテラシーにおいてOECD加盟国でトップクラスにあります。でも、高校2~3年で文系選択の生徒が数学の授業を減らすために、高校の高学年から大学に進むにつれて、数学リテラシーが衰退していく実情があります。日本の子ども達は、高校の1年までは世界的な数学の頭脳を持っています。でも、生かし切れていないのです。この頭脳を生かせば、経済成長や生産性を高める可能性を持っているわけです。
理数系の領域や空間認知能力において、課題遂行能力が男女で異なると言われています。そこで、ある実験が行われました。この実験は、数学の成績が同等な男性と女性を被験者にして、数学のテストを行ったのです。「テストには性差がない」と教示する条件と、一般的な教示をする条件を設定しました。その結果は、驚くべきものでした。「テストには性差がない」と教示した条件では、男女の成績に差はみられませんでした。一方、性差があると教示をした条件では、女性のほうの成績が低くなっていたのです。数学のテストにおいて、一般的な男女差の教示を与えるだけで、女性の受験者がステレオタイプの脅威が生じてしまうのです。この性差の実験は、女性の数学能力に対するステレオタイプの脅威生じさせる現象を示しました。一方、この実験は、男女の差を低減させるヒントが隠されていました。一般に、女性の数学不安については、男子よりも女子の方に高いことが示されています。小学校5年と6年生の調査では、女子は男子よりも、算数不安が高いことを示していました。さらに、女子は男子よりも算数の授業中にいやだと感じる場面が多いことも指摘されています。この不安や嫌悪の感情が、個人やクラス、そして集団や社会がステレオタイプとして備えてしまうことが日本にはあるようです。
 ステレオタイプに関しては、偏見やスティグマを形成することに関する実験があります。白人被験者に閾下(サプリミナル)で、黒人(攻撃的という映像や言葉)に関連する刺激を見せるという実験を行いました。ここでは、投影時間が数ミリ秒の短い時間で、画面に攻撃的文字や絵が映し出されます。何を見たかが判断できなくても、その言葉や映像が意識下で影響していくことが明らかになりました。投影時間が数ミリ秒といった短い時間では、人はそれが何であるのかは認識できません。にもかかわらず、攻撃性に関する内容の文字を閾下で見た被験者が、後に提示された人物を攻撃的と判断していくのです。蛇足ですが、スティグマは「負の熔印」とよばれています。スティグマがあると、勉強の機会を奪われるという不快な経験をすることがあります。否定的な社会的アイデンティティをもらす属性は、スティグマとよばれているわけです。女性には、数学が苦手というステレオタイプが形成され、それが偏見にまでなり、その苦手ということを女性が受け入れ、スティグマにまでなることがあります。
 教師が「この子はできない」と否定的な仮説をもつと、子どもの学業が伸びないことが知られています。この逆は、ピグマリン効果として知られています。ある権威者から、「この子は伸びますよ」とある教師に告げたのです。この教師が、その言葉を信じて、子どもを見ているとその子供は実際に伸びたのです。このピグマリオン効果は、教師の期待が子どもの成績を直接伸ばすものではありません。この魔法の現象は、教師が子どもの学習や活動対して、丁寧に応答することによって実現していたのです。教師が子どもの成長を信じ、期待することは、教師と子どもとのやりとりの量と質を変えるのです。低い社会的地位の子どもたちに対して教師が「この子はできない」と否定的な仮説をもつと、成績が低下する傾向があります。子どもが教師の予想どおり悪い成績をとってしまうと、誤って抱かれていた周囲からの否定的評価が本当の能力を反映したものになってしまうのです。本来は、性差や人種によって能力差がないにも関わらず、あたかも性差があるというステレオタイプが生まれます。負のステレオタイプやスティグマがあると「勉強ができないに違いない」などと友人や教師から否定的に扱われるようになります。この扱いは、個人だけでなく、集団にも波及します。集団に所属するためには、成員は共有されている規範を守る必要があります。集団の規範を守ない者は、最終的には仲間から排除されてしまいます。勉強しないことが規範となった場合、集団の成員は勉強を軽視するようになります。勉強しないことが規範となった場合、熱心に勉強することは適切とはみなされません。さらに、学業が自分の価値に関わらないと考えると、自己を高めるために勉強しようとしなくなります。「女性は数学が苦手」というステレオタイプや偏見に一致するような集団行動が、構造として本当に生まれることになります。
 負の局面があれば、その局面を改善しようとする人たちや組織があります。日本においても、女子大学が理工系学部を新設する動きを加速しています。文科省も、この動きを支援しています。現時点では、10の女子大学が支援対象になっています。女子大学に対する期待は、大きいものがあります。その一つに、大妻女子大学があります。大妻女子大学は、「学び働き続ける自立自存の女性の育成」を使命として掲げています。この大学は、経済と経営分野の専門性も併せ持つ文理融合の人材を育成しています。ここに加えて、2025年4月にデータサイエンス学部(仮称)を開設する予定です。データサイエンス学部では、基礎から応用まで学ぶほか、プログラミングの習得を目指します。教員は、統計学や人工知能(AI)、そして、経済と経営などの知識が豊富な有識者を招へいします。データサイエンス学部の定員は、90人で、教員は14人と少人数教育に取り組みます。大妻女子大学は、男女格差の解消につなげる突破口にもしたいとしているようです。
 最後になりますが、女子の中学生や高校生には、理系に進む場合に心理的なハードルがあるとされています。女性が自ら、「女性は、数学が苦手である」との先入観をもつことが問題になります。この苦手意識は、ある意味で、小学校、中学校、高校の授業の中で形成されてきたものです。幼少期から形成された文化的ステレオタイプを変化させることは、なかなか大変なことになります。大変なことですが、解決の仕組みがないわけではありません。性差がないという数学の実験で明らかなように、同じ能力であれば、同等の成績を収めることができます。でも、そこに負のステレオタイプが入ると成績が低下します。一般に、平等主義的価値観を持っている場合、負のステレオタイプ化が起きないとされています。この価値観を維持しながら、4つの要素を加味しながら学習を続けることが求められます。①小集団で協同的に相互依存させること。②生徒間の相互作用を頻繁にすること。③地位を対等にすること。④(教師が運営して)制度的支持を受けていることを意識させること。平等主義的な個人的信念で、時間や努力をすれば意識的にステレオタイプ化を回避できます。でも、制度的な支援があれば、よりスムーズに負のステレオタイプ化乗り越え、ピグマリオン効果が、多くの女子にいきわたる社会になるかもしれません。




従業員の家族から見た楽しい働き方改革  アイデア広場 その1387

2024-05-05 17:28:07 | 日記


 従業員の幸せを、重視する経営者が増えています。アメリカでも、幸福をモデルにした価値転換が進んでいます。働き方改革や健康経営の重要性が叫ばれる中、幸福経営に注目が集まっているわけです。幸福度と従業員の創造性や生産性、そして欠勤率や離職率の研究も進んでいます。幸せな従業員は、会社や仕事への愛着や没頭の傾向が高いという結果も出ています。彼らは不幸せな従業員よりも、創造性が3倍も高く、生産性が30%も高いのです。経済成長は緩やかでも、心の豊かさを保ち続ければ、創造性や生産性の高い会社経営ができるようです。最近は、幸福の核心に近づく追求も行われてきています。幸福は、財産がたくさんあるとか、地位が高いとかでは測れないことが常識になりつつあります。幸福の条件は、悩みのないこと、感情が穏やかなこと、心身が自然な状態であるというものです。一方、幸福の要素には、ポジティブや感謝の要素も含まれているという説もあります。幸福な人たちは、家族との人間関係を大事にし、それを推進力としている光景があります。近年、この家族を大事にする環境が、徐々に整いつつあるようです。その一つは、企業になります。さらに、学校においても、それを推進する機運が生まれてきています。もちろん、先進的地方自治体にも、その動きが見られます。今回は、新しい機運を眺めてみました。
 小売りやサービス業では、売上高減少の懸念から日曜や祝日を営業日とする企業が多くありました。これらは、当然のように日曜や祝日を営業日としてきました。でも、この営業形態は、子育て世帯には負担が大きいものでした。ここに来て、収入も大事だが、家族のきずなも大事だという人が増えてきています。いわゆるワークライフバランスを重視する人が、増えているのです。企業としても、今までのような営業形態を続けていくことに不安を感じるケースも出てきました。少子高齢化で、労働人口の減少は避けられない状況になっています。企業側も、人手不足の解消には従業員のライフスタイルに合わせた働き方を用意せざるをえない事情が生まれています。子育て社員を意識して、日曜祝日の休みを取り入れるなど、従業員のライフスタイルを充実させる環境づくりの支援を始めています。
 山形日産は、2022年度に新車販売を手掛ける3社で、毎月第1日曜日と第1月曜日を定休日にしました。一般に、日曜日はお客さんとの接触が多くなる曜日になります。でも、あえて、その日曜日を休みにしたのです。その理由は、もちろんあります。山形日産は離職がとまらず、2022年度までは社員数は減少傾向でした。家庭を持つ中堅クラスの整備士が、日曜休業の製造業に多数流出していたのです。日曜日に、休園とする保育園は多くあります。子育てする共働き世帯には、日曜出勤が負担となっていました。日曜日に、家族が全員そろってくつろぐことは、家族の絆を強くします。企業側も、人手不足の解消には従業員のライフスタイルに合わせた働き方を準備したようです。山形日産自動車などで構成する山形日産グループは、2024年度から祝日4日間を休業日にするようです。人手不足が深刻になるなか、営業日のあり方を変え、人材をつなぎ留める対策になります。従業員の家族から見れば、家族の癒しの時間が増えることになります。このような対策をとった結果、新車販売の売上高や営業利益はむしろ上昇するという嬉しい流れが出来ました。
 小売業やサービス業では、日曜日を定休日とすると、平日に働く購入希望者との接点が減る可能性があります。そのために、日曜出勤の企業も多くなります。そのような風潮の中で、三井不動産レジデンシャルは逆張りをしました。三井不動産は、オンラインで平日や土曜日に商談することで契約は減らないと見込んだのです。このような想定の元に、2021~22年度に7拠点で、日曜定休を試行しました。この7拠点では、オンライン商談の組み合わせを行ったわけです。テレワークやオンンライン商談の普及で、消費者の側も平日に時間をつくりやすくなっている状況が生まれていました。オンライン商談を組み合わせたことにより、契約実績は計画の80~130%の水準で推移したのです。2023年度が増加に転じたために、休業日をさらに増やすことにしました。三井不動産レジデンシャルは、2024年からマンションの販売拠点で日曜日に定休日を設けることにしました。さらに、日曜と月曜を店舗の定休日とする制度を導入し、実績を見ながら、全国へ拡大する計画のようです。
 家族への配慮は、企業だけなく学校においても見られるようになりつつあります。その現れは、ラーケーョンの導入に見られます。ラーケーションは、(学び)とバケーション(休暇)を組み合わせた造語になります。欠席扱いにならずに、学校を数日休める新制度のラーケーョンが、一部の地域で始まっています。小中学校や高等学校の一部で、欠席扱いにならず学校を数日休める新制度が始まっているのです。ラーケーションは、自宅で勉強しても良く、目的があれば自由に過ごすことができる制度です。この制度は学校を休んで、家族や友人とテーマパークに行っても良いというものです。愛知県や大分県別府市で、2023年度の2学期から導入され、始まっています。もっとも、わずか年3日まで休むことが可能になったというものです。導入する自治体は、ラーケーションによる学習の遅れは、家庭学習で補うことを基本としています。世界の流れは、子ども達の自主性を重視する方向になりつつあります。子どもが、自己調整しながら学習を進めていくことは大切なことです。休む日を自分で決めることは、主体的に自分の学習スケジューレを組み立てる訓練にもなります。学校を卒業し、働き始めてからも、リスキリングなどの学び直しが求められる時代になっています。社会人が自ら進んで、学び続ける状態を実現するためには、小さい頃からの訓練も必要です。ラーケーションは、この社会人に「主体的な学び」が求められているのに呼応した動きなのかもしれません。
 ラーケーションの導入は、学校の問題だけではありません。このラーケーションを導入する自治体の問題意識にあるのは、日本の有給休暇取得率の少なさになります。日本の有給休暇取得率は平均60%であり、この数字はドイツの93%に比べ非常に低いのです。土曜日に働いている人は45%、日曜日は30%になります。この45%と30%存在は、親子の休みがなかなか合わない原因になっています。このすれ違いが、「どうせ子どもは休めないから」と有給を取らない人が増える悪循環を生み出しています。ラーケーションで子どもの休日を事前に計画できれば、親が子どもに合わせて休みを取るができます。この意味で、ラーケーションは経済的にも効果を生み出す可能性があるのです。観光需要が平日に分散すれば、観光地の飲食店やホテルはビジネスチャンスになります。観光需要の分散にもつながるため、地域経済の活性化にも貢献できます。平日は旅行料金や宿泊費が安くなります。安くなれば、ファミリー層の旅の機会が増えます。ラーケーションを導入している愛知県は、平日や閑散期の旅行者向けに宿泊費の割引など特典を付与するキャンペーンを行う計画のようです。新しい制度を多角的に利用する工夫は、これからの市町村に求められ才覚になります。
 幸せや幸福への言及は、現在いろいろなされるようになりました。それらは千差万別で、一定の説があるわけではありません。でも、大枠はある程度分かるようになりました。幸福の条件には、悩みのないこと、感情が穏やかなこと、心身が自然な状態であることが含まれているようです。親が変な顔をしてみせると、赤ちゃんが自然にまねをする光景はほほえましいものです。親がほほ笑むと、赤ちゃんも微笑み返します。微笑みは、お互いに伝染するものです。幸福には、このように広がる性質もあるようです。感謝を常に忘れない人たちは、うつ的になりにくく、不安や孤独も感じにくいといいます。人間というのは、理性的に判断をするものだと信じられてきました。でも、一人の人間の理性だけでは、幸福を捕まえることをできないようです。幸福だと感じている人たちは、友人、同僚、家族との人間関係を大事にしており、それを推進力としているようです。これらの推進力を働く場に仕掛けておけば、楽しい職場になります。その推進力一つに、家族が一緒に休める日の存在があるように思えます。