国の借金が1000兆円で、地方自治体の借金が200兆円となっています。その自治体によっては、その借金が返せなくなっている市町村もあります。もちろん、借金を返すべく努力をしている市町村もあります。そんな努力をしている神奈川県北部にある相模原市を事例にとって借金返済の解決策を考えてみました。相模原市は、人口が72.5万人の政令指定都市になります。この相模原市は、財政の急速な悪化に見舞われていました。そのために、持続可能な財政を実現するための改革プランが寝られていたのです。まず、既存の公共施設を徹底的に見直をします。27施設について、廃止や民間移管を検討しました。1991年開設で、五輪選手らを輩出した市営アイススケート場も、2027年3月末に廃止する方針を立てています。スケート場の維持費に年間1億5000万円、改修には10億円規模の支出が必要になります。その費用の工面が、できないのです。また、築60年を超える市体育館は、2025年3月末に廃止することになりました。パスポートセンターも、2カ所から1カ所に集約する検討を進めています。さらに、相模原市は、各種団体への補助金も66件を見直してきました。敬老祝金の廃止や、はり・きゅう・マッサージ施術料の助成の縮小や見直しも行っています。イベントを廃止し、消耗品など物件費の削減も年間数万円単位まで細やかに進めてきています。相模原市は、2024年度以降も,老朽化する施設を相次ぎ廃止する方針です。社会保障給付にもメスを入れ、人口減少社会を見据えた歳出削減を継続することになるようです。当然、市民の方は、今まで享受していたサービスを受けられなくなることも多くなってきました。
相模原市財の政危機は、7年間累計で最大800億円超の歳出超過に陥るとされています相2020年の長期財政収支では、2021~2027年度に累計816億円の歳出超過と試算されています。相模原市は、行財政構造改革プラン(2021~27年度)の第2期案をこのほど公表しています。長期財政収支を見直すと、2024~2027年度の歳出超過額の累計は280億円になります。これに対して改革プランでは、4年間の歳出超過額280億円を財政調整基金も活用し、160億円(年間40億円)に抑えようとしています。改革プラン策定前の2019年度では、経常収支比率が99.8%になっていました。この経常収支は、地方税などの経常一般財源のうち人件費などの経常経費に充当されるものです。経常収支比率は、100%に近いほど独自政策や臨時的な支出に回せる余力がないことを示しています。相模原市では2019年度以前において、新しい施策に使えるお金がほとんどなく財政が硬直化していたわけです。でも、改革プランを実行する中で、財政調整基金は2022年度末で208億円と急回復し、経常収支比率も96.9%まで改善したのです。この財政調整基金は、借金の反対の貯金にあたるものです。相模原市の財政調整基金の残高は、2019年度末で68億円とピーク時のほぼ半分に減っていました。68億円が、208億円に急回復したということになります。
税金の少ない自治体は予算が少なくなり、各種の文化施設の経費が削られていきます。多く公園や運動施設、図書館などの文化施設の経費も削減されています。図書館などの施設の運営費も、縮小されていく自治体の実情もあります。でも、節約だけでは、不満ということで、稼ぐ仕組みを作る市町村もあります。このモデルとして、岩手県紫波町の地域振興が有名です。10年間以上も放置されていた町有地を町の有志が借り受けて、図書館を中心に年間80万人以上の集客力を誇るビジネス地域に成長させています。このプロジェクトの素晴らしさは、使われていない町有地を有料で借り受けて、考えられないようなビジネス成功をもたらしたことです。紫波町は人口が減少しているにもかかわらず、地方税は増えているのです。町としての生産力が向上していることを示しています。税金が増えれば、行政が市民に行えるサービスの質は向上します。予算の抑制よりも、予算が豊かな方がより良い行政が可能になります。そんな地方創生を実現していきたいものです。
相模原市に戻ります。この市は、2020年度当初予算で新規事業を原則「凍結」しました。2021年度もほとんど新規事業を実施しない緊縮型の予算編成をおこなったのです。財政危機を前に、徹底した歳出の見直しを進めてきたわけです。もっとも、歳出の削減だけでは、市民へのサービスは低下します。限られた財政の中で、民間の力を利用しつつ街の魅力を高める施策を打ち出すことも行いました。歳出を見直す一方で、将来の人口増と税源確保として街づくり事業に力を入れています。相模原市は、市民の意見公募を経て、2024年3月の新しいプランの策定を目指しています。その一つに、民間の活力を用いる方法があるようです。市長が「市産業の起爆剤にしたい」と期待を寄せるのが、整備推進事業になるようです。相模原市は、緑区、中央区、南区の3区で構成されています。この南区の新磯野地区に工業団地などを造成する土地区画整理事業を再開することもあるようです。さらに、相談支援窓口の拡充や福祉人材の確保を実施し、給付型から支援環境整備に重点を移す構想もあります。行政の支出を抑え、民間や市民の力を利用する仕組みを構築しているようです。
民間の立場から見ると、利用されない公的施設は宝の山といえます。アメリカの貧乏都市の代表だったデトロイトが、最近勢いを増してきています。都市公園を市民に無償で管理運営を任せるシステムを取り入れるのです。任された市民は公園でホットドックを販売する起業家になりました。デトロイト市は、公園での販売権を与える代償として、公園の管理と清掃を行わせています。市は職員の人件費が節約でき、ホットドッグ屋さんは販売で利益を得ます。眠っていた公共施設が、利益を生み出すのです。日本でも、市営や県営のスポーツ施設、そして公的不動産を民間の企業に貸し出す発想が出てきます。地方自治体も、経営的視点を持たなければ破産する時代に入っています。自治体の財政の健全化こそが、住民の生活や健康を守ることになります。税金を使わずに、有効に使われていない土地や施設を、地域の経済活動の活性化に使うのです。もちろん、払い下げるのはなく、利用権を付与するという形になるかもしれません。
余談ですが、東日本大震災の発生から10年以上もが過ぎて、被災地の復興は進んだように見えます。でも、建物の復興は進んでも、人口減少進む地域が増えているのです。津波の被害を受けた沿岸部の住民は、安全を求めて新たに作られた高台の住居に集団移転しました。現在、その高台の集落が、限界集落になっている所も増えています。安全な高台に、住居を建てたわけです。でも、将来の存続が危ぶまれる限界集落になりつつあるのです。この高台を整地し、移転するためには多くの税金を投入されました。ちなみに、65歳以上の高齢者が、人口に占める割合が50%を超えた集落を「限界集落」といいます。この限界集落が、日本に2万以上になっています。少し前までの報告書では、8000か所と言われていたものが、現在は2万ヵ所を越しています。一つの事例として、岩手県釜石市の室浜地区は、住民39人のうち24人の6割強を65歳以上が占めています。町内の草刈りや神社の管理も行き届かず、生活を続けていけるか不安だと話す方も多いのです。
最後になりますが、被災地の復興は進んだのですが、人口減少は急速に進み、多くの自治体では財政の悪化が懸念されています。宮城県石巻市は、複合文化施設の維持管理に年間約3億円を見込んでいます。他にも、観光物産交流施設など、復興事業で整備した施設が早くも重荷になりつつあるのです。石巻市の貯金は、2019年度末の147億9千万円が2023年度末には30億7千万円まで急滅すると心配されています。高齢化する地域や限界集落の社会保障費は膨れあがり、自治体財政が厳しさを増していく状況が続いています。もちろん、安全は大切です。でも、多額の税金を投入して得た安全な高台から、人は去っていく現象もあります。この時の対策としては、あえて津波の来る地域に家を建てても、柔軟に退避する人的対策に力点を置いたほうが、良かったのかもしれないという思いが生まれました。
追伸、
この文章を書いている令和6年1月1日に能登地震が発生しました。被災された方には、これからの寒い季節を乗り切ることは大変ですが頑張ってほしいものです。日本は災害の多い国です。神戸の震災でも、東日本大震災でも、熊本地震でも多くの人々が、苦労をされています。地震だけでなく、台風による水害も毎年起きています。そこで災害の過ごし方も、いろいろな事例で紹介されてきました。ぜひ、今回の災害を無事に乗り越えてほしいと思います。福島に住むものとしては、災害の時の嫌な思いも経験しています。たとえば、地震で不安な状態の中で、悪質な業者がやってきます。「お宅の屋根に異常があります」と、言葉巧みに不安を煽りたてます。修理の契約を取り、いい加減な修理で高額の修理費を取っていくケースもありました。災害時は、誰もが不安になります。建築作業をする人も修理作業に従事する人も、不足する状況が常態化します。資材も高騰します。そんな中で、冷静な判断が求められます。ある程度、不便に耐えて、様子を見ることも災害時の心構えになるのかもしれません。