ファンタジアランドのアイデア

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人生100年が人生120年になるかもしれません  アイデア広場 その1345

2024-01-17 17:36:53 | 日記


 今まで人々は、老化は誰にでもやってくる仕方のないものという認識でした。この認識に、変化が生じつつあります。老化は治すことのできない自然の流れという認識から、治すことが出来るというコペルニクス的転換が起きているのです。長寿遺伝子は、噛乳類など多くの動物に備わっていることが分かってきました。長寿遺伝子が、老化や寿命の制御に重要な役割を果たすことが分かってきたわけです。不老長寿への注目は、2000年にネイチャー誌に発表された「サーチュイン遺伝子」になります。それ以降、サーチュインを活性化することで、老化が抑制されるという研究が動物実験で多数報告されるようになりました。サーチュインの抑制効果を高めることが、人の臨床おいても多く進められているのです。古今東西から人類が望んできた「不老長寿」の研究は、この10年で一気に進んでいます。
 この不老長寿の分野の研究では、日本も大きな貢献をしています。オートファジーは、大隅良典博士がノーベル生理・医学賞を受賞したテーマになります。「オートファジー」は、細胞が自らの一部を分解する作用(自食作用)のことです。このオートファジーは、その細胞のリサイクル機能が、体全体の若返りに使えると期待を集めているわけです。Retro社は、このオートフアジーの機能を活用した老化の治療薬に取り組んでいます。ある方が、この治療を受けてきました。不老長寿テック分野のスタートアップが運営する「長寿病院」で検査を受けてきたのです。そこでは、ホルモン、甲状腺、血糖などの詳細な血液検査や骨密度検査などをします。それらの各種検査から、客観的な老化の状態の判定をします。判定結果から、ライフスタイルや心理的な主観的な老化に関しての認識の判定をしてくれます。実際の年齢とは別に、「老化時計」と呼ばれる老化の進行度の判定結果を数値として示してくれるわけです。この治療を受けた方は、「老化時計」の理解から、自分の老化というものについて考えさせられたと述べています。Retro社が取り組むのは、「Longevity」というものです。「Longevity」は、日本語に訳すと「不老長寿」の分野になります。Longevityが実現していくと、健康なまま80歳、90歳まで働ける時代がくる可能性も出てきます。老化自体が再定義され、人生100年から人生120年時代に移行するかもしれないというわけです。
 苦しみや悲しみは、発熱と下痢と同じように、人類の遺伝子の設計図による適応システムを作り上げました。人はウイルスなどの病原体に感染したとき、発熱したり下痢をしたりします。発熱は、病原体から人間を守る免疫作用の現われです。下痢は、腸内に増えた病原菌を体外に排出する作用になります。人間の行う発熱や下痢という症状は、遺伝子の設計図による適応システムになります。このシステムは、高齢になるにしたがって低下するとされています。でも、動物界には高齢になるにつれて元気になる種もいることが分かってきました。また、人の繁殖の仕方は、生物学的には少産保護戦略とよばれています。人は少ない子どもをもうけ、子ども一個体ずつの世話に大きなエネルギーを費やしています。人間の遺伝子は、適応戦略が子孫にうまく伝わっていくように設計されていたのです。この遺伝子が、親の愛情というエネルギーを通して、子孫の生存の可能性を高めきたわけです。人が深い悲しみや苦しみに耐えられない場合、押しつぶされてしまいます。脳には、悲しみに打ちひしがれた心理状態が切れ目なしに続くことを、防ぐ仕組みが備わっています。涙は、感情の高揚にともなって起こる体内のストレス状態を緩和する働きがあります。人の苦しみや悲しみのシステムは、人類の生存や繁殖に有利な結果を生み出していることがわかります。遺伝子の設計によって生み出される苦しみや悲しみは、子孫を増やすことにプラスに働くということになっているわけです。この子孫を残すために大きなエネルギーを使うという現象にも、疑義が出始めています。
 長寿のヒントは、アメリカのアパッチ湖にありました。アパッチ湖で釣り上げたスモールマウス・バッファローフィッシュ、ビッグマウス・バッファローフィッシュ、ブラック・バッファローフィッシュの3種いずれも、100歳以上の個体が確認されました。この魚は、ほんの数年前まで、20代半ばまでしか生きられないと考えられていました。でも、アパッチ湖のバッファローフィッシュの90%以上が80歳を超えていることが判明したのです。この研究では、2018年から2023年にかけてバッファローフィッシュを釣り上げました。研究チームは人道的に安楽死させた23匹から、耳石を取り出して分析し、魚の年齢を推定したわけです。耳石は、魚が水中で振動を開いたり感じたりするための構造物になります。耳石は、炭酸カルシウムの新しい層が定期的に形成され、木の年輪のように読み取れます。すると、ビッグマウス・バッファローフィッシュは112歳まで生きる可能性があると判明したのです。砂漠にあるアパッチ湖でも、これらの淡水魚が100年以上も生きることができることがわかりました。この研究が、2023年10月20日付で学術誌「Scientific Reports」に発表されたわけです。さらに、カナダのサスカチワン州で127歳のビッグマウス・バッファローフィッシュも見つかっています。蛇足ですが、100歳を超える種が3つもいる属は、知られている限り、海水魚のメバル属のみになります。
 ソルト川の水系には、アパッチ湖をはじめいくつかの湖に、商業漁業を定着させるという米漁業局の計画の一環としてバッファローフィッシュなどが放流されました。約400匹のバッファローフィッシュが、鉄道でアリゾナ州に持ち込まれた。1918年、アリゾナ州のダム湖であるルーズベルト湖に、商業漁業を定着させたのです。一般に、新しい生息環境に放つことは、あまり長生きしないと思われていました。アパッチ湖のバッファローフィッシュは、1918年から生き続ける「よそ者」になります。でも、今回の研究結果は、ソルト川の水系ではまだ、1918年の最初に持ち込まれた魚が生き続けているのです。北米の広い範囲に生息するスモールマウス・バッファローフィッシュが、100年以上生きています。バッファローフィッシュは、約1万2000種におよぶ真骨類の淡水魚として、知られている限り、最も長生きする種になります。このバッファローフィッシュは、先入観にとらわれない動物です。この淡水魚は、極めて特殊な環境条件で繁殖することが分かってきました。ごく珍しい急激な水位変動が起きたときの狭い範囲の中でしか産卵しようとはしないのです。この急激な変動が起きるまで、50年間も子孫を残さないことがあるのです。バッファローフィッシュは、繁殖が成功するまでに何十年もかかることがあります。長い期間にわたり、繁殖しないことも、一つの適応の現れとみられています。
 最後になりますが、バッファローフィッシュの若さの泉は、いったい何なのでしょうか。バッファローの大きな疑問の一つは、その驚異的な長寿をどのように実現しているかになります。もし、これが解明されれば、人類の福音になるかもしれません。この福音を導く不思議なヒントも少しずつ分かってきています。ある研究では、高齢のビッグマウス・バッファローは若い個体より免疫系が強いのです。この高齢の魚は、若い個体よりストレス反応や免疫機能が優れていることが分かりました。なぜ高齢のバッファローフィッシュは、若い個体よりスレスが少ないのでしょうか。高齢のビッグマウス・バッファローフィッシュの個体は、血液中の好中球とリンパ球の比率が低いのです。リンパ球の比率が低かったことは、ストレスレベルが低いことを示唆しています。高齢のビッグマウス・バッファローフィッシュは、若い個体よりうまく細菌を撃退していたのです。このような知見が蓄積されていけば、人間の高齢者が、若者にも負けない免疫力を持つ仕組みを見つけことが可能になるかもしれません。この淡水魚の長寿の研究が進めば、人を含む脊椎動物の長生きについて知見が得られるかもしれないという希望が出てきます。