新聞の討論会などを見る視点が、変わってきました。以前は、討論の内容を見ていたのですが、最近は女性が討論に何人入っているのかを見てしまうのです。市場調査や将来について議論する場で、男性ばかりのグルーピングでは問題があるという流れが世界的に出ています。アメリカではもはや、登壇者に女性が1人だけですと批判の対象になるようです。「適任の女性がいない」といった言い訳も当然、禁句になっています。適任の女性を育ててこなかった企業が、非難の対象になる時代になったともいえます。女性の場合も、一回登壇すると他のイベントにも声がかかり、機会は増えていく流れがでてきました。公の場に参加する女性が増えることで、若い女性のお手本になる女性を見つけやすくなってきたともいいます。ロールモデルの活躍が、さらなる活躍を産むという好循環が出現しつつあるようです。女性の参加の割合を増やす動きは、多様な意見を引き出す場にすることが求められているからです。
日本から海外を眺めると、欧米には女性の首相や閣僚が多いことに気が付きます。ヨーロッパでは、クオータ制が導入されているのです。この制度は、積極的に女性を登用するものです。クオータ制が導入されている理由は、女性の知的生産が高いことが認知されてきたからです。一方、男性は既得権が守られており、女性に不利に働く社会制度の存在があります。子育て中のワーキンマザーは、知的生産性がとても高いことが分かってきました。この女性の能力をより生かすことと、制度的不利な状況にある女性の障壁を低くするためにクオータ制が取り入れられているわけです。議員や会社役員などの女性の割合をあらかじめ定め、女性の有効活用を図っているともいえます。クオータ制の仕組みは、男性優位の社会制度を是正する優れた制度になりつつあります
古代国家は、農業労働以外にも、採石、採掘、ガレー船漕ぎ、道路建設、材木の伐採、などの単純労働を求めました。これらの中で、最も重視された奴隷は、出産年齢の女性たちでした。古代国家においては、捕虜労働と奴隷制の存在なしに長い年月を生き延びることはできませんでした。女性奴隷の出産が、国家の人口の安定と成長にとって重要だったわけです。出産年齢の女性は、出産による貢献を国家に求められたのです。出産は、奴隷だけではなく、自国の女性にも求められました。このシステムには、野生の動物が家畜化されると同様の仕組みが導入されます。女性を形にはめて、差別化していく手法が取り入れられてきたのです。この流れは、近代のつい最近まで続いていたのです。
飼育されているヒッジは1万年におよぶ家畜化で、野生原種と比べると脳の大きさが20%小さくなっています。動物の脳の辺縁系が縮小すると、攻撃や逃走、そして恐怖を引き起こす闘値が上がります。閾値が上がるということは、刺激に対して鈍感になるということです。家畜の感情の鈍化は、人間に監督されて安全に生きていくための必要条件になります。馬や牛が家畜化されたために、耕作動物や荷役動物となり、人間の背中から多くの重労働を取り除いてきました。でも、また別の労働が発生しました。馬や牛を飼育する労働が生じたのです。これらの労働には、感情の鈍化という仕掛けが隠されていきます。このような仕掛けの中に、奴隷や女性を型にはめて、労働に従事させるパターンができてきました。伝統的な文化や生産様式の中には、このような女性を抑圧する仕組みが潜んでいたわけです。クオータ制度は、このような仕組みを破壊する有力な手法になります。
でも、飼いならされる女性ばかりではなく、自立し活躍する女性も増えつつあります。日本国内で女性議員の比率が最も高い町は、神奈川県の大磯町になります。2003年には、この町の女性議員の比率が50%になりました。女性議員が増えて、議会は変わったのです。男性ばかりの議会運営の場合、議員が行う視察も「親睦のための観光」などの形式が多かったのです。男性議員の観光主流の視察を、女性議員は福祉のための視察に大きく変換していきました。女性が政策決定の主導権を発揮し、税金を人々の日々の生活を良くすることに使われるようになったのです。女性議員は、家庭と社会の仕事を融合する管理術を持っています。議会集団が男性や高齢者で構成されていれば、男性と高齢者の利益を重視する施策が通りやすくなります。女性議員が増えることで、町おこしなど住民に直接関わる施策が提起されるようになっていったということです。
伝統的だと思われていた日本の農業にも、面白い変化が現れています。農産物販売額が300万円未満の農家で、女性が経営に参加している方は少ないと言います。一方、販売額が1000万円以上になると、女性が多くなるのです。販売額が、多かったり高かったりする農家ほど女性の経営参加者多くなるという傾向があるのです。ある女性が主体の農家は、糖度の高いトマトを作りやすい特殊なフィルムを使った農法を採用しています。温度や湿度日射量をあらかじめ設定し、スマホを使い遠隔で確認します。環境制御を機械に任せられる分、肝心な品質管理や商品開発に時間が割けるのです。時間と場所を自由に決めることができて、自分のペースで働ける仕事は最高の職場だと言っています。ここで獲れる農産物は、百貨店や高級スーパーからの要請で、出荷を行っています。女性の視点で作物を作り、豊かな生活を享受する農業を行っているわけです。
もう一つは、リスクの分散を上手に行っている女性主体の農園です。食べるバラが、静かな需要を産んでいます。バラの花弁には、ビタミンC、ポリフェノールなどがふんだんに含まれています。ジャムなどの形で、販売する農家もあります。このバラ農園の従業員は、社長以外全員が女性で8人が子育て中です。女性の働きやすい職場環境を作っています。朝9時から働いて、夕飯準備の前の15時に切り上げるパート女性もいれば、朝6時から15時まで働きその後自分の時間にあてる独身女性もいます。以前は、バラの栽培は全国各地で行われていました。でも、採算が合わない農家も出てきます。そんな農家には、生産を委託しています。熊本県や山形県のバラ農家に、加工品で使うバラの生産を委託するのです。わざわざ、遠くの県に委託するのは、リスクの分散を考慮しているのです。バラの葉が落ちる塩害は、バラ生産の大きなリスクになります。そのリスクを避けるために分散をはかることも、農業従事者の知恵になります。女性で儲かる経営をしている方たちは、他人がやらないことに挑戦する気構えがあるようです。
最後に、女性の活躍の場を広げる禁じ手を考えてみました。現在の日本においては、かなり思い切った改革を行わないと、女性の働きやすく生活のしやすい環境はできないようです。諸外国並みに国会議員を増やすことが必要不可欠になります。まず、次の参院選挙で現有女性議員プラス20人増を考えてみました。一番できそうなプランが、参議院の比例代表制の上位に20人の女性候補を指名する政党を支持することにします。男性議員からは、差別だという意見が出るでしょう。でも、そうせざるを得ないようにしていく仕掛けを施します。9月に衆議院選挙が行われます。その候補が出そろってきています。接戦の選挙区がいくつかあります。そこでクオータ制に賛成し、女性候補を比例で優遇する党派に投票するわけです。SNSを使って、基礎票を固めておく作業が必要です。人口20万から40万人の接戦の選挙区では、浮動票が勝敗の行方を決めます。投票率70%程度としても、残りの30%(約2万~4万人)の方のうち1000~2000人の動向が当選を左右します。この1000~2000人が、クオータ制に賛成し、女性候補を比例で優遇する候補に投票するわけです。SNSを使って、1000~2000の基礎票を固めておく作業が必要です。この禁じ手は、接戦の選挙区でのみ、効果を発揮します。この手法で5つの選挙区の勝利を収めれば、次の選挙では公約にクオータ制を掲げる政党が増えます。多くの政党がこの制度に賛成すれば、クオータ制が実現し、比例の上位20議席が女性に割り当てられることが実現するかもしれません。女性議員が多くなれば、神奈川県の大磯町のように、国民のためになる政治が行われるようになります。