ファンタジアランドのアイデア

ファンタジアランドは、虚偽の世界です。この国のお話をしますが、真実だとは考えないでください。

大きなアイデアと小さなアイデア  アイデア広場 その205  

2017-09-28 18:57:54 | 日記
 

 サラリーマンは、気楽な稼業といわれた時代がありました。中級管理職から上級管理職に地位が上がるに従って、自由裁量が増えやりがいがあった時代でもありました。でも最近は、中級管理職から上級管理職へ移行する時に恐怖を感じると言われています。中級管理職は、日常の仕事をいかに上手く回すかという守備範囲で良かったのです。アイデアの生産も数多く出して、10のうち3つが良ければ合格でした。何か新しいものを生み出すためには、流行の半歩先を考えていれば良かったのです。上級管理職になると、急に新規事業創出や新たな組織改革を行うことを求められます。ある日突然、大きなアイデアを出すように求められるのです。そこに、中級と上級の谷間があるようです。
 そこで、中級管理職から上級管理職へのステージを考えてみました。たくさんのアイデアを考えることは、製品を改善したり、組織の小さな手直しには有効です。でも、多くの小さなアイデアは、新しい意味を見いだす時にはあまり役に立たないのです。人々が「iPhone」を目にしたときにはじめて、「そうだ、これを待っていたんだ」と自然に思ったはずです。iPhoneが普及すると、あたかも以前からあったもので、その存在がない世界は考えられない社会になってしまいました。
アルファ・ロメオ4Cという車があります。この車への全ての努力は、極限の軽量化に向けられました。この努力は、炭素繊維を多くし、極限まで部品や設備をそぎ落としたのです。この車のコンセプトは、ミシュランとの対比でした。不案内な旅行者に、ミシュランの高級レストランを進める人は多いものです。無難な選択だからです。それに対して旅慣れた旅人が、自分の目と足で偶然見つけた素敵な小さな店というコンセプトを重視したのです。アルファ・ロメオ4Cは、消費者に歓迎されました。この自動車の初年度の生産分は、市場に発表後数週間で予約が完了し、完売してしまいました。中級管理職には、極限的軽量化やミシュランと反対の路線などという発想は出てきません。出てきたとしても、最初から無理と諦めてしまいます。上級管理職は、顧客の満足度は何か、次にどんなモノやサービスを買ってくれるのか、そのモノとサービスのデザイン構成はどうなるかなど、問題解決に繋がることを常に考えている人材といえるかもしれません。
 消費者に接近しすぎると、急進的発想は生まれません。消費者に接近しすぎると、モノやサービスの改善が多くなり、大きな飛躍が後回しになります。問題解決の手段は、社会全体視野に入れた観点から、そして歴史的視野から常に模索する時代になっています。もちろん、問題解決を上級管理職が単独でやる必要はありません。まわりに、経済学者、社会学者、心理学者、人類学者、建築家などのブレーンを配置して、適時その知見を拝領すれば良いのです。上級管理職は、常に大きなアイデアに繋がることを考えていくことになります。大変であるが故に、いろいろな創意工夫や知恵が生まれてきます。中間管理職は、常に小さなアイデアを作ります。でも、大局的なアイデアを捉える訓練が疎かになります。克服したいですね。