TOBA-BLOG

TOBA2人のイラストと物語な毎日
現在は「続・夢幻章伝」掲載中。

「約束の夜」179

2019年11月12日 | 物語「約束の夜」
誘導するチドリを先頭に
皆が続いて歩く。

「村の外れに向かっているな」
「不安だろうが信じてくれ。
 きちんと案内する」

頼れる皆の背中を見ながら
京子はふと思う。

「チドリにはすごく助けられてるわ」
「俺?」
「そうよ、
 北一族の村に着いてからは
 お世話になりっぱなしだもの」
「京子の事は
 放っておけないからな」

「あわわ。
 それは、ありがとう」

少し照れながら京子は言う。

「裏一族のバタバタが終わったら、
 ちゃんとお礼しなきゃね」
「ひったくりから助けた時、とか?」

「京子ひったくりにあったのか」

おいおい、と動揺する耀。

「ちなみそれ、2回目だ」

付け足す満樹。

「2回」

「満樹が京子ちゃんを
 村に帰そうって言ったの
 分かる気がするわ」

納得のマサシ。

「まあ俺はこの村で生まれ育ったから、
 情報には通じているというだけだよ」

へえ、と京子は問いかける。

「全部終わったら、
 チドリの普段の生活を見せて欲しいな」
「たいして面白味は無いけど」
「全然。
 他一族の暮らしって気になるもの。
 谷一族や砂一族、東一族の生活だって見てみたい」

「京子」

こら、と耀が声をかける。

「あぁあ、さすがに東一族はダメか」

山一族の村に足を踏み入れたとは
言えないな、と京子は口にチャックをする。

「魔法とかも、凄いわよね。
 私は魔法使えないから」
「ワタシもよ、憧れる~」
「俺は、………ちょっとは使える」

ちょっと張り合っちゃう満樹。

「でもチドリの魔法は凄いのよ」

確かに、と満樹も頷く。
真似事とは言え
東一族の魔法も使って見せた。

これほどの術使いは
北一族とは言え、そうは居ないだろう。

「両親も腕のある術使いなのか?」

両親ね。
チドリは言う。

「普通だよ」

「普通なのか~」
「本人の才能ってやつ」
「まぁ、そんな話しもいずれ。
 今はツイナとヨシノだろ?」

「ところで?」

京子は問いかける。

「なんで、ツイナ達は
 宿に寄らなかったのかしら?」
「どういう事?」
「だって、
 私達の待ち合わせ場所って
 そこじゃない?」

「そういえば、満樹も
 そんな事言っていたわね」

決めた訳では無いが
戻ってくるとしたら宿しかない。

「もしかして、
 行き違いになったりする?」
「宿に声をかけてくれば良かったな」

しまった、と顔を見合わせる満樹と京子に
大丈夫だとチドリが言う。

「2人は必ずそこにいるよ」

考えてみてくれ、と
チドリが皆に振り返る。

「集合場所があるのにそこに戻らない。
 どういうことだか分かるか?」

「戻らないんじゃなくて、
 戻れない?」
「……裏一族!?」

「そういう事だ」

とん、とチドリが持っている杖を鳴らす。





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