TOBA-BLOG

TOBA2人のイラストと物語な毎日
現在は「続・夢幻章伝」掲載中。

「約束の夜」153

2019年06月25日 | 物語「約束の夜」

「お待たせ」

着替えて、店の外に出る店員と満樹。

「さぁ、行こうか」

おいで、と
手招きする店員。

「………いや、あんた」
「なんだい?」
「………」

うっすらメイクしているよね、とか
少し高い声とか。
格好は谷一族の男性の格好だが
ストールとかアクセとか
どちらとも言えないような
装飾品とか。

聞きたいことは諸々あるけれど
そう言うのってやっぱり
個人の自由ですし。

「俺はあなたのことをよく知らない」

着いていく以前に、
彼は何を知っていて、
満樹をどうするつもりなのだろう。
 
「お互いの事をよく知ろうって事?」

いいねぇ、と店員。

「名乗ってないのは君も同じだけど」
「ああ」

それは、そうだと満樹は手を差し出す。

「東一族の満樹だ」
「満樹、ね。
 ワタシはマサシ、ご覧の通り谷一族さ」
「よろしく、マサシ」
「親しい人はマーシって呼ぶよ。
 マッキーもそう呼んで」
「マッキーっ!!?」
「嫌かい?」

満樹は全力で首を縦に振る。

嫌、というか
その呼び方知られたら
めっちゃからかいそうな知り合いとかいるから
定着したくない。

具体的には戒院とか。

残念、とマサシは呟く。

「マサ、いや、マーシは」
「どっちでも良いよ。
 呼びやすい方で」

「その名前は、谷一族にしては
 珍しい響きだな」

マサシという名前は
谷一族には珍しい。
どちらかと言えば、南、山、そして西一族にありそうな名前だ。

親しい人がマーシと呼ぶというのも
谷一族の名前に近い響きで呼んでいるからだろう。

「だろうねぇ。
 父がつけた名前らしいから」

「え?」

「ワタシの事はさておき、
 満樹は探し物をしているんだったな。
 探し人、かな!?」

「俺達の何を知っている?」

「何も知らないけれど、
 言ったろう、男の勘?」
「冗談はよしてくれ」
「ふふ、まあ拗ねるなって」

簡単さ、と
マサシは答える。

「それは、ワタシに似ていると言った
 知り合いが関係している?」
「ああ、名前は」

「耀?」

「なぜその名を!!?」
「さっき、もしかして耀かって
 言っただろう」
「そう、だったな」

あんなさらりと流した言葉を。
一瞬の動きを、
言葉の端々を、
よく見ている、聴いている。

ふと、マサシの目線を感じる。

物腰が柔らかいようで
どこか鋭い目。

「その耀という人
 心当たりがあるかもしれない」

まさか、と
満樹は驚く。

あまりに話しが上手く進みすぎていないか。

「なぜ、それを
 会ったばかりの俺に簡単に話すんだ」

にこり、とマサシが笑う。


「なんだろうね。
 困っている満樹を見たら
 助けてあげたくなったって事かな」

ん、と満樹は
共に歩いてきていた先を見る。
どことなく進んでいると思ったが
行く宛があったらしい。

が。

「ここは」

お宿。ホテル。

「さぁ、まずは少し休憩しようか!!」

「休憩ってどういう!!?」




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