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TOBA2人のイラストと物語な毎日
現在は「続・夢幻章伝」掲載中。

「約束の夜」151

2019年06月18日 | 物語「約束の夜」

谷一族の村は
それはそこで、辺境の地。

緑が少ない荒野の地で
鉱物を糧に生活している一族。

彼らの村の入り口は
そんな鉱山の一部であったかも知れない
洞窟の中。

に、辿り着いた、満樹。

薄暗いと思っていた洞窟の中は
あちこちに照明が灯り
祭りの夜のような華やかさがある。

「谷一族は、灯りの魔法に特化していたな」

谷一族の村で掘り出される鉱物は
加工され、装飾品として好まれる。
北一族の村ほどではないが
買い付けに来た商人達で賑わっている。

その合間を抜けるように村の中心地へ向かう。

「スムーズだ」

そう、ここまでの道のりが、

「凄く順調。快適。予定通り。むしろ早い」

うんうん、とひとり旅を噛みしめる。

元々、身の回りに起きた異変を探りたい、と
東一族の村を出たのが始まりだった。

それが、京子、ツイナと出会い、
今ではヨシノ、チドリも合流する大所帯。

自分ひとりでは無い分
夜がけの移動も出来ないし、
携帯食で済まさず、食事もきちんとした物をと思う。

「ひとりって、楽!!」

情報収集がてら店に入り、
軽食を頼む。

ぱっと食べてぱっと動ける。
なにもかも自分のペース。

久々のお一人様に、
足取りも軽い。

軽いけれど。

「…………」

ツイナとヨシノは
砂一族の村に向かうと言っていたが
本当に大丈夫なのか。

早く、谷一族の村に居るかも知れないという
京子の兄・耀の手がかりを掴み
ツイナ達と合流すべきなのでは。

「それに」

京子とチドリ。

満樹はまだチドリのことを
信用できていない。

京子と二人っきりで
北一族の村に置いてきて良かったのだろうか。
自分が、京子の友好関係を
どうこう言う立場ではないけれど。

「なんだが、こう
 モヤモヤするな」

1人は楽だけど、
早く戻らないと、
自分が近くに居ないと、
見ていないと不安だという、
この気持ち。

これは、

そう。

「………母性!!」

子ども達が心配な
母親の気持ち。

「俺は、遂に、その領域に!?」

「どうかした、お客さん?」

いつの間にか、注文していた軽食が運ばれてくる。

「ああ、いや、
 うるさくしてすまない………」

満樹は、テーブルに置かれた食事から
視線をあげて驚く。

「………」
「お客さん?」
「き!!」
「え?ちょっと?なに?」

その店員の腕を掴む。

「………京子?」

「はあ?」
「あ、いや」

違う。
違うのだけど。

「俺の知り合いが、もっと大人びて、
 落ち着きがあって、キレイ系で
 男だったら………こんなかなって」

「新手のナンパだなぁ?」

ったく、と
その店員は満樹の腕を振り払う。

似ているとは少し違う。
顔の系統が同じ。
まるで、そう、兄妹の様に。

「耀!?」

店員は振り返って言う。

「さあ、誰のことだか」



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