TOBA-BLOG

TOBA2人のイラストと物語な毎日
現在は「続・夢幻章伝」掲載中。

「約束の夜」95

2018年08月14日 | 物語「約束の夜」

北一族の村行きの馬車で
スイカを食べ、
季節イベントをクリアした京子。

西一族メンバーズとも分かれ、
数日を北一族の村で過ごし、

「…………」

今日は、約束の日!!

「…………お茶飲みすぎて
 お腹たぽたぽ」

満樹、ツイナと
再び会おうと、約束したその日!!

「…………」

その日の、夕方!!!
待ち合わせ場所が見渡せるカフェにて
もう何杯目か分からないお茶をすする。

「2人とも来ないのだけど!!」

同じ店で長く時間を潰すの
結構つらい。

「今日よね?約束!!」

2人が一日遅れる事になるとは
知らない京子はめっちゃ焦る。

「お客様」
「………はいぃい」
「申し訳ありません、閉店の時間です」
「ですよね」

おずおずと立ち上がる京子に
店員さんがケーキを持たせてくれる。

「お嬢さんをこんなに待たせるなんて
 碌な男じゃ無いよ。
 きれいさっぱり忘れてしまいなさい!!!」

おまけに、何だか誤解を受けている。

「とりあえず宿に戻って
 頭を整理しよう」

ううう。と唸る京子。

「………待ち合わせに来ない場合は、
 居る人だけで動く」

山一族の村で分かれるとき
満樹が京子に言ってくれた。

任務で動いているわけでも
特別な訓練を受けているわけでもない
京子の事を気遣って言ってくれたのだろうが。

「まさかの、
 私、1人パターン!!!」

いやいやいや。

「無理でしょ!!
 いや、私も戦力になりたいし
 裏一族の事は知りたいけど」

これはちょっと予想外。
自分ひとりでは非力だと言うことは
もちろん分かっている。

「えええ?どうするのだっけ?
 仲間ってどこで集めるの?
 酒場?????教会の人????」

ちょっと、
迷走中な京子。

足取りも自然と重くなる。

「お腹空いたなぁ。
 みんなで食べようってお店も決めてたのに」

ふぅ、とため息をついた瞬間。

「え?」

ぐるり、と視界が回る。

ずでーーーん、と
顔から思いっきり地面に転がる。

「痛ぁあああい!!
 鼻打った!!」

ひりひりと擦りむいた痛みに耐えながら
なんとか起き上がる。

なんだろう、この懐かしい感じ。
そう、満樹と出会ったときにも
同じ事が。

「同じ、………んん?」

なんだが身軽になった感覚。
辺りを見回すと、
京子のバッグを持って走っていく人影。

「またかーーーーーー!!!」

慌てて立ち上がる。

「ちょっと
 盗人!!どろぼう!!
 待ちなさいよ、こら!!!」

旅費に関しては全てバックの中、
そして、同行者も現在不在。

手ぶらになっては村にも帰れない。

「待っ」

「おい」

走り出そうとする京子を、誰かが制止する。

「勢いで追いかけるな」

満樹?

来てくれたのだろうか、と振り返るが
その誰かは杖を取り出す。

「      」

西一族の京子にはよく分からないが
彼が言葉を重ねる毎に
うっすらと、杖に光が集まる。

ツイナの先視の時の様に
瞳の色が僅かに変わって見える。

「     !!」

次の瞬間、盗人の足元が膨らみ
地面が僅かにはじける。

「うわあああ」

彼は倒れた盗人に近寄ると
京子の荷物を取り上げ
戻ってくる。

「ほら、君のだろ。
 大丈夫?」
「あ、りがと」

一瞬、満樹かと思った。
京子は首を振り、荷物を受け取る。



NEXT


「約束の夜」94

2018年08月10日 | 物語「約束の夜」

割と、

いや、結構な、ぐったり気で

満樹は朝日を迎えた。
空を見上げ

「いや~、お天道様ってまぶしいんだな!」
「そうだな」

その横に成院がいる。

共に砂漠当番を終え、
共に東一族の村へと戻っているところ。

「よし、大将に報告したら、俺は行くぞ!」
「どこに?」
「北に!」
「北?」

何で? と、成院は首を傾げる。

「何か食べに行くのか?」
「待ち合わせなんだよ!」
「待ち合わせ?」

成院は、満樹の上から下まで見る。
何か、・・・へろへろなんですけど。

「いや、・・・やめた方が、」
「止めるな、成院」
満樹は成院を制止する。
「俺は行くぞ! 朝日と反対方向に!!」
「・・・・・・」
「例え、ニワトリに止められようとも!」
「満樹の兄さん・・・」

これ
寝てない人の謎テンションだよ。

「とりあえず、ベル●ムラ飲む?」
成院は、満樹を心配する。
「戒院に頼めばあるんじゃないか」
「いや、今の俺には、そんな薬は必要ない!」

ベルソム●(睡眠を助けるお薬)

薬の助けがなくとも、今ならぐっすり眠れるでしょう。

「聞いた話なんだが」

成院はちょっと真面目な顔になる。

「ほら、今、東一族を窺っている者がいるって話」
「あ、ああ」
「上が、どこまで詳細を掴んでいるか判らないが、」
「・・・うん」
「誰でも狙われる可能性はあるんだからさ」
「・・・はい」
「そんな疲れた状態で外へ行くのはどうかと」
「いや。でも、・・・」
「な、満樹?」
「俺には一緒に行ってくれる仲間が・・・!」
「仲間?」
成院は、腕を組み考える。
「それって、あの海一族さん?」
「隣のニワトリの!!」
「おいおいおいおい!!」

やばいよ、これ以上は!!

「あっ、ちょっ! 光院!!」

成院は、手を上げる。

大将の部屋の前に、光院がいる。
その光院を助けに呼ぶ。

「満樹兄さん、成院。お疲れ」
「光院も、昨日はお疲れ」
「お疲れは成院だろう」
光院は笑う。
「まあ、俺は、戒院のお守みたいなもんだからな」

昨日の川遊びでは、めっちゃ楽しくなりすぎて
途中からBBQもはじまり(野菜のみ)
アルコールも登場しだして(お酒は、各国の年齢に従いましょう)
とってもはっちゃけた学生のノリになりーの
なんかもう、日焼けはしーの
アロエを塗ったら痛いーの
ついでに、川べりに生えていたカヤで怪我しーの。

(カヤ:ススキの葉っぱ。包丁草とも)

「けいちゃんけいちゃん、とか云っててさ!」
「戒院、笑えたな!」

(けいちゃん=/=圭ちゃん)

(けいちゃん→けいさん=珪酸=カヤのトゲ)

「楽しかったよな!」
「な!!」
「また次の週にでも川に行こうよ、兄さんも」
「でも、ニワトリが」
「えっ、ニワトリ??」
「それは、もういいよ」

成院は、満樹をなだめる。

うーん、と、光院は満樹の様子を見る。

「満樹。少し寝たら?」
「でも、これから北に行くんだと」
「北に? なぜ?」
光院は満樹を見る。
「北に行く予定なんかないだろう?」
「あれ?」
満樹は回らない頭で考える。
「なんだっけ? 京子との約束、は?」
「北に行く予定はないと思うよ、満樹」

それに、と、光院は云う。

「噂では、今夜も満樹は砂漠当番って話が、」
「えぇえええー!!!?」

3連夜勤。

「噂だけど、な」

成院と光院は顔を見合わせる。

「くそぅ!!」
「とにかく今は休もう、兄さん」

光院は、満樹の肩を叩く。

これ以上睡眠不足になると、壊れてしまうよ。
満樹と云うキャラが!!



NEXT

「約束の夜」93

2018年08月07日 | 物語「約束の夜」


「今頃、満樹達は
 なんか、キャッキャウフウフしながら
 水遊びとかしてそうな気がする」

ぴーん、と。

よく分からない第六感で
東一族の村の様子を感じながら
京子は馬車乗り場に立つ。

「北一族の村までの馬車には
 まだ時間があるわね」

待合所にある丸太を置いただけの椅子に腰掛ける。
少し早く着きすぎた。
ついでに言うと
出発はもう数日遅らせても充分間に合う。

けれど。

「旅立ちの挨拶?誓い?宣言?
 早くしずぎたわ!!」

母親と
『止めても行くのでしょう』
『必ずお兄ちゃんを見つけて帰ってくるから』
『あなたの無事を祈っているわ』
『ありがとう、お母さん』
的な会話をして、数日。

言葉にはならないけど、
絶妙に流れる、

あれ?まだ居るの?
え?え?出発いつ??

というそんな空気感。

「確かに!!
 明日にでも旅立ちますな
 雰囲気を出しちゃったわよ」

居たたまれない感も含め
京子、少し早く出発します。

「あぁあ。
 もうちょい、季節的なイベントとか
 したかったなぁ」

季節あるのだろうか、
この水辺世界。

「海?とか
 夏休み?とか
 スイカ???とか」

「「「「……………」」」」

「まぁ、素敵な出会いってのも
 ありよね~」

満樹やツイナ、
あと、千との出会いはなんか違うらしい。

独り言、声にでまくりの京子の隣。

「「「「……………」」」」

北一族は市場の町として
人の出入りが多い。
もちろん、西一族からも沢山の人が向かう。

つまり、馬車乗り場は
実は京子1人ではなかった。

今回は、市場に西一族産の肉を
売りに出す若者達。

「京子のあれは何らかのメッセージだろうか」

少し離れた場所で
ぽつりと呟く広司。
今回市場へ初参戦。

「大丈夫だ、
 あれは無意識にあふれ出ている言葉であって
 俺達への圧力ではない」

答えるのは、今回の班長、誠。

「私は京子のそういう所、良いと思うわ」

うんうん、自分に正直って
誇れる事よ、と、副班長、直子。

「そうだ、俺達は
 決して気にしなくて良いんだ」

今回出荷する肉は干し肉にしている。
それをとりまとめた大きな荷物を抱えている、透。

「だから、な、広司。
 お前は何も考えずに、
 それを持っておくんだぞ」

向かった北一族の村で
出店を出すだろう。
そんな時、休憩がてらみんなで食べようね、と
広司が抱えているのは。

「やっぱり、今の時期と言えばスイカだなぁ」

そう、スイカ。

決して、広司達の方を見ているわけではない。
馬車の到着を待ちながら
京子がうーんと伸びをする。

「なんか急にスイカ食べたくなったな。
 なんでだろ?」

きっと、さっき見かけたからだろうね!!!!

みんなが心の中でツッコミを入れる。

「…………っ!!」
「耐えろ、耐えるんだ広司」
「京子も意味があって
 言っている訳じゃないんだ」
「多分!!」
「あぁ、多分、悪気とかない、多分!!」

ふ、と
京子が小さくため息をつく。

「もしかして、
 このまま旅立っちゃったら、
 今年はスイカ食べられない、かな」

切なげ。

「~~~っつ!!」

どすどす、と
京子に向かって歩き始める広司。

「待て、広司」
「落ち着くんだ」

皆が止めるが、広司は言う。

「だって、あいつ。
 どうせ馬車も一緒だろ!!」

確かに。

「京子!!」
「ん?広司どうしたの??」

「そんなにスイカが
 食べたいのか!!?」

どーーっん。

目の前にスイカをかざしつつ
広司が問いかける。
横でうじうじ言われるよりは
今、みんなで分けた方がマシなのでは。と。

「え?わぁ!!
 ごご、ごめんね、声に出てた!?」

慌てる京子。

いや、モロに声が響いてましたよ。

「食いたいなら、
 今、ここで、割るぞ!!」

もやもやは、早めにすっきりさせたい広司。
うんうん、と
他の皆も頷くが。

「あ~、気持ちは嬉しいのだけど」

京子は言う。

「無いから食べたいなぁって思うのだけど。
 いざ、目の前に出てくると
 そうでも無かったわ!!!!!」

「…………」

「ごめんね、声かけてくれて
 ホントにありがと!!」

間。

「落ち着け広司!!
 どうどう!!」
「止めろ、たたき割ろうとするな。
 そっとスイカを下ろすんだ!!」
「京子!!
 広司の気持ちも考えて!!」
「ええええ?
 ごめんね、食べるよ!!!!」
「そんな!!偽りの!!
 気持ちはいらん!!!!」
「京子、もっと、心を込めて!!!」
「普段より格別のお心遣いを賜り」
「そう言うビジネス的な奴じゃなく!!!」

うん、と
そのメンバーの中では
割と付き合いの長い、班長・誠が呟く。

「俺は知っていたぞ。
 京子はそういう奴だ」



NEXT


「約束の夜」92

2018年08月03日 | 物語「約束の夜」

割とメンバー集まったよ、川遊び。

日差しが強い。
気を付けよう熱中症。

「よう、満樹!」
「ああ、うん。お前は絶対いると思った」

満樹は戒院に、肩を叩かれる。

「砂漠当番お疲れ、な」
「どうも」
「どうだった、地点?」
「えーっと、普通?」
「そうか、大変だったな」

戒院は再度、満樹の肩を叩く。

「砂漠当番、今夜もなんだけど……」
「あいにく俺は予定があって代わってやれない!」
「夜遊びだろ?」
「代われないものは代われない!」

まあ、おそらく
理由は大したものではない。

「おい成院!」

 戒院は、大声で兄を呼ぶ。

「満樹が連勤だって! 代わってやれよ!」

おいおい、と、成院がうなだれる。

「俺も砂漠当番なんだって」
「えっ、成院もか」
「俺と満樹が、同じ場所の当番になってる」
「じゃあ無理だな」

親切心?で、戒院はさらに声をかける。

「光院は!?」

で、この場が
あいつ空気読めないわー、の雰囲気になる。

「誰に頼んでいるんだよ、戒院」

成院は呆れ顔。
そりゃあ、光院は、現宗主直系の孫ですから。

「何だよ。お前だっていつだったか、光院に頼んでたじゃんよ」
「あれは、一時的に門番を頼んだんだろう」
そう云うこともあったね。
「な。大丈夫だよな、光院」

又従弟同士、戒院は光院の肩を組む。

「いいよ」
光院は笑いながら、云う。
「代わろうか、兄さん」
「おお! さすが光院!」
「まじでか、光院!?」

俊樹もツッコむしかない。

「おい、光院がやるってよ。誰か代われよー」
「俊樹がやれば?」
「俺も連勤になるんだって!」

俊樹の言葉に、じゃあ、と手を上げるのが

「俺がやるか?」
なぜか、大樹。
「占術師じゃ無理だよ、大樹兄さん」
仕方ない、と友樹。
「いいって、友樹。俺が行くよ」
と、光院。
「連勤でもいいけど」
俊樹も手を上げる。
「何この流れ~」
たぶん、ふざけておる、戒院。
「じゃあ、意味はないが俺も」
本当に意味がないよ、成院。
「なら、はいっ!」
いたんだ、水樹。
「俺も!」
ついでに、ツイナ。

そして

みんなはちらりと、満樹を見る。

「いやいや、俺は!」

くっそーと、満樹は頭を抱える。

「絶対に手を上げないぞ!!」

「満~樹~」

川遊び非番東一族メンズは、にやにやする。

「いいよ、満樹。もう一日ぐらい」
ツイナが云う。
「一日ぐらい遅れたって大丈夫だよ!」

北一族の村で集合する約束。
そんな、のんびりでいいのか。

「くぅうううう」

そうして、満樹は

予定通り

砂漠当番へ行きましたとさ~。



NEXT