「西、一族・・・」
先ほどの夕紀の言葉を、京子は繰り返す。
準備してもらったベッドに横になり、ぼんやりと天井を見る。
つまり
山一族の与篠は
西一族の父親と、山一族の母親の子、と云うことになる。
西一族と山一族は、お互い敵対しているのだ。
その一族同士の子となると、非常に珍しい存在となる。
「与篠は、・・・」
それで十分狙われる理由になる。が
連れ去られたのか、
自ら裏一族のもとへと赴いたのか
それは、本人しか判らないこと。
京子は、ため息をつき寝返りをつく。
なら、
自分に満樹、ツイナが狙われたのは・・・?
ただ、手のひらにアザと云うことだけではなく
本当に何か出生に秘密が・・・??
「一度、西に戻るか・・・」
兄の耀も、何か出生の秘密があって、まさか裏一族に??
「ふう」
明日、満樹とツイナに相談してみよう。
もう寝よう。
「でも、とりあえずは、」
京子はむくりと起き上がり、部屋の中を見渡す。
「この甘い香りがする花たちはいったい何なのよー!!」
なんなのよー!!
よー!!
(※エコー)
京子が使っている部屋には、
黄色~橙色の、トランペット型の花を咲かせた大型の植物で
埋め尽くされているの図。
「気持ち悪くて、寝れないわー!!」
「それは、ブルグマンシアだ」
「ブルグマンシア??」
「もしくは、ダチュラ」
「ダチュラ??」
って、
「満樹!?」
「俺も起きてるよー!」
「ツイナ!」
「京子さぁ、独り言うるさいんだもん」
隣の部屋との壁が薄いんだか、心の声が全部タダ漏れだったのか。
「こっちの部屋にも、その花がたくさんあるぞー」
「なんなのよ、これ。気持ち悪い」
「よく見るとそうでもないかと思うけど」
満樹が続ける。
「この香りに当てられると、ふわっと意識なくなる」
「げげっ!!」
夕紀&与篠、侮れない。
みんなも、どんな香りかなー??
と
なんでもかんでも、香りを確かめないように!!
「京子、西に行くのか?」
「・・・うーん」
「西なら俺も行ってみたい!」
「でも、満樹は、」
「俺は西には入れないな」
西一族と東一族は敵対。
当然のことである。
「別行動か」
「それが、不安」
「でも、母親に自分のことを訊いてきたいんだろう?」
「・・・うん」
京子は天井を見ながら云う。
「ねえ、満樹、ツイナ」
「何?」
「何だ?」
「満樹とツイナも、一度、一族の村へ戻って」
「え?」
ツイナの訳が分からないと云う戸惑いに、
満樹が答える。
「自分のことを確かめてこい、か?」
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