「これ、アウトなやつ―――!!!」
おののくアヅチに
落ち着け、と
マツバは三度目のストレートを決める。
「ぐふっ」
「大丈夫よ口を付けてないんだから」
「そう、口を付けたら
少しばかりタダじゃすまないだけよ」
ふふふとフワは言う。
「少しばかり、じゃないだろ!!
俺はちょっとちびりそうだったぜ」
アヅチは、『銀の匙、毒』でググったらしい。
完全にあかんやつです。
だがしかし、とマツバはフワに問いかける。
「どういう事?
黙っていればそのまま食べていたのに
わざわざ毒があることを教えたり」
「……俺たちを試しているのか?」
あら、そう来る?とフワが言う。
「私たち、
敵対する相手には容赦しないけど
誰にでも残酷って訳じゃないの」
そこの所、誤解されちゃこまるわー、と
めそめそとポーズをとる。
「さすがに何も知らない人に
毒入りの食事を出すなんて
酷いわよね」
うんうん、と
アヅチとマツバは頷く。ごもっとも。
「だから、これは
毒入りですよーって教えてから食べて貰うのよ」
す、
す、
「砂一族、こ「「わぁああーーーーー!!!!」」」
のぞき窓に挟まっていたへび呼ロイドが
思わず声を上げたので、語尾のあたりで
アヅチとマツバが叫んで誤魔化した。
「ん?何か今聞こえた様な?」
「気のせいだろう」
「そうよ話を続けなさいよ!!」
そうそう、と
フワは言う。
「それで、あなた達
そのお食事食べる?」
「いや、そこまで聞いて
食べるやつはいないだろ」
「私たちを飢えさせるつもり?」
違うわよ-、と
フワはどこかに手招きをする。
「シマ―――」
ととと、と、それに呼ばれる様に
先程の少女が姿を現す。
「この子はシマ。
うちの一族ではお薬作りを担当しているの」
「まだ見習いなんだけど」
照れちゃうわ―、
そんなこと無いわよ自信持って、と
砂一族の少女達の話を聞きながら
アヅチとマツバは動きを止める。
「……薬って」
「つまり」
スパイスという名の―――毒!!?
「ねぇ、折角だから
もう一つの器に銀のスプーンを使ってみてよ」
フワが言う。
「え?」
「まぁまぁ、お試しあれ」
食事は2人分用意されている。
箸を付けていない方の器の食事を
スプーンですくう。
「……変わらないわね」
スプーンは変わらず銀のまま。
「でも、後からじわじわと変色する可能性も」
「失礼ね、
そっちには死んじゃう様な薬は入っていないわよ」
シマの言葉にアヅチ達は
そっと食事を遠ざけた。
「死んじゃう様な、って」
「つまり死なないけど、
毒は入っているって意味にも取れるけど」
「「ご明察~」」
砂一族の2人は楽しそうに跳ねる。
「あなた達の容疑は晴れた訳じゃないって
分かってる?」
「私達の要求は、こう、よ」
フワとシマは
交互に言う。
「そのもう一つの方の
食事を食べたら、あなた達の解放を考えてあげる」
「私が作った新しい薬が
どう影響するか、
お試しさせて欲しいのよ~」
「大丈夫、
人体には害のないものだから」
「もし、体調を崩した時は
薬を扱うという点で医療面でも優れた
砂一族の医療でサポートするわ」
いやいやいや。
「それ、ちっとも安心感が得られない」
「そもそも、
『解放を考える』って全然らちがあかないわ」
「そう怯えないでよ
危ない物じゃないっていってるでしょう」
ねぇ、とフワはシマに言う。
「そう、そのお薬は
もちろんウチでも実験済みなの
と聞いたらちょっとは安心するかしら?」
「え?じゃあ別に俺たちで実験しなくても」
そこよー、とシマが言う。
よくぞ聞いてくれました。
「同じ薬を使っても
私たちとあなた達では効き具合が違うのよ」
「そんな事ってあるのか?」
アヅチの疑問に
マツバも首をかしげる。
「そうね例えば感染症の薬の一つは
西一族であれば簡単に使えるけど
東一族だと薬の効能が強すぎて、
一か八かの使用しか出来ないの」
「「????」」
「血筋や食生活、生活環境による体質の違いがあるわけよ
一族で効き目が分かれる物があるの
私はそれを色々試したいだけ」
分かったかしら、とシマ。
「これだけ聞くと
試してみる価値あるなーとは思わない?」
あなた達だって
早く外に出たいわよね、とフワ。
「くっ!!」
「どうにもこうにも
食べるしか無さそうね」
がっと、2人はカレー皿を掴む。(危なくない方の)
「南一族の」「豆(特産品)の神様!!」
アヅチとマツバは祈る。
「「俺(私)達に、加護を!!」」
「命を!!」「大事にーーーー!!」
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