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現在は「続・夢幻章伝」掲載中。

「続・夢幻章伝」59

2021年08月03日 | 物語「続・夢幻章伝」
会場に流れる軽快な音楽。
サンバこそ至上の音楽。

ちゃっちゃちゃらっちゃ、ちゃっちゃちゃらっちゃ
ちゃちゃちゃ、ちゃちゃちゃ、う!!

「あ、見て!!タクトよ!!」

クリミアの声に
彼女の視線を追うマツバとケート。

各々自慢の衣装と思い思いのダンスで
にこやかな笑顔を振りまきつつダンスを披露しているが
その中でもひときわ際立つ、それはタクト。

「やあ!!!俺だよ!!!!」

「凄いわ」
「ええ、腕ボーン、ふわっフワの
 まさにサンバ!!といえる衣装」
「腰つきも軽快、ただ者じゃないわね」

スポットライトで照らされたように
人々の視線を浴びている。

「あら、当然よ。
 タクトは次世代をしょって立つ
 期待のサンビスタと言われているの」

周知の事実、とばかりにクリミアが言う。

「サン……なんて?」

「毎年カルナヴァルが開催される度に
 各エスコーラから声がかかるけれど
 タクトは毎回1人のカルナヴァレスコとして出場しているの」

「エス……。え!?」

「つまり、著名なパシスタって事!?キコキコ!!」
「ええ、そういうこと。
 話が早くて助かるわ」

よく分からないけれど
へび呼ロイドが理解しているっぽいので
良いだろう。

マツバは考えるのを止めた。

その横でわなわなと震えるケート。

「さすが、パシスタ・マスクリーノタクト。
 相手として不足無し。
 でも、見るがいいわ!!その隣に居るチナツを!!」

北一族であるのならば
地元期待のタクトの実力はもちろん把握している。
しかしチナツの優勝に絶対の自信を持つケート。

っていうか
チナツってこう言う大会にも出るタイプだったのね。

「何なんだ、あの独特のダンスは!?」

会場がざわつく。
本来サンバに決まったステップやダンスなどない。
音楽に合わせた即興のダンスこそが醍醐味。

でも、これは。

「お前、やるな!!?」

タクトも目を見張る。

「まあ、驚くのも無理はない。
 これは、西一族のごく一部の民のみに伝わる
 秘匿の舞だからね」

相変わらずのテンションでチナツは答える。
謎のダンスを踊りながら。

「秘匿………まさか!!?
 伝説のジャットブシだというのかキコキコ!!?」

「えぇ、ジャットソギャンジャット、の祝詞と共に
 山、海、畑、全ての恵みに感謝しての捧げられる
 秘伝の舞よ」

今度はケートが解説を始める。

「西一族、海は面して無くない?」

感謝、とは。

「ヨカバイアマクサハ、ア・ジャット、の
 音楽が耳を離れないキコキコ」

聞こえないはずの幻の音楽が
皆の耳に届く。

ウミノアオォサ~ヨ、ソノキ~ィレェサァ
ブエンサカナデ、ソリャギュットアァゲリャ
ウゥタ~モハズムヨォ、ハイヤブゥシ。

「ねぇ、今、ハイヤって。
 そもそも、これサンバじゃ無く」

「それが、あるんだな」

なぜこの距離で会話が出来るのか。
それは置いておいてチナツが
意味深な表情で答える。

「十数年前から、
 地域活性の後押しとして、なぜか誕生したんだよ
 サンババージョンのジャットブシが」

久しぶりに地元変えると
なんか、どうしたこれ!???って事よくある。

「だからどうしたっていうの。
 もちろん優勝はタクトよ!!」
「いいえ!!頑張って!!チナツ!!
 優勝して賞金を手に入れるのよ!!!」

賞金出るのか。
そういえばチナツは西一族の村でも
バイトとかしてたよね。

「チナツはねぇ、
 女手一つで自分を育てている母さんに
 いつか家を建ててあげるのが目標で」

「やめて、ほんと、そう言うの話すの止めて。
 俺のキャラが崩れちゃうから」

顔を真っ赤にしているチナツに
おやまあ、と皆が微笑ましい雰囲気になるのであった。
そもそもサンバ大会に出てる段階で、キャラとかちょっと。

「濃いわ、この大会」
「これアヅチどうするんだろうね、キコキコ」
「っていうかアヅチこのグループじゃ……あ!!!!」

「アヅチ、キコキコ!!!」

居た。
気がつかなかったけど、居た!!

「うわぁ」
「これはまたキコキコ」

まず衣装が凄い。
タクトと同じ腕がバーンとなっている。
そして、背中と腰に羽を背負っている。孔雀のように。
あと、頭にもトサカみたいな物を付けている。
色もカラフル。

職人が全ての力を使い、作り上げた様な。

「俺が出来る最高級の衣装を
 準備させて貰ったぜ!!!」

どこか満足げなタクト。
下手な衣装を貸して自分が勝ったとは言わせない。
ライバルには全力で力を貸すぜ、という意気込み。

「俺も、力添えさせて貰ったよ」

チナツも杖を振るう(踊りながら)

アヅチの周りには漫画の比喩表現で出るような
キラキラした輝きが俟っている。

「ティン●ーベルかな。キコキコ」

そして、肝心のアヅチ本人はというと。

「照れを通り越して、無だわ!!!」
「心を殺している表情キコキコ!!!」

ただ、ひたすらに
この時よ早く終われ、と言わんばかりに。
サンバも踊って居るっちゃ踊ってる。

ただ、何か動きが直角。

「豪華な背景と化しているわ」
「タクトとチナツも含め
 凄い事になっているキコキコ」

アヅチは自分に言い聞かせる。

大丈夫だ、この時もすぐに終わる。
マツバ達は仕方無いとして
地元から遠く離れたこの場所で
よっぽどの奇跡が起こらなければ、知り合いに会うわけでもないし。

「………ん、待てよ」

ふと、沿道に目を向ける。
そこには。

「頑張れ、アヅチ!!!!」
「いいぞ!!
 よ!!南一族の新星!!!!!」

「村長、その他一同ぅおおおおお!!!!」

そういえば
んんんりんぴんんんんんん、で
南一族選手一同が来ていたんだったね。

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