「まさか、お前も行くわけじゃないよな」
そう、声をかけられて、圭は振り返る。
そこに
「広司・・・」
広司は狩りの道具を抱えている。
「あ。・・・狩りが、あるんだっけ」
「その感じじゃ、狩りに行くわけじゃなさそうだな」
広司の言葉に、圭は目を細める。
「行くわけない」
圭は云う。
「病院に向かうところだ」
圭は、この場を去ろうとする。
が
「お前、兄が現れたんだって?」
広司の言葉に、圭は思わず立ち止まる。
「この前会ったけど」
広司が云う。
「ずいぶん、お前とは違う雰囲気だな」
「・・・だから、なんだよ」
圭は、小さく云う。
広司は構わず続ける。
「狩りは初参加だって? お前、付いてやらなくていいのか」
嫌味か、と、圭は思う。
けれども、圭は何も云わない。
振り返らない。
「今日の狩りは、お前みたいに足手まといにならないことを祈るよ」
圭は、歩き出す。
広司は、狩りの道具を抱えなおし、その様子を見る。
視線を背中に感じながら、圭は早足になる。
ふと
横を見ると、
狩りの道具を抱えた、ほかの西一族がいる。
圭と、目が合う。
圭は、すぐに視線をそらす。
走り出す。
何もかもが
いやだ、と。
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