TOBA-BLOG

TOBA2人のイラストと物語な毎日
現在は「続・夢幻章伝」掲載中。

「水辺ノ夢」92

2014年08月08日 | 物語「水辺ノ夢」

「まさか、お前も行くわけじゃないよな」

そう、声をかけられて、圭は振り返る。

そこに

「広司・・・」

広司は狩りの道具を抱えている。

「あ。・・・狩りが、あるんだっけ」

「その感じじゃ、狩りに行くわけじゃなさそうだな」
広司の言葉に、圭は目を細める。
「行くわけない」
圭は云う。
「病院に向かうところだ」

圭は、この場を去ろうとする。



「お前、兄が現れたんだって?」

広司の言葉に、圭は思わず立ち止まる。

「この前会ったけど」
広司が云う。
「ずいぶん、お前とは違う雰囲気だな」

「・・・だから、なんだよ」

圭は、小さく云う。

広司は構わず続ける。

「狩りは初参加だって? お前、付いてやらなくていいのか」

嫌味か、と、圭は思う。

けれども、圭は何も云わない。
振り返らない。

「今日の狩りは、お前みたいに足手まといにならないことを祈るよ」

圭は、歩き出す。

広司は、狩りの道具を抱えなおし、その様子を見る。

視線を背中に感じながら、圭は早足になる。

ふと
横を見ると、
狩りの道具を抱えた、ほかの西一族がいる。

圭と、目が合う。

圭は、すぐに視線をそらす。
走り出す。

何もかもが

いやだ、と。


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