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TOBA-BLOG

TOBA2人のイラストと物語な毎日
現在は「続・夢幻章伝」掲載中。

「約束の夜」247

2020年10月20日 | 物語「約束の夜」
「ほう!!」

む~、とツイナは伸びをする。
谷一族の村から北一族の村へと続く街道。
岩場に腰掛けながら、お茶を一服する。

あれから
皆がそれぞれの村へと戻る中
ツイナは通り道と言うこともあって
京子を送りがてら、
オトミと一緒に西一族の村に短い間滞在した。

京子から
『折角だから寄っていって
 おいしいお肉をごちそうするわ』
と、お誘いをうけたのもある。

お肉おいしかった。

それからオトミを南一族の村に送ると
今度は南一族式大歓迎。
こちらも収穫体験をしながらしばしの滞在。

そこからは
自分の村である海一族の村に戻るだけだったが
ツイナは思った。

「いま、ここで帰っちゃうの
 勿体なくない!?」

と!!!

住み慣れた海一族の暮らしが
懐かしい気もするけれど、
各一族に尋ねるあてが出来た事だし、
せっかくなので水辺一周しちゃおう。

満樹を尋ねて東一族の村。
ちょっとスリリングだったけれど
ノギに誘導されつつ砂一族の村。

今は、マサシに見送られながら
谷一族の村を起った所。

どの村もそれぞれに違う
一族独特の暮らし。

残念だったのは
海一族と敵対している山一族の村には
さすがのツイナでも行けなかった事。

「ヨシノ、どうしているんだろうな」

すちゃっと、立ち上がり、
ツイナはぐるりと回る。

「結構、背も伸びたと思うんだけど」

もしかして、
身長も追いついたかも知れない。
なんたって成長期ですからね。

「最近ノドもがらがらするし。
 これは、声変わり近い予感」
 
アニメだったら
声優さん変わるパターン。

「と言うか、ヨシノ
 ちゃんと村に戻ったのかな?」

また、さすらいの薬草(いろんな意味で)探しの
旅に出ている可能性も。

「案外すぐに会えたりして」

そうしたら
ヨシノに最初に聞いて欲しい事がある。

あれからツイナも色々考えた。

自分の母親が付けた、ユウトという本当の名前と
表向きの名前ツイナ。
それに、父親である翼が残したカナメという名前。

「俺、名前多すぎ問題」

でも三つとも自分の名前だ。

海一族の司祭は、
本当の名前は隠し仮の名前を使う。
そういう風習。

それなら、これからは

「ミツナって名乗ろうかな」

実は血が繋がっていて
姉だったヨシノだけれど、
最初に、この名前を伝えるのは。

「…………うん」

それを、ツイナことミツナは想像する。

「あっそう、ふーん、と言われて終わりそう」

まあそれもヨシノらしいけれど、
空になった水筒をひっくり返し、
ミツナは立ち上がる。

向かうのは北一族の村。

それから先はまだ考えていない。
一周したので、帰ってもいいし、
まだ旅を続けるのもありだ。

まずは、足の向くままに。

そうやって歩き始める。

「まずは、そうこの水筒にお茶を貰おう。
 あそこの、ぽつんとある一軒家とかで」


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「約束の夜」246

2020年10月16日 | 物語「約束の夜」
満樹は、村を歩く。

そのまま、大将のもとへと行くつもりだ。
今回のことを報告して、そして、

そして

その後は、どうするのか。

報告もどこまでするつもりなのだろう、自分は。

「満樹」

誰かの声。

「満樹!」

満樹は振り返る。

「お帰り」
「光院・・・」

光院が笑う。

「よかった。帰ってきたんだ」
「ああ・・・」
「大将のところに行くのか」
「そのつもり、だけど」
「なら、一緒に行こう」

満樹の横に、光院が並ぶ。

満樹は云う。

「報告を聞くつもりか」
「そう」
「あとで聞けると思うけど」
「今もあとも、一緒だろう?」
「・・・・・・」
「何か都合の悪いことでもあったか?」
「・・・・・・」

満樹は、黙る。

ふたりは、東一族の村を歩く。

いつも通りの村。
ついこの間まで何かに狙われていた。
そんな感覚は今はない。

「いつも通りが1番だ」

光院が云う。

「光院」
「何だ」
「みんな、どこまで知っている?」

満樹は呟くように云う。

「どこまで、とは?」
「自分のこと、だよ」

自身は純粋な東一族ではない。
混血。
しかも、片方の血は
東一族と反する、西一族のもの。

それがはっきりと判って、
そもそも東一族特有の魔法も扱うことも出来ず

「自分は、これから・・・」
「満樹」

光院が云う。

「さっきも云っただろう」
「・・・・・・?」
「いつも通りが1番だ、って」
「それは、どう云う、」

光院は、空を見る。

「晴れてるな」
「え? あ、ああ」
「俺が知らない満樹の友人たちも、どこかでこの空を見てるんだろう」

空はよく晴れている。
気持ちのいい、青空。

「いつも通りだ」
「・・・・・・」
「お前の昔のことがいくら判ろうとも」
「光院」
「な、満樹」
「でも、俺は、」
「じゃないと、お前の父と母はどうする?」
「・・・・・・」
「そもそも知っていたわけなんだから」

自分は、父親の子ではないと。
敵の一族の血をひく、と。
それでも、
自分の子として、育ててくれた父と母。
東一族として受け入れてくれている、仲間。

満樹は、空を見る。

どこかで同じように
きょうだいたちも、この空を見ているのだろうか。

「光院」
「何だ?」
「感謝する」

光院は、笑う。

「まあ、まだ考えることは多いだろうけど」

満樹は頷く。

光院は、目の前を見る。
そこは、大将がいる場所。

「これからも、よろしくな」

光院の言葉に満樹は頷く。

「満樹がいないと、砂漠当番周りが早いからさ」
「そこ!!?」





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「約束の夜」245

2020年10月13日 | 物語「約束の夜」
谷一族の村、夜はバーになる軽食屋。
時計を見上げた店主は
ホールに声をかける。

「もうこんな時間か、
 今日は上がっていいぞ、マーシ」

テーブルを片付けていたマサシは
あら、と振り返る。

「はいはい。
 それじゃあマスター
 お言葉に甘えて」

エプロンを外し、身だしなみを整えた後
お疲れ様、とマサシは店を後にする。

「マーシ、仕事上がりかい?」
「寄って行きなよマーシ」

通りすがりに駆けられる声に
やあやあ、とマサシは返事をする。

谷一族は鉱石で栄えた村。
皆が顔見知りのような関係。

「あ、マーシ、これからの時間は空いている?」

女の子達が手を振る。

「噴水広場のお店が
 今おいしいスウィーツを出しているの。
 食べに行かない?」
「えぇ、なにそれ。魅力的ね」
「そうだよ。
 2時間食べ放題」

つまり女子会へのお誘いである。

「うーん、とっても気になるけれど
 また今度」
「ありゃ、残念」
「ごめんね。今日は先約があるのよ」

「なあに、デート?」

ふふふ、とマサシは人差し指を唇に当てて
眼を細める。

「そうよ。
 今日はワタシがエスコートするの」

それじゃあね、と立ち去るマサシを見送りつつ
遺された女の子達はほう、とため息をつく。

「マサシの恋人って誰なんだろう」

マサシは途中、店で食材を買い求め、
大きな紙袋を抱え村の奥へと進む。

観光客や他一族があまり立ち寄らない、
谷一族の民が暮らす居住地区。

奥に入り組んだ、
けれど通い慣れた道をすいすいと進む。

何度目かの角を曲がった所。

小さな緑の屋根の家の扉を叩く。

「はあい、開いているわ」

中からの返事に
カチャリと扉を開く。

「鍵ぐらいかけてなさいよ」

不用心じゃない、と呟くマサシに
あら、と声の主は答える。

「ついさっき開けたばかりなのよ。
 だってマサシ、
 あなた、いつも約束の10分前にはやって来るでしょう」
「………そうだっけ?」
「そうよ、
 私を誰だと思っているの?」

あなたの事ならなんでも知っているのよ、と。

そうだったわね、と
苦笑いしてマサシは彼女に近寄りそっと抱きしめる。

「そりゃそうか、ただいま母さん」

うんうん、と
笑うと目尻にシワが寄るようになったマサシの母は
マサシを抱きしめ返して答える。

「おかえり、マサシ」

同じ村に住んでいても、
マサシほどの歳になれば
親元から離れてそれそれに暮らす。

時々マサシはこうやって母親を訪ねて
夕食を共にしている。

「うーん、今日のパスタはいつもと違う。
 腕を上げたわね、マサシ」
「気がついた?
 北一族の村で手に入れたスパイスを入れてみたの」
「いいわぁ、これ」
「半分置いていくから、今度料理に試してみたら?」
「あら助かる」

さて、デザートでも、と
立ち上がったマサシに母親が問いかける。

「ところでマサシ、
 おなかの傷はもう大丈夫?」

おや、とマサシは驚く。

裏一族との戦いで
センの短刀をうけた傷。

「いつのことを言ってるのよ。
 傷なんてとうの昔に塞がって、
 もう何ともないわよ」

やだわ、と手を振る。

「でも、跡が残ったでしょう?」
「………ええ」

す、と服の上から
マサシは傷跡をなぞる。

「弟妹を守る戦いで付いた傷だもの。
 むしろ勲章だわ」

「あら、勇ましい」
「そりゃそうよ」

だって、とマサシは答える。

「ワタシは長男であり長女なんですからね」

デザートとワインを持って
席に戻ったマサシは
母親のグラスを満たしながら言う。

「さて、それじゃあ、
 ワタシのカワイイ弟と妹たちの話をしてあげるわ。
 そうね、まずは―――」

洞窟の中にある谷一族の村。
そこにも夜は訪れる。
が、マサシの話しは途切れることもなく、
今日も長い夜が過ぎていく。



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「約束の夜」244

2020年10月09日 | 物語「約束の夜」
「あ・・・」

「お母さん!」

与篠は走る。

いつもの家
いつもの畑

山一族の村外れ。

「ただいまー!!」

「与篠」

ただ、それだけ。
母親は微笑む。

「ちょっと、遅くなっちゃって」

母親は首を振る。

「お帰り」

云う。

「ずいぶんと長い旅だったのね」
「うん」

与篠は云う。

「最初は、違う目的で村から出たんだけど」
「うん」
「いろいろ巻き込まれちゃって」
「うんうん」

母親は持っていた畑仕事の道具を置く。

「判るわぁ」
「お母さん?」
「母さんだって、何度ここから出て行こうかと思ったか」

山一族のハラ家。
イ以外は、ただ雑用をやらされるだけ。

「そりゃあ、毎日つまらないわよね」
「そうよ」

与篠頷く。

「そんなんやってるぐらいなら、もっと植物育てたい!」

(特殊な成分を持つものに限る)

「そうよ、その粋!!」
「だって思ってたより、旅って大変だったもん」
「いい経験をしたじゃない」
「でも、私的な目的は何も得られなかったわ」
「あら残念」
「もっと素敵な毒植物の、!!」
「素敵な成分の、ね!!」
「お母さんの方はどう?」
「この植物の芽が出たのよ」
「おお! やったね!」
「それで、この場合は若芽が成分的に、」
「でも、少し寝かせて根の方は?」

以下しばらく、こんな会話続く。

与篠と母親は、畑の横に坐り、空を見上げる。

とてもよく晴れている。

「・・・・・・」
「・・・・・・」
「与篠」
「また、いつも通りかぁ」

母親は笑う。

「でも旅は大変だったんでしょう?」
「そうだけど」

与篠は云う。

「でもね、楽しいこともあった」
「うんうん」
「例えば海一族なんだけど、あの薬がわりかし効いたのよ」
「あらあら」

母親が云う。

「海一族ならここにも来たわよ」
「そうなの!?」
「西と東の子も来たわ」
「ええ!?」
「うちに泊まっていったわ」
「衝撃!!」
「大丈夫」

母親が頷く。

「試すのはお香だけにしておいたわ」

成分入りのお茶も飲ませてたやん。

「あなたの兄妹たちだったのね」
「ま、そう云うこと」

母親は再度、空を見上げる。

「また、集まる日が来るのかしら」
「うん」

与篠は云う。

「約束はしてきたから!」

「そう、楽しみね」

ふたりは笑う。

ここでの、つまらない生活も
まだ、これからも続くのだろう。

でも、

いつか

ここにも

訪ねてきてほしい。

「出来れば、全員!!」

「もちろん、全員連れてくるわ!!」

なんか怖い(笑)







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「約束の夜」243

2020年10月06日 | 物語「約束の夜」
誰も物音を発さない静かな時。
時々僅かに吹く風で、森の木々が揺れる。

物陰で、
京子は息をひそめる。

「………」

タイミングを逃さないように、と
思えば思うほど
矢をつがえた手が震える気がする。

汗でにじんだ手のひらを
ぬぐって
すうっと息を吸う。

「行ったぞ!!!」

班長の声と共に
追われて来た獲物が
辺りの物をなぎ倒しながら駆けてくる。

「了解!!」

京子の手前で控えていた向が
武樹を振るう。

そこで向が致命傷を与え
止めを京子という予定。だった。

向の手が滑る。

「ッツ、京子すまん」

ほとんど弱っていない状態で
こちらに向かってくる獲物。

身を引いて体勢を立て直すべき。

けれど、京子は目にした事がある。
たった一撃の矢で獲物を仕留める、
そう言う狩りの仕方を。

「………」

向かってくる獲物を正面に、
すっと矢を引く。

「京子?」

すとん、と矢を放つ。
それは、そのまま正面に。

「当たっ」

当たらない。

「あああ、ダメか~」

ぱっと弓を手放し
使い慣れた短刀を持ちなおす。

「えいや!!」

京子が投げた短刀は獲物を捕らえる。

「いいぞ、後は任せろ」

向と、班長の巧、
そして、今日は獲物を追い込む係だった華が
駆けてきて皆が合流する。

「よし」

止めをさした巧が
京子に向き直る。

「京子、よっぽどじゃない限り
 さっきみたいな狩りは危ないぞ」
「そうよ、今日は小さい獲物だったから良かったけど
 大型のだったら危なかった」

今日の獲物、野生の子ヤギ。
猟犬と同じか小さい程の大きさ。

「いや~私も流石にイノシシとかクマには
 ああいうことはしないわよ」

かつて見た、センの狩りの真似なんかしてみたり。

「それにしても、巧達の班は
 チームワークばっちりね」
「そうかな。
 京子もウチの班に入る?」

大歓迎だよ、と華が言うが
京子はありがとうとだけ答える。

「そのうち世話役が
 どこかの班に割り振ってくれるでしょう」

「そうか、早く決まるといいな」
「美和子もどうしちゃったんだろう」

美和子が失踪して、
よく同じ班だった京子は
今、固定の班がない状態。

あちこちの班に加えてもらい
狩りに参加している。

「うん」

チドリはああ言っていたけれど、
もしかしたら、なんて
京子は思っている。

「気長に待つわ、美和子も、お兄ちゃんの事も」

「京子、………あ」

大変、と華が声をかける。

「京子ここかすり傷」
「あら、本当、
 さっき獲物を押さえた時かな?」

大丈夫よ、と手を振るが
そうはいかない、と巧が言う。

「あちこちどんな菌があるか分からないんだ。
 もどったら消毒をしてもらえ」
「ううん」
「返事はきちんと」

「はーい!!」

と言うわけで。

「きちんと来たのね、偉い偉い」

ふふふ、と西一族の医師である高子は笑う。

「消毒だけだから、
 稔で充分なのに」
「今、外回りで出掛けているのよ」

急がしい高子の手を煩わせるのも
なんだか申し訳無い気がする。

「京子、そういえば、
 髪切ったのね」
「そうなのよ。どうかしら?」
「似合っているわ。
 どうしたの、心機一転?」

「そんな所かな」

村に戻ってきて、
京子は母親とゆっくり話しをした。
どんな旅だったか、何があったのか。

父親の事、きょうだいの事。
兄の、耀の事。

「結局、連れて帰れなくて」

折角生きていると分かったのに。
結局、耀は裏一族に留まった。

それまでの事を知った京子の母は
流石に情報多すぎて暫く唸っていた、けれど、

「いいのよ」
「でもお母さん」
「京子が無事に帰ってきただけでも何より」

ほら、と手を握り
母親は笑う。

「母さん待つのは得意なの。
 大丈夫よ、必ず戻ると言ったのでしょう。
 耀は約束を守る子だもの」

兄と同じ顔で母親は笑う。
でも、その笑い方は
自分に似ていると京子は思っている。

親子だから。

「それにしても今回は結構長い遠出だったわね。
 どうだったの、北一族の村は」

高子の言葉に、京子は現実に引き戻される。

「そうそう、色々あったのよ。
 聞きたい?」
「ええそうね、でもその前に」
「うん?」

高子は、傷の消毒を終えると
京子に向き直って言う。

「まずは、これね。
 おかえり京子」

「わあ」

ありがとう、と京子は答える。
まだこれからもきっと色々な事がある。
それでも、まずは戻ってきた。
いつもの変わりない日常に。

「そうだね、うん、
 ただいま、高子!!」



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