
教科書の民話や祇園祭山鉾の懸装品図案なども描いてきた日本画家鄭琡香(チョンスクヒャン)さん(69)=京都府長岡京市開田1丁目=が、画業の集大成となる初の画集を刊行した。乙訓地域を中心に写生を重ね、「スケッチこそが私の人生の歩み」という足跡を竹や花、風景などの作品に結晶させた。
■乙訓で写生「生きた証し」
韓国で高校美術教師をしていた鄭さんは日本画の色彩に魅力を感じ、京都市立芸術大研究科(現大学院)で学んで以来、長岡京市で暮らす。日韓両国の画廊で作品展を開いたり、「八幡山」水引の図案や小学3年の国語教科書(東京書籍)で民話「こかげにごろり」の絵を担当した。
刊行した画集はA4判152ページに、1971年以降の156点を収めた。民話共作者の夫金森襄作さん(71)が編集を担当した。
作品「椿」(1993年)は、手入れが行き届いた西山の竹林を繊細な筆致で描き、「春の野」(1973年)は、大山崎町の堤防にツクシが育つ様子を温かみの色づかいで伝える。「三日月」(1982年)「満月」(同)は、大原野から眺めた夜景とヒガンバナを幻想的に表現した。岩絵具に墨や金泥を重ねたり揉(も)み紙を使うなど独自の技法も用いている。
草花を中心とした作品が多いことについて鄭さんは母国と比べて日本の気候が高温多湿な点を挙げて「種類が多く花もあでやかで、日本に来てからいっそう好きになった」と画集で記す。
家事や育児、作品制作の合間に西山のふもとや社寺へ向かい写生した。同じ花を描くにも作品ごとにスケッチを重ね、丹念に色付けした。「スケッチこそが私の歩みそのものだった。私にとっては生きてきた証し」として、35点を収録した。
鄭さんは「作品集を刊行して心地よい空っぽの気持ちになった」と話し、「新たなスケッチへ春の訪れが待ち遠しい」と創作意欲をみなぎらせている。
「鄭琡香画集」の問い合わせは「香アトリエ」TEL(955)0372。
【 2014年01月29日 08時39分 】