梅之芝居日記

歌舞伎俳優の修行をはじめてから15年がたちました。
日々の舞台の記録、お芝居ばなし等、お楽しみ下さい。

踊りの稽古

2005年10月08日 | 芝居
今日から藤間の御宗家で踊りのお稽古です。六月に伺ったきりで、その後は巡業公演や勉強会、歌舞伎フォーラム公演の出演のためお稽古できなかったので、随分久しぶりです。
六月には『吉野山道行』をお稽古して頂いておりましたが、途中で中断してしまったので、御宗家のおはからいで、今月からは、歌舞伎フォーラム公演でダイジェストで踊らせて頂いた『景清』を、最初から最後まで、抜き差しなしで教えて頂くことになりました。課題を多く残したお役を、改めて一からお稽古していただけるので、本当に有り難く、これからのお稽古がとても楽しみです。
改めて『景清』の歌詞を通して読んでみると、源平合戦の時代の武将を登場させておきながら、江戸時代の遊廓に通う遊び人の風俗を、洒落や地口を織り交ぜて巧みに描いている、その手法に感心してしまいます。いくさ物語りになるかと思えば廓話、八島官女は遊君に、名うての荒武者は酔客になってしまいます。有名な史実である壇の浦合戦を、歌詞にもあるように「これも遊びの壇の浦と ごたまぜ話」にしてしまう、とっても楽しい踊りだということですね。ちなみにこの舞踊の初演は『貞操花鳥羽恋塚』の四年後の文化十(一八一三)年。振付けが初代の藤間勘十郎師だそうで、そういえば先日の歌舞伎フォーラム公演のお稽古の時に、現勘十郎師が、この踊りは宗家藤間流にとって大切な曲だということをおっしゃっておりましたが、あらためてその意味を納得いたしました。心して勉強させて頂きます。

当然のことながら、技術も未熟、不勉強な私ですが、踊りは大好きです。踊ることで、いろいろな役になることができる、というか、いろいろな役になる<技術>を学ぶことができる。ちょっと前までは、ただ曲に合わせて間をはずさず、キレイに体を動かしていればいいと思い込んでいたのですが、そんな生易しいもんじゃない、踊りでも芝居と同じように、その<役>を生きなくてはならないのだということに気がつかされてから、余計に踊りが楽しくなりました(悩むことも多くなりましたが)。踊りの師匠である藤間勘祖師、勘十郎師も、技巧の御指導ももとより、やはり役の雰囲気、性根の出し方も含めたお稽古をして下さいます。
体と心、両方の表現をしなくてはならない大変さをひしひしと感じておりますが、今はひたすら精進ですね!
実は私、これまでの勉強会では、踊りの出し物をさせて頂くことが多く、最近の『景清』の他に、過去に『越後獅子』の角兵衛、『団子売』の団子売り杵造、『吉野山道行』の早見の藤太、『双面』の法界坊と野分姫の霊といった役々を勉強させて頂きましたし、御宗家で学ぶ役者が揃ってのおさらい会では、素踊りですが『戻駕』の吾妻の与四郎も勉強させて頂きました。演じさせて頂くたびに、これから克服すべき課題に気がつかされ、やる気はますます満ち満ちてきておりますが、まずは空回りにならないように戒めながら、お稽古場へ日参している次第です。

とりあえず今月、『景清』はどこまで進むことができるでしょうか…?

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