梅之芝居日記

歌舞伎俳優の修行をはじめてから15年がたちました。
日々の舞台の記録、お芝居ばなし等、お楽しみ下さい。

神帰月稽古場便り・中

2008年10月29日 | 芝居
お昼前から『嫗山姥』の<総ざらい>、夕方から<顔寄せ>に引き続き『寺子屋』の<総ざらい>と『吉田屋』の<附総>。
平行して師匠の楽屋作り…。

もちろん自分の楽屋の用意もいたします。自分が化粧をするスペースのことを、幹部さんでも我々でも<化粧前(けしょうまえ)>と呼んでおりますが、この言葉、ちょっと見るかぎりでは「化粧をする前」というような感じがしませんか? この“前”は、“ビフォア”の意味ではないので念のため。

で、自分のための、その<化粧前>を作っていてアッと気がついたことが。
「歌舞伎座楽屋には鏡がないのだ」…。
国立劇場でも新橋演舞場でも、あるいは名古屋御園座大阪松竹座京都南座でも、大部屋には出演者の化粧用に、人数分のスタンドミラーが用意されるのですが、歌舞伎座に限っては、各自が自前で用意することになっているのです(楽屋にあるのは衣裳着付け用の大きな姿見のみ)。
ワタクシ、半年ぶりの歌舞伎座出演なのですが、6ヶ月の間にすっかりボケてしまったようです。
鏡を持ってくるのをすっかり忘れてました。
<舞台稽古>がなくて良かった~!

…お稽古の話に戻しましょう。
『吉田屋』では、加賀屋(魁春)さんが夕霧をお勤めになります。
本年3月の芝居日記でもご紹介しましたように、夕霧はこのお役のトレードマークといってもいい<病鉢巻>を、幕切れに外しますが、今回再び、この鉢巻を外すお役目を頂戴しました。
またひと月“合引”と格闘することになりますが、2度目ですからより落ち着いてこなしたいと思います。

今回の『吉田屋』の伊左衛門は山城屋(坂田藤十郎)さんで、前回は松嶋屋(仁左衛門)さんの伊左衛門。主演者が変わりますと、ずいぶんと演出が変わりますね。それぞれの違いを楽しめるのも、歌舞伎の楽しさですね。
私の仲居が夕霧の鉢巻を外す段取りも変わっておりまして、1年のうちに両方を勉強できるということで、大変有難く思っております。

明日は私が関わる全ての演目が立て続けに<舞台稽古>。正念場です!



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